【日産 デイズ ハイウェイスター 3400km試乗】軽自動車での旅に大型車で味わえない楽しさがある理由[後編]

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日産の軽自動車『デイズ ハイウェイスター』での3400kmツーリング。前編では概論とボディ、シャシー、運転支援システムについて述べた。後編ではツーリング感、パワートレイン、室内&ユーティリティなどについて触れていこうと思う。

◆軽自動車だからこそ味わえる寄り道と出会い

まずはツーリング感。ロングツーリングと言えば、ある程度大きなクルマが向いているというのが一般的な認識。小型車はシティコミュータ、ないしはせいぜい東京~長野など半径200km圏の近距離ドライブが本分である。そんな小型車で遠くを旅するのはいかがなものなのか――実際にやってみると、大型車にはない、旅を何とも楽しいものにしてくれる味わいがあるのである。

それは何かと言うと、車体の小ささや小回り性能の高さを生かした「寄り道のしやすさ」だ。何か面白そうなものを見かけたり、美しい景色が目に留まった時、小回りのきく小型車だとクルリと方向転換して気軽にその場所に戻ることができる。もちろん大型車とて、観光バスではないのだから、その気になればちゃんと引き返すことくらいできるのだが、何となく億劫に感じやすい。億劫になるか否かは気ままな旅の楽しさの濃度を案外大きく左右するものだ。

その寄り道のしやすさのトップランナーは軽自動車。泣いても笑っても全長3.4×全幅1.48m以内という枠内にハメられる軽自動車は、基本的に乗っているクルマが何であれ、その制約ゆえに小回り性能の良さは完璧。車体が小さいから路肩に寄せやすいし、狭い駐車場も何のそのだ。大型車だったら恐れをなすような山岳部の狭隘ルートだって、軽トラックが通れるならば軽乗用車もOKなはずだ。軽自動車で旅をしていると頭が自動的に寄り道、回り道モードに切り替わる。デイズももちろんそうであった。

◆「小ささ」が生んだプレミアムな時間

ツーリング中、下関から海沿いに日本海側へと向かう国道191号線を走行中、響灘の眺めが何とも良さそうな小高い丘に新しいカフェができていた。そこそこ広い敷地に対してささやかと言うしかないくらい小さな建屋。その小ぢんまり感に妙に惹かれ、行き過ぎた先の少し道路が広くなった箇所で転回して引き返し、そのカフェ入ってみた。

店内はごく狭く、10席もないくらい。それプラス、海に面した庭にもいくつかテーブルや椅子が置かれている。日が少し西に傾いた響灘の光を眺めながらのコーヒータイムはちょっとしたプレミアムだったが、その空気感を醸成するのに店の小ささが大いに寄与しているのは明らかだった。

小さい店というのは作り方によっては大変魅力的になるのだが、実際に小さく作るのは結構難しい。ついつい欲が出て、少しでもキャパを広げておきたくなるのが店舗経営者の心理というものだからだ。「よくこんなに思い切って小さく作りましたね」と、金融機関を退職後にカフェを開いたという店主にきいてみたところ、ここ豊北は北長門海岸国定公園内で店舗を建てるには道からの距離と海岸の距離を一定に保つ義務があり、その規制ギリギリに立てたらこうなったのだという。

軽自動車が規制の枠によって小ささを保てていることよろしく、建築規制の厳しい枠が作り上げた小ささだったわけだが、その雰囲気の素晴らしさは本物。多くの人がそんな魅力に吸引されているようで、その後も通るたびに駐車場に目をやってみると、いつも満車状態である。

ツーリングギアが果たして大きなクルマだったら、この時のように気軽に引き返してそんなカフェを味わう機会を持ったかどうか。筆者はもともとベーシックカーフェチであるが、軽自動車での旅っていいなとあらためて思った次第だった。

◆縁の下の力持ち感があるパワートレイン

ハードウェアの論評に戻ろう。今回乗った「ハイウェイスターX プロパイロットエディション」のパワートレインは最高出力38kW(52ps)、最大トルク600Nm(6.1kgm)の0.66リットル自然吸気+CVT。それを最高出力2kW(2.7ps)、最大トルク40Nm(4.1kgm)の発電機兼モーターでアシストするマイルドハイブリッドだ。

52psの自然吸気エンジンに対して空車重量は870kgと、ハイトワゴンとしては比較的重い。パワーウェイトレシオは16.7kg/ps。スペックシートを見ただけでもパワー不足は明らかだが、ミニマムな構成のクルマでドライブをしてみたいということで自然吸気をリクエストしたのは筆者のほうだ。

