2. 次の勝負に参加できる余力を残す「バフェット型」
ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイは、景気が良い時期にも多額の現金を手元に残していました。現金は利益を生みにくく、借金で投資額を増やす企業より成長が遅く見えることもあります。しかし、2008年の金融危機では、誰も動けないときにゴールドマン・サックスなどへ合計155億ドルを投じる力になりました。
バフェットが避けたのは損失そのものではなく、一度の失敗で次の手がなくなることでした。日常では、貯蓄や時間、体力の余白を残すことに当たります。
- 試すとき:大きな買い物や転職、独立の前に、失敗しても生活が回るだけの余力を確保したいとき。
- 注意点:余力を残しすぎると行動が遅れ、機会を逃すこともあります。損失をゼロにすることが目的ではなく、次の判断ができる状態を保つことが目的です。
- 合わない場合:若く、失敗しても取り返せる時間があるときや、機会損失の方が大きいときは、余力を作る間にチャンスを逃す可能性があります。その場合は、後述のベゾス型のように機会損失も数えてみてください。
3. 逃げ道を先に作ってから踏み込む「ブランソン型」
リチャード・ブランソンは、バージン・アトランティック航空を立ち上げるとき、多くの飛行機を購入せず、まず1機を借りました。事業がうまくいかなければ1年後に返せる条件を交渉し、他の事業に影響が出ないよう小さく動きました。大胆に見えますが、失敗したときの損失を最小限に削ってから踏み込んだのです。
この型は、新しい挑戦の前に「失敗したときの逃げ道」を用意する方法です。逃げ道を作ることは覚悟の弱さではなく、大きな場所へ踏み込むための準備になります。
- 試すとき:家を買うか賃貸か、転職前に副業で試す、スクールの無料体験を受けるなど、失敗したときの損失を小さくできる場面。
- 注意点:逃げ道があることで本気度が下がる人もいます。また、交渉や準備に時間がかかり、機会を逃す場合もあります。
- 合わない場合:どうしても今すぐ決めなければならない場面では、逃げ道作りが間に合わないことがあります。その場合は、失敗したときの影響を具体的に書き出し、許容できる範囲かを確認しましょう。
4. 失敗リスクと機会損失を比べる「ベゾス型」
Amazonを創業したジェフ・ベゾスは、安定した投資会社の仕事を辞めるか迷ったとき、自分を80歳まで進めて考えました。Amazonを始めて失敗した場合の後悔と、インターネットという大きな変化を目の前で見ながら何もしなかった場合の後悔を比べたのです。本人の見積もりでは成功より失敗の可能性の方が高かったといいますが、機会を逃す方が怖いと判断しました。
この型は、転職や独立、引っ越しなど、やらないことで失うものも数える方法です。失敗したときの損失だけでなく、今動かないことで数年後に後悔する可能性を書き出します。
- 試すとき:安定した今の状況を手放すか迷っているとき。特に、変化が速い分野や、先に場所を取られる可能性があるとき。
- 注意点:機会損失は目に見えにくく、過大評価しがちです。失敗したときの具体的な生活への影響も同時に確認してください。両方を数えて初めて、比較ができます。
- 合わない場合:失敗したときの損失が生活を壊すレベルなら、まずブランソン型やナイト型で損失を小さくしてから、この比較を使う方が安全です。
5. 背水の陣で戦う「マスク型」
イーロン・マスクは、スペースXの4回目の打ち上げが事実上最後という状況で成功しました。同じ年、テスラも資金難に陥り、残り資金は3000万〜4000万ドルほどだったと振り返っています。追い込まれた状況から大きな成果を出した例ですが、これは再現性が高い方法ではありません。同じ状況で失敗した人も多く、成功したから語られる面があります。
日常生活では、背水の陣は限定的に考えるべきです。どうしても譲れない目標があり、失敗しても生活を立て直せる最低限の条件がある場合に限ります。
- 試すとき:他に選択肢がなく、かつ失敗しても住む場所や家族の生活費までは失わないと確認できたとき。
- 注意点:追い込まれると冷静な判断が難しくなります。借金や家族の生活費まで賭けるのは避けてください。支援が必要なら、専門家や周囲に早めに相談することが大切です。
- 合わない場合:失敗したときの損失が大きく、生活を壊す可能性があるなら、背水の陣ではなく、まずナイト型やブランソン型で損失を小さくすることを検討してください。
自分に合う型を見つけるには
5つの型は、覚悟の強さの段階ではありません。それぞれが何を守り、どこで賭けたかが違うだけです。ナイトは生活を守りながら事業を育て、バフェットは次の勝負に参加できる余力を守り、ブランソンは失敗したときの逃げ道を作り、ベゾスは機会を逃すことを怖がり、マスクは背水の陣を選びました。
自分に合う型を見つけるには、まず「守りたいもの」と「逃したくない機会」を一つずつ言葉にしてみてください。紙に書き出すだけでも、無謀な賭けと必要な挑戦の区別がつきやすくなります。型を一つに決める必要はありません。状況によって変えてもかまいません。大事なのは、生活ごと壊すような賭けを避けながら、自分が本当に動きたい場所へ少しずつ近づくことです。