親が捨てられない物と向き合う実家の片づけ|説得ではなく「場所」と「上限」から始める
実家の片づけ

親が捨てられない物と向き合う実家の片づけ|説得ではなく「場所」と「上限」から始める

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久しぶりに実家へ帰ると、玄関に入った瞬間に物が増えていると感じることがあります。廊下の端に紙袋が並び、台所の隅に空き箱が積んである。つい「これ、もう捨てたら」と言ってしまい、親の表情が一瞬曇る。でも、親を説得して物を捨ててもらう方法は、おそらくありません。説得しなくても実家は変えられます。物を否定するのではなく、置く場所や量の上限を親自身に決めてもらう。そして最初に手をつけるのは親の物ではなく、自分の物です。

ここでは、親が捨てられない物をタイプごとに分け、無理なく進めるための具体的な工夫を整理します。一度に全部を片付けようとせず、次に帰省したときにできる小さな行動を選ぶのが前提です。

紙袋や空き箱は「だらしなさ」ではなく暮らしの習慣

タンスの横や冷蔵庫と壁の隙間に、大きさ順にぎっしり差し込まれた紙袋。包装紙やリボン、綺麗な空き箱や空き缶も同じです。子どもの目にはただの袋や箱でも、親の世代にとっては少し意味が違います。物が少なかった時代に子ども時代を過ごした人にとって、綺麗な袋はそれだけで貴重なものでした。もらったらきちんと畳んで、次に使える日まで取っておく。それはだらしなさではなく、きちんとした暮らしの証でした。

だから「捨てたら」と言われると、自分の暮らし方そのものを否定されたように感じてしまいます。ここでは捨てる話をせず、上限を決める提案をしてみてください。「この箱に入る分だけにしようか」という言い方なら、親が大切にしてきた習慣を否定せずに済みます。紙袋は1つの箱、空き缶はお気に入りを1つ選んでもらい、その中に入る分だけを残す。選ぶのは親です。選ばれた缶はこれからも大事に使われます。

紙袋の山の中には、子どもにおかずや果物を持たせてあげたいという気持ちも一緒に入っていることがあります。そのことを知っていると、同じ山が少し違って見えてきます。

輪ゴムや割り箸、保冷剤は「使う分だけ」を親に数えてもらう

台所の引き出しには持ち帰りの弁当についてきた割り箸が何十膳も入り、ドアノブには輪ゴムがかかり、冷凍庫の扉を開けるとケーキについてきた保冷剤が食べ物より場所を取っている。どれもお金を出して買ったものではなく、向こうから勝手にやってきたものです。だから手放す理由も見つけにくい。そして、どれもいつか役に立つ場面は確かにあります。

ただ、保冷剤で冷凍庫が埋まっていると、肝心の食べ物が入りません。冷凍庫が物でいっぱいだと冷える力も落ちやすくなると言われています。保冷剤は冷凍庫に入る分だけ、たとえば小さな袋1つ分と決めてみてください。割り箸は1か月に使う数だけを残します。数を決めるときは、親自身に数えてもらうのが大切です。自分で数えると自分で決められます。自分で決めたことなら、次に帰ったときも守られやすくなります。

保冷剤の手放し方は自治体によって分別が違うため、親の住む地域の決まりを一緒に確認してあげてください。

押入れの贈答品は「親自身のために使ってもらう」

箱に入ったままのタオルセット、石鹸の詰め合わせ、包装されたままのシーツや毛布。いつか誰かにあげるかもしれない、来客のときに綺麗なものを出せるようにと取ってあります。その一方で、毎日使っているタオルは何十年も前の薄くなったものだったりします。

ここでできる一番優しい提案は、「これ、せっかくだからお母さんが使ってみたら」と、親自身のために使ってもらうことです。取っておいたものを自分のために使うことに、どこか後ろめたさを感じる世代です。使っていいんだよと言ってもらえるだけで、ほっとした顔になることがあります。箱から出して使い始めた分だけ、押入れの箱が1つずつ減っていきます。無理に全部を出さなくても、まずは1つからで十分です。