果たして普通に走るぶんにはこの52psエンジンで十分機能する。一人乗り+数十キロの荷物と比較的ロードが小さかったとはいえ、新東名の120km/h区間をそのスピードで巡航することだってできる。山岳路の急登でも速度が上がらず困るなどということはない。

高速のバリアを利用して静止状態から実速度80km/hに達するまでのタイムを計測したところ、スロットルを踏み込んだ瞬間からが13秒1、メーター動き出しからが11秒7だった。この区間は緩やかな登り勾配で、低出力のクルマの場合、かなりきつめの数字になる。平地ではもう少し良い数値であろう。

絶対的なパフォーマンスとは別の、パワートレインの質感部分はデイズのネガティブファクターのひとつであった。全域にわたって3気筒エンジンのゴロゴロ感が強めで、中高回転ではノイズも大きめだった。動弁系は一応連続可変バルブタイミング機構が実装されているのだが、ライバルに比べると車重の違いを勘案しても低・中回転域のトルクが若干希薄なきらいがあり、加速や登坂の時など回転を上げてそれを補うような制御が頻々とみられた。それが中高回転のノイズの大きさを余計目立たせる結果となった。低回転ではハイブリッド化の恩恵もあって、ノイズレベルは気にならないレベルに低下する。

そのハイブリッドだが、減速エネルギーを使っての発電、エンジンスタート、駆動力アシストを行う電気モーターの出力が2.7psときわめて小さいため、ハイブリッドであることを意識させるような挙動はほとんど見せず、動力性能面での上乗せも感じられない。が、減速するときには“キューン”という感じの回生音が聴こえるし、エンジンが再始動するときはキュキュッというセルモーター音もしない。また、低速からの緩やかな加速のさいには気が付くとエンジン回転数が低い等々、能力の小ささのわりには縁の下の力持ちとなっている感があった。

◆パラレルハイブリッドの特徴が強く出た燃費性能

燃費については、車両の特性に合わせた運転をするかしないかによる差が大きく出やすいというパラレルハイブリッドの特徴が強く出た。基本的には市街地走行に強く、郊外路や高速道路など平均車速が上がるにつれて利点が縮小していくという感じである。

一発目の区間燃費は21.7km/リットル。東京・葛飾を出発後、箱根を越えて沼津まで首都高と一般道、そこから120km/h区間を含む新東名経由で音羽蒲郡で一般道に下り、名古屋臨海部から名阪国道などを経て京都の八幡に至った534.2kmを走り、給油量は24.57リットルだった。今どきの軽トールワゴンとしては悪いとまではいかずとも平凡なスコアである。

ロングランで達成してほしいリッター20kmのボーダーは越えた一方、460km地点で燃料警告灯点灯というのは、1タンクで700km以上余裕で走ったホンダ『N-ONE』や同600km超えのダイハツ『ミラトコット』などに比べていささか足が短く感じられた。ちなみに超高速区間を含まないその後の非エコランによるロングラン区間の燃費は最低が21.8km/リットル、最高が23.0km/リットル。安定的だが最新の軽トールワゴンとしては凡庸な数値である。

思ったほど伸びないクルーズ燃費に対し、秀逸だったのは市街地燃費である。平均車速が非常に低く、かつ小高い丘に住宅地が広がっているという条件の悪い鹿児島市心部の短距離走行が大半を占めたタウンライド燃費は実測18.4km/リットル。普通車のフルハイブリッドカーでも思うように燃費を伸ばせない環境下でこの数字は十分以上に満足のいくものだった。

帰路、愛知西部から静岡・浜松までの139.0km区間でパラレルハイブリッドの特質を生かしたエコランにトライしてみたところ、リザルトは実測27.1km/リットル。夕方の通勤ラッシュ気味の名古屋市心部を燃費計読み23km/リットル台で通過できたことが大きかった。パラレルハイブリッドはアシスト、回生をこまめに切り替えさせず、加速するときはする、減速は一発で決めるといったメリハリのある運転をすると燃費を伸ばせるものだから、デイズのシステムはそういう運転上の工夫に素直に応えてくれるものだった。

◆インテリアのデザイン、質感はデイズシリーズのハイライト

パッケージング、および室内のユーティリティに話を移そう。軽トールワゴンは基本的にスペースユーティリティは非常に高く、そこで不満を抱かせるようなクルマはそもそも存在しない。デイズも十分以上に広く、4人がゆったりと座って移動するのも造作のないことだった。特徴は小物入れや物置きスペースが充実していることで、センターコンソール、シート下部、ひじかけ、ダッシュボード等々、至るところにモノを入れることができた。油断すると車内が散らかり気味になるロングランを小奇麗にこなすにはもってこいのインテリアである。

