痩せたいなら走るべきか、それとも歩くだけでいいのか。結論から言うと、脂肪を減らす目的では、必ずしもランニングは必要ありません。息が上がるほどの運動より、会話ができる程度のウォーキングのほうが続けやすく、筋肉を守りながら活動量を積み上げやすい、という考え方があります。ただし、ランニングが無意味というわけではなく、心肺機能を高めたい人や、走ることが苦にならない人には合う方法です。
ここで大切なのは「走るか歩くか」を根性で決めることではなく、自分の目的と体調に合う強度を選ぶことです。以下では、ランニングが脂肪減らしに向かないとされる理由と、歩く場合に意識したいポイントを整理します。
ランニングが「脂肪を減らす運動」と限らない理由
筋肉が減り、基礎代謝が下がる可能性
強い運動を続けると、体はエネルギー不足を補うために筋肉を分解してエネルギーを作ることがあります。筋肉量が減ると基礎代謝、つまり何もしなくても消費されるカロリーが下がり、痩せにくい体になる可能性があります。ランニング経験の少ない人を対象にした小規模な研究として、持久トレーニング中に筋肉量が減った例が紹介されることがありますが、これは食事や運動量、体調によって変わるため、すべての人に同じことが起きるわけではありません。
ストレスホルモンの影響
ランニングは体への負担が大きい運動です。疲労が強い状態が続くと、体はコルチゾールというストレスホルモンを分泌します。コルチゾールは適量なら必要ですが、過剰になると脂肪が燃えにくくなったり、インスリンの働きが関わって脂肪をため込みやすくなったりする、という説明があります。毎朝のランニングがつらく、仕事中に眠くなるほど疲れるなら、その強度は自分に合っていない可能性があります。
消費カロリーに対して時間がかかる
体脂肪1kgを落とすには、目安として約7200kcalの消費が必要とされます。体重70kgの人が1km走って消費するのは約80kcalです。単純計算すると、3kg減らすには270km走ることになります。もちろん実際には食事や代謝の影響があり、この計算だけで決まるものではありません。それでも、走る時間を毎日確保するのが難しい人にとっては、現実的な方法とは言いにくいでしょう。
脂肪燃焼には「会話できる速さ」が向く
脂肪をエネルギーとして使いやすいのは、激しすぎない中程度の強度だと言われます。目安は、隣の人と会話ができるくらいの速さです。息が切れるほど追い込むと、体は脂肪より糖質を多く使う方向に切り替わります。脂肪は運動開始直後からも使われるため、10分の散歩が無意味というわけではありません。ただ、脂肪の利用が増えやすいとされる時間帯を意識するなら、30〜60分程度のゆっくりしたウォーキングが一つの目安になります。
長時間歩けばいいというものでもありません。60分を大きく超えると疲労が蓄積し、筋肉を分解する可能性も出てきます。歩く時間は、体力や予定に合わせて調整してください。
食後10分の散歩と、日常の動き「NEAT」
食事の後に10分歩くだけでも、食後の血糖値の上がり方を抑える効果が期待できるという研究が紹介されています。血糖値の急上昇が続くと、脂肪がため込まれやすくなると言われます。食後に体を動かすと、糖がエネルギーとして使われやすくなるためです。紹介されていた研究では、食後に歩くグループの血糖値が平均12%低下し、夕食後は22%改善したという数字がありました。ただし、これは特定の対象者と条件での結果です。健康な人すべてに同じ数字が当てはまるわけではありません。
もう一つ大事なのが、NEATです。Non-Exercise Activity Thermogenesisの略で、運動以外の日常の動きで消費するカロリーを指します。通勤で歩く、掃除をする、階段を使う、こまめに立つ。こうした何気ない動きは、1日の消費カロリーの大きな部分を占めます。研究によっては、NEATが高い人と低い人で1日350〜2000kcalもの差が出たという報告もありますが、これは個人差が大きい数字です。ジムに行く時間がなくても、階段を選ぶだけで活動量は変わります。
筋トレとゆるい食事調整でリバウンドを防ぐ
食事制限だけで体重を落とすと、体脂肪だけでなく筋肉も減りやすいと言われます。筋肉が減ると基礎代謝が下がり、リバウンドしやすい体になる可能性があります。そこで組み合わせたいのが筋トレです。週2回、1回30分程度でも、スクワットや腕立て伏せのような基本的な運動は役立ちます。週2回が難しければ週1回から始めても構いません。
食事は極端に減らさず、1日200〜300kcal程度を目安に調整します。ご飯を軽く一杯減らすくらいのイメージです。食事療法と運動療法を組み合わせると、脂肪減少の効果が高まりやすく、筋肉量を維持しながら体脂肪を減らしやすいという報告もあります。ただし、必要なカロリーや栄養バランスは体格や活動量で変わります。持病がある人、服薬中の人、食事制限が必要な人は自己判断せず、医師や管理栄養士に相談してください。
ランニングが向いている人、歩くほうが向いている人
ランニングが向いているのは、心肺機能を高めたい人、走ることに楽しさを感じる人、短時間で強い運動をしたい人です。一方、膝や腰に不安がある人、運動習慣が長く続かなかった人、仕事の疲労が強い人、まずは脂肪を減らしたい人は、ウォーキングから始めるほうが現実的です。
注意したいのは、歩けば必ず痩せるというわけではないことです。睡眠不足、ストレス、食べ過ぎ、体調、年齢なども関わります。歩いても体重が動かないからといって、すぐに走る量を増やす必要はありません。まずは食後の10分、階段を使う、座り続けない、週2回の筋トレ。できる範囲で続けてみてください。痛みや強い疲れがある場合は、運動を続ける前に医療機関へ相談してください。
走ることをやめる必要はありません。目的が脂肪減少なら、毎日きついランニングを根詰めて続けるより、会話できる速さの散歩と日常の活動量、筋肉を落とさない食事を組み合わせるほうが続けやすい、というのが一つの現実的な選択です。