近年、性的同意や不同意をめぐるニュースが増え、交際や親密な関係のあとで「実は同意がなかった」と言われるのではないか、という不安を口にする人が増えています。この不安は、実際に虚偽の申告が報じられた事例や、著名人のトラブルが連日取り上げられる中で強まってきました。ここでは、不安を煽るのではなく、個人の関係の中で選べる対応と、どうしても個人では解決できない部分を分けて考えます。
なぜ「あとから覆る」ように感じるのか
不同意性交等罪の認知件数は、警察庁の統計として2022年からの3年間で大きく増えたと紹介されることがあります。この増加は、被害を申告しやすくなった結果と見ることもできます。一方で、密室での出来事は物的証拠が残りにくく、当事者の供述が重要な判断材料になります。そのため、当初は同意があったと認識していた関係でも、後日の申告によって事実関係が争われるケースが生じます。
さらに、録音や第三者の証言によって嫌疑が晴れた事例や、後に証言が撤回された事例が話題になると、「自分も同じ目に遭うかもしれない」という感覚が広がります。ただし、こうした事例が全体のどれくらいを占めるのかを断定するデータは限られており、不安が実際のリスクと比例しているとは限りません。
関係の中でできる具体的な対応
不安をゼロにする方法はありませんが、誤解や行き違いを減らすための行動はあります。ここでは、仮の例として、交際や親密な関係を想定した選択肢を示します。
1. 曖昧な空気のまま進めない
相手の表情や沈黙を「同意」と決めつけず、言葉で確認する習慣は、後からの認識のずれを小さくします。たとえば「今日はこのあとどうしたい?無理にとは思わないで」と伝えるのは、相手が断りやすくなる言い方の一つです。ただし、確認したからといって法的な意味での同意が常に成立するわけではなく、相手がその場では言い出せないこともあります。
2. 相手の状態と力関係を見る
飲酒や疲労、立場の上下がある場面では、本人の意思表示がはっきりしていても、あとから「あのときは断れなかった」と感じられることがあります。誘う側は、相手が断っても関係が壊れないことを伝え、急かさないことが実用的です。特に職場や先輩後輩の関係では、この点が重要になります。
3. 関係が終わったあとの連絡は記録に残す
別れ話がこじれた場合、過去の関係について「不同意だった」と言われるリスクを完全には排除できません。できることとしては、感情的なやりとりを避け、メッセージの内容を客観的に残しておくことがあります。ただし、相手の同意なく会話を録音する行為は、別の法的問題を生む可能性があるため、勧められません。記録を残すなら、双方が目にするメッセージのやりとりが無難です。
個人では解決できない部分
「女性の供述が証拠と同じように扱われている」という批判や、「虚偽申告への罰則を重くすべきだ」という意見は、制度の在り方を問うものです。こうした議論は重要ですが、個人の努力だけで司法の判断や社会の反応を変えることはできません。また、虚偽申告への対策を強めると、実際に被害を受けた人が申告をためらう副作用も考えられます。どちらの不安も、同じ制度の不確かさから生まれています。
もし「自分は何もしていないのに訴えられるかもしれない」という不安が強く、日常生活や恋愛に支障が出ているなら、法律相談やカウンセリングを利用するのも選択肢です。不安を一人で抱え込まず、事実と想像を分ける助けになります。
まとめ
性的同意をめぐる不安は、相手を疑うことでも、自分を責めることでもなく、関係の不確かさへの対処として考えられます。できることは、曖昧さを減らす言葉、相手の状態への配慮、記録の残し方です。できないことは、相手のあとからの気持ちや司法の判断を完全にコントロールすることです。自分の行動を説明できる範囲を整えつつ、制度への違和感は別の場所で議論する。その分離が、不安に振り回されないための現実的な一歩になります。