脳の中には意識の鍵を握る2つのネットワークが存在することが判明(米研究)

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脳内ネットワークが切り替わる瞬間の出来事

例えば、ある晴れた昼下がりにあなたは近所を散歩していたとしよう。歩きながら、ぼんやり週末の飲み会のことを思い出していた。あの話は面白かったなぁ、などと。

すると、何かが衝突したような音が聞こえ、車がクラクションを鳴らしているではないか。どうやら、自転車が車に突っ込み、あなたのほんの10メートル先に放り出されたようだ。怪我をしているようには見えないが、とにかく急いで倒れている人のそばへ駆け寄った――。

このとき、わずか数秒で、脳内のネットワークが切り替わっている。あなたが思い出や空想にふけりながら心の内に意識を向けていたとき、活発だったのは「デフォルトモード・ネットワーク(DMN/default mode network)」だ。

だが、はっと気がつき周囲に意識を向けたときには、「背面注意ネットワーク(DAT/dorsal attention network)」が活発になっている。

AndersAndersen from Pixabay

DMNとDAT――排他的な脳内のネットワーク

普通、脳内のネットワークは常に切り替わっており、ほとんど複数のネットワークが同時に機能しているように見える。

たとえば、私たちは目で見たものや読んだものを分析・処理するために、前頭頭頂ネットワークと視覚ネットワークの両方を利用している。

ところがDMNとDATについては事情が違う。それらが同時に活発化することは滅多にない。”滅多に”というのは、そうしたこともあるかもしれなかったからそう言っている。だが、これまで両者が同時には起動しないのではないかという疑いはあった。

そして、今回の研究でその疑いがはっきりと証明された。2つのネットワークはどうやら排他的な関係であるらしいのだ。

Gerd Altmann from Pixabay

脳のネットワーク活動を秒単位で分析

研究グループは、被験者98名を対象に、覚醒時、安静時、全身麻酔時、あるいは意識障害にある脳の活動をfMRIで調査。さらに機械学習モデルを利用して、脳の中で同時に活動している領域を分析した。

これまでにも同じような研究はあったが、今回の場合で特筆すべきは、それまで数分単位の分析だったのが、数秒単位とさらに緻密に分析されたことだ。

こうして、先述したDMNとDATのほか、8つの主要ネットワークが観察され、同時に活動しているネットワーク、その活動の長さ、あるネットワークの活動が停止した後に起動するネットワークといった、活動パターンモデルが作成された。

そして明らかになったのは、脳が規則的なパターンであるネットワークから別のネットワークへと素早く切り替えており、ある状態の構造パターンを循環させているということだ。DMNとDATへの頻繁な移行もそうしたものの1つだ。

Gerd Altmann from Pixabay

意識は2つのネットワークの切り替えによって紡ぎ出される

ところが、薬や脳の障害のために意識のない患者の場合、DMNとDATへの切り替えがずっと少なかった。

これこそがポイントだ。脳ネットワークへの影響やその再組織のされ方は異なるので、意識不明になっている患者の体験は、それぞれ違うものだ。だが、どの患者にもDMNとDATの孤立が見られたのだ。

意識のある人では、DMNが切れると(これは幻覚剤を使用したときに起きる)、深く内省することができなくなる。一方、DATが切れると、周囲の状況を認識して反応することができなくなる。

つまり自分自身を振り返りつつ、状況に応じて外の世界に注意を向けて活動する――人間をそのような意識的な存在たらしめているのは、この2つのネットワークの切り替えであると言えって差し支えないということだ。

Glauco Gianoglio from Pixabay

ネットワークの排他的な関係が体験を内部化

妄想や思い出にふけっていようが、周囲の世界に働きかけていようが、あなたが意識的な状態にあることは分かっている。

今回の研究で明らかにされたのは、私たちは思考に浸かりつつ、同時にその外にいることはできないということだ。

そして、DMNとDATの排他的な関係が、周囲の環境とやり取りした体験を内部化して処理することを可能にしている――これがすなわち意識な存在でいられる秘密であるようだ。

研究グループは今後、この瞬間的なネットワークの切り替えを脳がどのように制御しているのか調べたいと考えているそうだ。

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