恋人ができると友人が減るのは、切ったからではない。新しい友情が始まらないだけ
人間関係

恋人ができると友人が減るのは、切ったからではない。新しい友情が始まらないだけ

読了目安:約4分
文字サイズ

恋人ができると友人が減る、その仕組み

友達に恋人ができた。最初はよかったねと思っていたのに、誘いの返事が遅くなり、会う回数が減り、気づけば自分から誘わなくなっていた。相手を責める気持ちと、自分が狭量なのかという後ろめたさが混ざる。この経験は特別なことではない。

進化人類学や社会心理学の研究では、人間が安定した関係を保てる人数には上限があるとされる。よく知られる数字は約150人。ただしこれは顔見知りの数ではなく、顔と名前が一致し、今も関係が続いている相手の数だ。この約150人という上限は、ダンバー数と呼ばれることがある。

内側にある3〜5人の定員

さらに内側には、深刻な困り事のときに助けを求められる相手の層がある。研究では支援集団と呼ばれ、その人数は3人から5人程度と報告されている。友達が多いと感じている人でも、この条件で数えると同じくらいの人数に落ち着くことが多い。

この層は努力や性格で大きく広がらない。社交的な人は外側の層が大きいだけで、一番内側の人数は似通っている。関係を維持するには時間が必要で、1日は24時間しかないからだ。

恋人一人で三席分を使う理由

恋愛初期は時間が一点に集中する。友人と会うのは数時間でも、恋人とは週末が丸ごと消えることがある。これまで複数の人に配っていた時間と同じ量が一人に向かうため、内側の層から押し出される人が出る。ある調査では、恋人ができると支援集団が約2人分小さくなったと報告されている。恋人が1人加わったうえで2人減るので、差し引きで3人分の入れ替わりが起きていることになる。

ここで誤解しやすいのは、誰かが意図的に友人を切ったわけではないという点だ。恋人ができた人に「もう連絡しない」と告げた覚えはない。忙しかっただけ、時間がなかっただけ。だが、相手側から見ると「切られた」ように感じられる。

減るのは友人だけではない

同じ研究では、失われる人数は血縁と非血縁でほぼ等しかった。友人1人と家族1人という形で減ることもある。親は親のままでも、困ったときに最初に浮かぶ顔が入れ替わる。実家に連絡していないと気づくのは、何か月も経ってからということも珍しくない。

新しい友情が始まらない、という見方

2024年に発表された研究では、10代から20代の若い人を追跡し、恋人ができた人の既存の友情が終わる確率は上がっていなかった。代わりに、新しい友情が始まる確率だけが下がっていた。つまり友人が減っているのではなく、増えなくなっている。

人間関係は放っておいても自然に入れ替わる。転勤や結婚で会わなくなる人がいて、普段は新しい人が補充される。恋愛初期はその補充が止まるため、誰も切っていないのに人数だけが減る。水が少しずつ漏れている桶に、普段は上から注いでいる。注ぐのをやめてもその日は減らない。気づくのは何か月も経ってからだ。

関係を続けたいときの現実的な選択

この仕組みを知っておくと、自分を責めずに済む。恋人ができた側は、恋愛初期に時間が偏るのは自然なことだ。ただし、既存の友人や家族との連絡を完全にやめると、相手側は「切られた」と感じやすい。たとえば、月に一度の短いメッセージや電話を続けるだけでも、相手の受け取り方は変わるかもしれません。これは効果を保証するものではなく、あくまで一つの選択です。

逆に、友人の側に立った場合は、相手が変わったのではなく、補充が止まっているだけかもしれない。あなたから誘う頻度を少し上げる、あるいは自分も別の集まりに参加して新しい関係を作る、という選択肢がある。ただし、何度誘っても断られ、関係が一方的に消耗するなら、距離を置くことも現実的な判断です。無理に維持しようとせず、安全面や精神的な負担を優先してください。

最後に新しく親しくなったのはいつか

誰かを切ったわけでも、相手が悪いわけでもない。恋愛初期に新しい友情が始まりにくくなるという仕組みは、個人差があるものの、多くの人に当てはまる傾向です。最後に新しく親しくなったのはいつか、という問いが、今の人間関係を見直す手がかりになります。減った人数を嘆くより、これから誰とどう時間を使うかを選ぶほうが、現実的かもしれません。

シェアする

気になる記事から、別の視点も見つけてみませんか。

「優しすぎて疲れる」あなたへ。自分も相手も大切にするための「真の優しさ」とは
人間関係2026年10月22日

「優しすぎて疲れる」あなたへ。自分も相手も大切にするための「真の優しさ」とは

「あなたは優しすぎるから、もっと自分を主張したほうがいいよ」周囲からそんなふうに言われたことはないでしょうか。相手の要望に応えたい、誰かの役に立ちたいという思いで行動しているのに、気づけば心身ともに疲れ果てていたり、都合よく利用されていると感じたりすることもあるかもしれません。 仏教的な視点から見る...

記事を読む
聞き上手な人が口にしない、心の中の余計な一言
人間関係2026年10月22日

聞き上手な人が口にしない、心の中の余計な一言

誰かに悩みを打ち明けたとき、解決策や正論ではなく、ただ「大変だったね」と受け止めてもらえたことで、肩の力が抜けた経験はないだろうか。逆に、話した後になぜか余計に疲れてしまう会話もある。その違いは、相手が何を言ったかではなく、何を言わずにいてくれたかにある。聞き上手な人は、相槌が上手なだけではない。会...

記事を読む
「雑談が苦手」は才能のせいではない?人間関係を楽にする「対話」の考え方
人間関係2026年10月22日

「雑談が苦手」は才能のせいではない?人間関係を楽にする「対話」の考え方

「雑談」にプレッシャーを感じていませんか 仕事や人間関係において、「本題さえしっかりしていればいい」「雑談なんてただの世間話だから、できなくても問題ない」と感じる方は少なくありません。一方で、雑談が苦手なために、相手との距離が縮まらないことに不安やストレスを感じている方もいるでしょう。 仏教的な視点か...

記事を読む
老害は年齢ではなく「位置」の問題——本人だけが気づけない理由と、今日できること
人間関係2026年10月22日

老害は年齢ではなく「位置」の問題——本人だけが気づけない理由と、今日できること

たとえば、会議室で20代の社員が新しいツールの導入を提案したとします。それを聞いた34歳の先輩が「前にも似たようなのを試したけど、結局うまくいかなかったんだよね」と言い、58歳の部長が「それ、どのくらいで試せる?」と聞く。この場面で「老害」と呼ばれそうな振る舞いをしているのは、年上の部長ではなく若い先輩の...

記事を読む

気になるテーマを、次も。

フォローしたテーマの新着記事をホームに表示します。登録は不要です。