宇宙空間で一触触発の事態。ロシアがアメリカのスパイ衛星を偵察か

ロシアの宇宙船が分裂!?

この事態は先日、私的に人工衛星を追跡していたマイケル・トンプソン氏のツイートによって発覚した。

2019年11月26日にロシア、プレセツク宇宙基地からロケットが打ち上げられた。これが軌道に達してから2週間もすると不思議なことに2つに分裂。分析の結果からは、最初の人工衛星からもう1機の小型人工衛星が出現したと推測された。

さらに12月6日、ロシアのニュースメディア、イタルタス通信で、ロシア国防省がこのことを認めた旨が報じられた。報道によると、その目的は「国内衛星の技術的条件の評価を継続すること」だったという。

This is all circumstantial evidence, but there are a hell of a lot of circumstances that make it look like a known Russian inspection satellite is currently inspecting a known US spy satellite.

— Michael Thompson (@M_R_Thomp) January 30, 2020

ロシア機がアメリカのスパイ衛星に接近か?

しかし2機の人工衛星「コスモス2542」と「コスモス2543」は別のミッションも担っていたようだ。1月中旬までに、アメリカの人工衛星「KH-11」に接近したのだ。

トンプソン氏によると、人工衛星の軌道は入念に計算されたもので、コスモス2542はKH-11の片側を観察できる位置につけ、やがて太陽の影に入るころに反対側へ抜けて行ったという。

「すべて状況証拠に過ぎないが、ロシアの調査衛星がアメリカのスパイ衛星を調べていると思わせるに足る状況だ。」(トンプソン氏)

KH-11は米国防総省の諜報機関「国家偵察局(NRO)」によって運用される偵察衛星だ。詳しいことは機密だが、その性能はハッブル宇宙望遠鏡に例えられることがある。

ロシアの人工衛星が危険とみなされるような行動をとったことについて、今のところロシア大使館からのコメントはないという。

The relative orbit is actually pretty cleverly designed, where Cosmos 2542 can observe one side of the KH11 when both satellites first come into sunlight, and by the time they enter eclipse, it has migrated to the other side. pic.twitter.com/zaEBZJhFaO

— Michael Thompson (@M_R_Thomp) January 30, 2020

攻撃を受けたにも等しい事態

ロシア側の真意は不明だが、KH-11に接近した機体が高解像度画像を撮影する機器を搭載していただろうことは想像に難くない。それはロシアの技術者にアメリカ最先端のスパイ衛星を手渡して、解析を許すにも等しい行為だ。

電子放出プローブが搭載されていれば、電波シグナルからKH-11の通信方法を推測したり、通信自体を傍受することまで可能になる。

また米軍の立場からしてみれば、ロシアのこうした行為は調査どころか、自国の人工衛星を破壊すべく、攻撃を仕掛けてきたのと何ら変わりはない。

宇宙軍の正当性の裏付け

こうした事態について、昨年12月に新設されたアメリカ宇宙軍の正当性を裏付けるものだという意見もある。

United States Space Force

アメリカ宇宙軍は、これまで受動的に運用するだけだった人工衛星を積極的に防衛しようという、アメリカの戦略的な転換を反映するものだ。

宇宙戦争の方針はまだ定まっていないが、ロシアや中国をはじめとする国家が米国の人工衛星を機能不全に陥れられるだけの技術を獲得しつつある状況を受け、レイモンド大将は脅威に対して宇宙軍を動かす必要性について言及している。

metamorworks/iStock

宇宙は現代社会の必須インフラ

ただし、ロシアの人工衛星が米軍の目には侵略と映るような行為を行ったのだとしても、国際法に違反したわけではない。

またレイモンド大将が「宇宙が紛争と無縁でいられるよう望む」と述べているように、宇宙空間での紛争はどの国家にとってもメリットはない。

今日、アメリカのものだけでも1000機以上の人工衛星が地球を周回しており、商業・金融・運輸・通信などさまざまな分野の経済・社会活動のインフラとなっている。

それはロシアや中国をはじめとする各国も同様で、世界はますます人工衛星への依存度を高めているのだ。

PIRO4D from Pixabay

宇宙の平和利用は実現するか?

冷戦期、「相互確証破壊」という概念が、核戦争による世界の破滅を回避する一助となった。

これは核兵器を使用されれば、必ず核兵器で報復するという軍事原則だ。これが成立した国家の間では、敵国に核兵器を使用すれば、自らの破滅にもつながるので、結果として核兵器は使用されないことになる。

相互確証破壊はやがて、いくつもの条約や対話チャンネルによって補強され、偶発的な紛争のエスカレートを未然に防ぐ役割を担った。

だが宇宙に関しては、このような国家間の外交ネットワークは今のところ存在しない。

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