フロントシートはクッション部については悪くなく、座面の造形自体は横Gによる体重移動をわりとよく支えてくれるように仕上がっていた。連続運転時間がかさむにつれてウレタンの変形が大きくなるのは大腿部のうっ血の要因になったが、離席したときの戻りはまずまずで、休憩をちょくちょく挟むようにすれば疲れをためずにすむという感じだった。軽自動車としてはこれくらいできていれば上等であろう。

一方、シートバックのほうは設計そのものが悪いという感じではないが、サスペンションが固く、コーナリング時に横Gが出やすいシャシーセッティングのわりにサイドサポートが浅く、体が横ブレしやすい。軽トールワゴンの日常の用途を考えると上半身の拘束性を弱く設計するのがシート設計のセオリーではあるのだが、シートバックの素材をもう少しズレにくいものにするなど一工夫欲しい。

インテリアのデザインおよび質感は、デイズシリーズのハイライトと言える部分。ダッシュボードにソフトパッドが貼られ、ステアリングは合成皮革張り。プラスチック部品を含め、各部のタッチも軽自動車離れしている。普通車のAセグメントミニカー『マーチ』から乗り換えると、質感の一点においてはかえってグレードアップしたような感じを受けるだろう。Bセグメントサブコンパクトのノートより良い部分もたくさんある。

荷室の使い勝手は悪くない。軽トールワゴンでは一部を除いて普通の装備であるが、リアシートにはシートスライド機構が備えられており、後席足元空間をちょっと犠牲にしてシートを前に寄せると、4名+大荷物を載せての短期宿泊旅行も可能なくらいにまで荷室を拡張できる。この旅では大型トランクを持ち歩いたが、それも難なく収容できた。もちろん分割スライドもできるので、3名+大荷物というパターンなら積載はさらに楽になるだろう。

ウィークポイントはドアの開口面積がライバルに比べて少し狭いことと、シートバックを倒したさいに荷室がフラットにならないこと。

◆まとめ

デイズ ハイウェイスターは軽トールワゴンとしての実用性の高さはそのままに、ドライブフィールやインテリアの質感、居住感、運転支援システムなどを普通車ライクに仕上げ、同じようなディメンジョンや装備水準のライバルモデルよりちょっと高く売るという、日産の普通車メーカーとしての矜持がモロに出たモデル。それにより乗り心地が固かったり、エンジンのノイズが相対的に目立ったりといったアンバランスさが出てしまった面もあるものの、普通車からの乗り換え時の違和感をできるだけ小さくするという開発意図はある程度達成できているように感じられた。

ロングドライブ耐性もトップランナーではないが悪くはなく、しっかり休息を挟みながら走れば東京~鹿児島のような超ロングでもそこそこ行ける。一般的には自宅を中心とした半径300km圏、ワントリップ1000kmくらいのドライブまでは十分にターゲットに入るという感じであろう。普段使いのクルマでたまにはドライブ旅行もするというユーザーが普通車からダウンサイジングするというケースではなかなかいい選択肢になるのではないかと思われた。

ライバルモデルはトールワゴンを中心とする軽自動車のちょいプレミアム系グレード。三菱『eKクロススペース』、ダイハツ『ムーヴカスタム』、スズキ『ワゴンRスティングレー』、ホンダ『N-WGNカスタム』あたり。コロナ禍で少し遅れているようだが、遠からず発売されるホンダの第2世代『N-ONE』、見た目はカジュアルだがユーティリティは異様に良いスズキ『ハスラー』もそこに加えてもいいかもしれない。

いずれ劣らぬ強敵ではあるが、普通車フィールという点で一番ぶつかりそうなのはN-WGNカスタムだろう。ブランドイメージとは真逆でN-WGNは重厚感、デイズ ハイウェイスターは軽快感が身上。N-WGNでは長旅をやっていないが、ロングドライブ耐性は互角ではないかと推察される。

三菱eKクロススペースはハードウェア部分についてはデイズとまったく同じ。もともとデイズ族はブランド、ターボorノンターボによる足まわりの違いがなく、セッティングはFWD(前輪駆動)とAWD(4輪駆動)の2種類のみである。ということで、デザインの好みで日産、三菱のどちらを選んでもOKだ。

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