夫婦の会話が減ったり、性生活の頻度が下がったりすると、不倫のリスクが高まる。そんな話を聞いたことがあるかもしれません。しかし、複数の調査データを分析したある論文では、少し違う傾向が示されました。不倫と強く関連していたのは、夫婦の親密さよりも、収入や学歴といった「環境と条件」だったのです。
ここで紹介するのは、あくまで統計上の関連です。「この条件があれば必ず不倫をする」という話ではありません。ただ、パートナーとの関係に悩んだとき、何を変えられるのかを考える材料にはなるはずです。
夫婦の親密さは、不倫とほとんど関係していなかった
分析では、不倫をした人としていない人を、会話時間、性生活の頻度、子どもの人数などで比較しました。すると、これらの要素は男女とも、不倫との明確な関連が見られなかったと報告されています。
たとえば、夫婦の会話時間が短いから不倫しやすい、あるいは性生活が少ないから不倫しやすい、といった単純な因果は見いだせなかったのです。仲が良いから安心、という考え方だけでは説明しきれない部分があります。
一方で、収入と学歴には、男女で異なる関連が見られました。
男性は収入が上がるほど、女性は夫と同程度の収入で不倫が減る
男性の場合、収入が上がるほど不倫の経験率が高くなる傾向が示されました。報告された数値では、年収カテゴリーが一つ上がるごとに関連が強まり、最も高い層では低い層に比べて統計上の関連が13倍近くになることもあったといいます。
さらに、妻の収入が夫より高い場合、夫の不倫との関連が非常に強く出たという結果もあります。ただし、これは「妻の収入が高いと夫が不倫する」と決めつけるものではありません。収入差がもたらす夫婦間の力関係や、夫側の自尊心、あるいは報告の偏りなど、複数の解釈が考えられます。
女性では、夫と同じくらいの収入があると不倫率が下がり、最終学歴が大学卒だとさらに下がる傾向が見られました。男性と異なり、夫の収入や会話時間、性生活の頻度などは、女性の不倫とほとんど関連していなかったとされています。
学歴が高いほど不倫しにくい、という傾向の読み方
男女共通で、最終学歴が高いほど不倫の経験率が低いという結果が出ています。分析では、大卒や専門学校卒で不倫率が下がる傾向が示されました。
この理由として、論文では二つの仮説が挙げられていました。一つは、学歴が上がると道徳的規範を重視する傾向が強まるというもの。もう一つは、社会的地位や職業上の信用を失うリスクを考え、合理的に抑止が働くというものです。
ただし、これは「学歴が高い人は人間的に優れている」という意味ではありません。あくまで集団としての傾向であり、個人を判断する材料にはなりません。
不倫を「愛情の問題」だけで考えない
このデータから言えるのは、不倫は個人の気持ちや夫婦の愛情だけの問題ではなく、出会いの機会や社会的な条件に左右されやすい面がある、ということです。
たとえば、仕事で異性と接する機会が多い、出張が多い、飲み会が多いといった環境は、それだけで不倫の機会を増やします。逆に、愛情が冷めていても、出会いの機会がなければ不倫は起こりにくい。これは仮定の話ですが、環境要因の大きさを示しています。
だからといって、「環境のせいで仕方ない」と開き直ることはできません。最終的に行動を選ぶのは本人です。データはあくまで傾向を示すもので、個人の意思や責任を消すものではないのです。
パートナーとの関係でできること、できないこと
もしパートナーの不倫が心配な場合、会話を増やすことだけに集中しても、データ上は効果が限定的かもしれません。それよりも、次のような点を話し合う余地があります。
- お互いにとって「許容できる関係」と「許容できない行動」を具体的に確認する
- 仕事や交友関係のなかで、不倫につながりやすい環境があるかどうかを率直に話す
- 収入差や家事・育児の分担など、夫婦間の力関係に不満がないか点検する
- 必要であれば、カップルカウンセリングなど第三者を交えて話す
ただし、相手がすでに不倫をしている、あるいは話し合いが暴力や支配につながる場合は、無理に二人だけで解決しようとしないでください。安全を優先し、信頼できる人や専門機関に相談することも選択肢です。
データを自分の関係にそのまま当てはめない
今回の分析は、日本の不倫研究が少ないなかで出てきた一つの報告です。自己申告に基づくため、特に女性の不倫率は実際より低く出ている可能性もあります。また、相関関係は因果関係を意味しません。
収入が高い男性が全員不倫をするわけでも、学歴が低い人が不倫しやすいわけでもありません。数字はあくまで集団の傾向であり、あなたやパートナー個人を決めつける材料にはなりません。
それでも、「夫婦の親密さだけを高めれば不倫は防げる」という思い込みから少し距離を取れると、関係の見え方は変わります。愛情を確かめ合うことと、環境や条件を整えることは、別の作業として考えてみる価値があるでしょう。