『マティコ作「スタンチク」』ワルシャワ国立美術館収蔵
1893年11月1日は、19世紀のポーランドを代表する画家、ヤン・マティコが死亡した日である。 歴史画を中心に偉大な作品を残した人物であるが、その最も有名な作品のひとつが、母国ポーランドの喪失の瞬間を描いた『マティコ』である。
宮廷お抱えの道化師として3代のポーランド王に仕えたスタンチクが、楽屋で一人呆然と座るこの作品は、パーティの最中に祖国が失われた瞬間——ロシア軍よる「スモレンスク陥落(1514年)」の速報を知ってしまったその時を描いたものである。
祝祭を彩るピエロという外見も相まって、その悲哀を絶望的なまでに強調した作品として世界史に残る名作と言われているものである。
さらに、このスタンチクの顔はマティコ自身の顔であると類推されており、そのことからも、歴史的に分割・侵略を繰り返してきたポーランドという国自体への強い郷愁を感じさせる作品である。
当代きっての道化師からも笑顔を奪い去るほど多くの《不幸》を乗り越え、現在のポーランド共和国は存在しているのだ。
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