なぜ子どもは「ただであげる」の誘いに乗るのか——SNS時代の危険と、家庭でできる備え
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なぜ子どもは「ただであげる」の誘いに乗るのか——SNS時代の危険と、家庭でできる備え

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9歳以下の行方不明者が年間1000人を超えたという数字が、強い衝撃とともに語られています。単純に計算すれば、1日あたり3人近くになります。ただし、この数字の意味は正確に押さえておきたいところです。行方不明者届には家出や事故、迷子などさまざまな事情が含まれ、すべてが事件に巻き込まれたケースではありません。それでも、SNSやゲームのグッズをめぐる誘いが巧妙になっているという指摘は、無視できません。

ここで考えたいのは、なぜ子どもがその誘いに乗ってしまうのか、という点です。答えはシンプルです。子どもが特別に判断力が弱いからではなく、「欲しい」「認められたい」という誰にでもある気持ちに、大人がとてもうまく働きかけるからです。手口の形を知っておくと、備え方はぐっと具体的になります。

数字を怖がるより、手口の形を知る

ニュースで大きな数字を見ると、不安だけが残りがちです。しかし不安は、具体的な行動に変わらなければ長続きしません。大切なのは「どんな順番で近づいてくるのか」を知ることです。多くの場合、いきなり連れ去ろうとするのではなく、欲しいもの、褒められる心地よさ、短い約束といった小さな段階を踏みます。

「手が届かない」が、最大の隙になる

海外限定のグッズや人気ゲームのレアカードは、日本で正規に買えないことがあります。海外通販は数万円、支払いはクレジットカード。小学生にはどうやっても手が届きません。

この「欲しいのに届かない」状態は、心理的にとても不安定なものです。欲求が満たされないまま残り、そこへ「あげるよ」と手を差し伸べる人が現れる。しかも自分だけが持てない、まわりが憧れているものとなれば、引力は強くなります。たとえば、抽選に外れ続けた限定品を「譲ります」と言われたら、大人でも一度は返事をしてしまいそうになります。子どもはそれ以上に、断る理由を持ち合わせていません。

「上手だね」の一言が、扉を開ける

ダンス動画に「上手だね」「同じダンス知ってるよ」とコメントがつく。褒められて気分が上がるのは自然なことです。問題は、褒めてくれた相手が誰か分からないことです。

そのあと「今度一緒に踊らない」「新しいダンスを教えるよ」と続き、最初はビデオ通話でつながる。ここで顔や部屋が見られ、制服や家具から学校や家のあたりを推測されることがあります。信頼ができたところで「外で踊ろう」となる。段階を踏むのは、相手が子どもを怖がらせないためです。少しずつ距離を縮めれば、警戒心は薄れていきます。

「5分だけ」という分割

「親に怒られる」と子どもが言うと、相手は「じゃあ学校の近くで待つよ」「5分だけ」と条件を小さくしてきます。短時間なら平気、という感覚を利用するわけです。

ここで効くのは、子ども自身の判断力に頼りすぎないルールです。「短い時間でも、会う約束は必ず家の人に話す」と決めておく。時間の長さではなく、隠すかどうかを基準にしたほうが、子どもにも分かりやすいはずです。

大人の投稿が、子どもの居場所の手がかりになる

公園の名前、習い事の曜日、兄弟の制服姿。何気ない投稿が、外から見るとスケジュール表のように読めてしまいます。写真の背景に映った看板や建物から場所が分かることもあります。

  • 位置情報はオフにする
  • 「今ここ」が分かるリアルタイムの投稿は避ける
  • 公園名や通学路が特定できる写真は控える
  • 子どもが欲しがっているものを公開しない

子どもの側にも、「欲しいグッズの話は、友達と直接会ったときに話す」と伝えておくと、ネット上に欲求の材料を置かずに済みます。

家庭で足せる、現実的な備え

アカウントとコメント欄

子ども専用のアカウントを作らせず、親のアカウントで管理する。使った時間と内容を見る。特にコメント欄は、見知らぬ人とのやりとりが始まりやすい場所です。動画そのものより、コメントのやりとりを気にかけておきたいところです。

夕方の時間帯

午後3時から6時ごろは、学校が終わって親がまだ仕事中の時間にあたります。学童保育の利用や、複数人での下校、できれば迎え。毎日は難しくても、曜日を決めて迎えに行くだけでも変わります。

「知っている人」の扱い

「お母さんの友達だから」「先生に頼まれた」と言われても、一度は親に直接電話して確認する。本物の緊急なら、説明や証拠を見せてくれるはずです。そして「猫が車の下にいるから助けて」と子どもに頼む大人は、基本的に怪しいと考えていい。荷物でも道案内でも、責任は大人が取るものです。

監視を続けるのが難しいとき

とはいえ、投稿をすべて確認し、コメントを毎日読み、送り迎えをするのは簡単ではありません。共働きで迎えが難しい日もあるでしょう。子どもが管理を嫌がる時期もあります。

全部を完璧にやろうとすると、どこかで続かなくなります。優先するなら、コメント欄、位置情報、夕方の行動の三つ。そしてもう一つ、子どもが失敗や気になることを話してくれる関係のほうが、監視の回数より効くことがあります。

制度の議論を待つ間に

SNSの年齢制限や処罰のあり方については、国によって考え方が違い、日本でも議論が続いています。海外で導入された規制をそのまま日本に当てはめられるかは、表現の自由や家庭の考え方も絡み、簡単には結論が出ません。法律が変わるのを待つ間にできるのは、家庭の中で一つずつ決めておくことです。

おわりに

「ただであげる」という言葉が効いてしまうのは、子どもの心に隙があるからではありません。欲しい、認められたいという普通の気持ちに、巧みに合わせてくる相手がいるからです。だから対策も、気持ちを抑え込むことではなく、手口のパターンを知って、隠さない約束を一つ足すことから始められます。

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