動かなくなった家電は「修理の話」から手放し方へ

動かなくなった古いテレビ、音の出ないラジオ、壊れたままの扇風機、何十年も前に買った家電の空き箱。「直せばまだ使える」と言って、修理に出すつもりのまま部屋の隅に置いてあることがあります。健康のために買った器具が洋服掛けになっていることもあります。どれも物を大事にする気持ちから残っています。壊れたら捨てるのではなく、直して使う。それも親の世代が当たり前のようにしてきたことです。

ここでは「捨てよう」ではなく、「一緒に修理を頼んでみようか」と話してみてください。直せないと分かったとき、親も自分で納得できます。手放す際は、テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機は家電リサイクル法の対象で、普通ごみとしては出せません。買った店や指定された窓口を通して引き取ってもらう必要があります。親だけで調べるのは大変な手続きなので、一緒に確認してあげてください。重い物を運ぶ役目は子どもが引き受けるのがいいでしょう。

最初の一歩は「自分の物を引き取る」

実家には、学生時代の教科書、卒業アルバム、部活の道具、昔の洋服、子どもの頃のぬいぐるみ、結婚するまで使っていた机など、自分自身の物が残っていることがあります。親から見ればそれは子どもの物なので、勝手に捨てるわけにはいきません。だから何年もそのままになっています。もう一つの理由は、親にとって子どもの物は、子どもがこの家にいた時間そのものだからです。ランドセルや小さな上履き、下手な字で書いた作文を時々出して眺めている親もいます。それは片付けられない物ではなく、片付けたくない思い出です。

実家を片付けたいと思ったとき、私たちはつい親の物に目を向けます。でも、実家の中で親が一番手をつけられないのは子どもの物です。だから最初の一歩は、自分の物を引き取ることです。これなら誰とも言い争う必要がありません。自分の物を真剣に選んで手放す姿を見せると、親も少しずつ自分の物を見る目が変わっていきます。言葉で説得するよりずっと伝わります。次に帰省するときは片付け用の箱を持っていき、1箱分だけ引き取って帰ると決めておくと、負担が少なく始められます。

床に置かれた物は「捨てる」ではなく「通り道を開ける」

廊下に積まれた新聞の束、部屋の隅からはみ出した座布団、床を横切る電気コード、めくれた絨毯、部屋の入り口に置かれた紙袋。住んでいる本人には見慣れた景色ですが、転倒のリスクが高まります。転倒事故に関する東京消防庁のまとめでは、高齢者の日常生活の事故で救急搬送された人のうち8割以上が転倒によるものだったそうです。転んだ場所で最も多いのは住まいの中、中でも階段ではなく寝室など普段過ごしている部屋です。令和6年だけで約3万人に上るという数字が示されています。

年齢を重ねると足は思ったより上がらなくなります。本人は上げているつもりでも、つま先は数cmしか上がっていないことがあります。その数cmの差を、床の物が埋めてしまいます。夜中にトイレに起きたとき、暗い部屋でコードに足を取られることもあります。

ここで話す言葉を変えてみてください。「これ捨てようか」ではなく、「通り道だけ開けておこうか」。部屋全体を片付けるのではなく、寝室からトイレまで、居間から台所まで、毎日歩く道の上だけを何もない状態にします。新聞の束は壁際の決まった場所へ、電気コードは壁に沿わせて、めくれた絨毯の端はしっかり止めるか、思い切って外します。夜中の通り道には足元を照らす小さな明かりがあると安心です。かかとのないスリッパより、かかとまで包む室内履きの方がつまずきにくいとも言われています。物は捨てていません。場所を少し動かしただけですが、足元は驚くほど安全になります。

ただし、ここは親の家です。何をどこへ動かすかは必ず親と一緒に決めてください。黙って動かされた物は親を混乱させ、帰ってから探し回る原因になります。一緒に決めた通り道なら、親は自分でその道を守ってくれます。話を切り出すときは「散らかってるね」ではなく、「この前帰ったとき、ここでつまずきそうになって心配だったの」と自分の気持ちから伝えてください。一度で全部をやろうとせず、1回の帰省で1本の道だけを開けると決めれば、親も疲れず、言い争いにもなりにくくなります。

親を説得して物を捨ててもらうのは難しいことです。でも、物を否定せず、置く場所と量の上限を親自身に決めてもらう。自分の物から手をつける。そして床の通り道だけを安全にする。この順番なら、実家は少しずつ変わっていきます。次に帰省したとき、まず何を選ぶか。一つだけ決めておくと、気持ちが楽になります。

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