2006年に始まったモバゲータウンは、口コミだけで若者に広がり、2007年には会員約740万人を数える巨大サービスになった。しかし2020年12月、かつての勢いは失われ、サービスは静かに終了した。急成長の裏で何が起きたのかを、当時の数字や報道から振り返る。
携帯オークションからSNSへ
モバゲータウンの土台を作ったDeNAは、1999年に南場智子氏が大手コンサルティング会社を離れて立ち上げた企業だ。最初はオンラインオークションから始まり、携帯電話専用のオークション「モバオク」などモバイル分野へ軸足を移した。2005年にはマザーズへ上場し、次の柱として目をつけたのが、当時若者の間で急速に広がっていたSNSだった。
そこにゲームとアバターを組み合わせ、携帯電話だけで完結する新しい居場所として生まれたのがモバゲータウンである。
無料のゲーム付きSNSが10代を惹きつけた理由
モバゲータウンは、携帯電話向けのSNSとゲーム、アバターを組み合わせたサービスとして登場した。初期アバターは全員が白いTシャツ姿で、サイト内通貨「モバジー」を広告クリックなどで貯め、服や髪型を買って自分の分身を育てていく仕組みだった。この作業自体が遊びになり、友達との話題になった。
足跡機能では誰が自分のページを見たかが分かり、知らない同世代にミニメールを送ることもできた。日記やサークルもあり、学校以外の居場所として10代の日常に溶け込んだ。基本無料で始められる点も、お小遣いの少ない若者には大きな魅力だった。
リリースから半年で会員140万人、9か月で200万人を突破。テレビCMも加わり、2007年には会員約740万人、15〜19歳の3割以上が利用し、16歳男子では約半数がユーザーだったという調査結果も残る。月間ページビューは142億回に達し、携帯サイトとして世界最大級のアクセスを誇った。
急成長がもたらした社会的な衝突
しかし、利用者の急増とともに、未成年が巻き込まれる事件が表面化する。2007年12月、青森県八戸市でモバゲータウンを通じて知り合った男性による女子高生殺害事件が発生した。これをきっかけに「携帯SNSが未成年を危険にさらしている」という批判が広がり、親世代の不安が一気に高まった。
事件後、総務省は携帯キャリアとSNS事業者を集めた会議を開き、18歳未満の契約には原則としてフィルタリングを適用するよう求めた。事業者側は自主的な監視強化で対応したいと訴えたが、世論の流れは厳しく、各キャリアは未成年向けフィルタリングの適用へ動いた。
フィルタリング義務化と株価への打撃
DeNAは未成年ユーザー向けにミニメール機能の制限や投稿監視の強化を実施した。しかし「モバゲー=危険なサイト」というイメージは簡単には消えず、株価は急落した。創業者の南場智子氏は後年、フィルタリング適用の方針が伝わってから約1週間で時価総額が1500億円失われたと振り返っている。
学校や家庭でも「モバゲーは危ないからやめなさい」という空気が広がり、10代のアクセスは明らかに減少した。友達との連絡手段や居場所だった場所が、急に使えなくなる。利用者にとっては、楽しみだけでなく人間関係の一部を失う経験でもあった。
終焉から見える、無料サービスと安全の両立の難しさ
モバゲータウンはその後もソーシャルゲームのプラットフォームとして収益を支え、2012年にはDeNAの営業利益が634億円と過去最高を記録した。しかしスマートフォン時代の競争には抗えず、2020年12月にサービスを終了した。
この歴史が示すのは、無料で誰でも参加できる場所ほど、安全対策と社会的な信頼を同時に育てなければならない難しさだ。急成長のスピードに運営が追いつかず、一つの事件がサービス全体の評価を変えてしまう。便利で楽しいサービスほど、その仕組みとリスクを知っておくことが、利用者側にも求められる。