職場の飲み会や雑談で「大学どこ?」と聞かれ、答えた瞬間に相手の態度が少し変わった。そんな経験をしたことがある人は少なくないだろう。学歴を聞かれるたびに、自分がラベルで値踏みされているように感じて疲れる。一方で、学歴より実績やスキルを見る企業が増えたという話もよく耳にする。実際の人間関係では、この変化にどう向き合えばいいのだろうか。
まず、学歴の話をされたときの対応を分けておく
たとえば、年上の同僚から「やっぱり大卒じゃないと、この業界では苦労するよ」と言われた場面を考えてみる。このとき、相手が本当に心配して言っているのか、自分の価値観を押し付けているのか、それとも単に会話のきっかけなのかで、返し方は変わる。
- 心配して言っている場合:「ありがとうございます。今はこういう実績を積んでいるところです」と、現在の仕事や成果に話を移す。
- 価値観を押し付けている場合:「学歴よりも、いまの仕事で何ができるかを重視する会社も増えていますね」と、一般論として返す。
- 繰り返しマウントしてくる場合:張り合わずに「そういう考え方もあるんですね」と受け流し、物理的・心理的な距離を取る。
ただし、相手が上司や採用に関わる立場なら、流すだけでなく自分の実績を具体的に示すほうが安全なこともある。関係性とその場の目的によって、選ぶ対応は変わる。
学歴は「信用の代行装置」から補助へ変わった
なぜ昔は学歴や家柄がこれほど重視されたのか。ネットがなく、相手の実績を調べるコストが高かった時代には、出身大学や家柄が「この人は信頼できるか」を短縮して判断するための装置として機能していた。学歴を見れば、ある程度の勤勉さや裏切らなさを予測できたからだ。
しかし、今はポートフォリオや実績、数値を細かく確認できる。たとえば、フリーランスに仕事を依頼するとき、以前なら出身大学で判断するしかなかったが、今は過去の制作物や成果を見ればいい。わざわざラベルで人を見る必要が薄れた結果、学歴の役割は主役から補助へ移ってきている。
企業が「即戦力」を求めるようになった背景
この変化は就職活動にも表れている。大学2年時点で就職活動を始める学生が2割、3年時点では6割に上るという調査結果がある。企業側が在学中のインターンや職業訓練を通じて、卒業後すぐに戦力になる人を見極めようとしているからだ。ここで見られているのは、学歴よりも「この会社で通用するかどうか」という実力の部分になる。
国家公務員の応募者数も、ピーク時の4万5000人から1万5000人程度に減ったという数字がある。かつては高学歴者の本流とされた進路が、以前ほど唯一の正解ではなくなっている。これは個人の努力不足ではなく、社会の評価の仕組みが変わったことの表れだ。
それでも学歴が完全に消えない理由
とはいえ、学歴がまったく意味を失ったわけではない。初対面の信用を短縮する道具としては今も機能するし、大きな交渉の場では信頼の手がかりになることもある。「学歴なんて関係ない」と言い切るのも、実態とはずれる。学歴は以前より力を弱めたが、信用の土台の一つとして残っている。
ここで気をつけたいのは、学歴を過度に信じる人と、実績だけを過度に信じる人の両方がいることだ。どちらかに振り切ると、その物差しで測れない部分が見えなくなる。
最後に評価されるのは、数字でも学歴でも人間性
数字や学歴は、人間性の部分が見えにくい人にとってのセーフティネットとして機能する面がある。しかし、長期的な取引や信頼が必要な場面ほど、結局は誠実さや真面目さに立ち返ることが多い。これは根性論ではなく、長く付き合うほど、その人の人間性が判断材料になるという観察だ。
学歴の話に疲れたときは、相手の物差しと自分の物差しを分けて考えるといい。学歴は信用の補助にはなるが、実績や人間性を置き換えるものではない。無理に相手の価値観に合わせず、自分の仕事の積み重ねを話せる範囲で示せば十分だ。