「もしバブルが崩壊しなかったら」と考えてしまう心理——時代に人生を採点させないために
心理学

「もしバブルが崩壊しなかったら」と考えてしまう心理——時代に人生を採点させないために

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「あのとき、時代がもう少し良ければ」。そう考えてしまう夜はありませんか。結論を先に書くと、景気や時代が暮らしを大きく左右するのはたしかです。ただ、時代が良くなれば人生の悩みが自動的に消えるわけでもありません。ここでは「もしバブルが崩壊しなかったら」という空想を手がかりに、時代に自分の人生を採点させてしまう心の動きを整理します。

「時代のせい」にしたくなるのは、逃げではない

うまくいかない理由を時代や景気に求めるのは、自分を守るための説明のひとつです。心理学では、物事の原因をどこに置くかを「帰属」と呼びます。原因を外側に置くことを外的帰属、自分自身に置くことを内的帰属といいます。

落ち込んでいるときに「すべて自分の努力不足だ」と内的帰属ばかりしていると、心はかなり消耗します。その点で、外的帰属は自分を責め続けないための知恵でもあります。

ただし、すべてを時代に預けてしまうと、自分の手で動かせる部分まで見えにくくなります。時代の影響は認めつつ、それだけにしない。このバランスが難しいところです。

「もしも」を想像する心——反実仮想という見方

現実とは違う可能性を思い描くことを、心理学では反実仮想(はんじつかそう)と呼びます。現実より良い方向を想像する「上向き」と、悪い方向を想像する「下向き」があります。

上向きの反実仮想は、後悔や落ち込みを強めやすいとされます。一方で、次にどう動くかを考える材料になることもあり、影響の出方には個人差があります。「もう一つの人生」を思い描くこと自体が悪いわけではなく、そこで思考が止まってしまうと、つらさが長引きやすくなります。

空想の中の「豊かな日本」が映しているもの

「バブルが崩壊せず、高い成長が続いたら」という空想は、昔から繰り返し語られてきた題材です。株価や給料の数字を並べたシミュレーションが作られることもあります。ただし、それはあくまで物語の設定であり、現実の予測ではありません。

興味深いのは、その手の空想の中でさえ、暮らしの格差が消えないことです。高い成長が続く世界でも、非正規で働く人の時給は少ししか上がらず、家賃や教育費はもっと速く上がる。土地の値段が上がり続け、住み続けられなくなる人が出る。休まず働くことが評価される。

ここから読み取れるのは、「時代が良ければ全員が楽になる」わけではない、ということです。平均が上がっても、その平均に入らない人はいます。景気が良いときほど、恩恵の配分は偏りやすい。これは空想を眺めたうえでの私の解釈であり、断定できる話ではありません。

「上がり続ける前提」で決めるときの危うさ

空想の中では、給料が毎年上がることを前提に、大きな買い物や借り入れの契約をしてしまう場面が描かれます。仮の例として、変動金利の住宅ローンを考えてみます。毎月の返済額は金利が上がれば増えます。収入が伸び続ける前提で組んだ返済計画は、その前提が崩れたときに一気に重くなります。

現実の判断でも、似た構造があります。将来の自分は今より稼げるはず、という前提で借りる。契約書は読まずに、あるいは読んでも意味が分からないままサインする。空想の話として笑えないのは、この部分が実際によくあるからです。

提案として、大きな契約の前に次のことを試してみてください。金利が1%上がった場合の毎月の返済額を書き出す。変動と固定の違いを、自分の言葉で説明できるまで確認する。契約書のうち、金額と期間と変更条件のページだけを先に読む。効果を保証するものではありませんが、前提を可視化するだけでも判断は変わります。

時代に採点を外注しないために

時代や景気は、自分ひとりでは動かせません。だからこそ、自分の価値の採点まで時代に任せてしまうと、心の置き場所がなくなります。次のような小さな分け方が役に立つことがあります。

  • 「時代が悪い」という言葉を、事実の部分と解釈の部分に分けてみる。
  • 変えられる範囲を、今日ひとつだけ小さく区切る。
  • 比べる相手を「もう一つの世界の自分」ではなく、少し前の自分にする。
  • 金額や条件の不安は、ひとりで抱えず誰かに話す。

どれも、つらさを消すための特効薬ではありません。合わないと感じたら、無理に続けなくて大丈夫です。

当てはまらない場合

お金の不安が強く、眠れない日が続くときや、気分の落ち込みが長く続くときは、この記事のような整理だけで抱え込まないでください。公的な相談窓口や医療機関、専門の相談機関に相談することが選択肢になります。心理的な知識は、診断や治療の代わりにはなりません。

時代は、あなたの採点者ではない

時代の影響は、確かにあります。けれど時代は、自分の人生の採点者ではありません。「もしも」を想像することは、今の暮らしを見直すきっかけにはなりますが、そこで自分の価値まで決める必要はないのです。

今日できるのは、返済の前提をひとつ書き出すことや、モヤモヤを誰かに話すことくらいかもしれません。それだけで人生が変わるとは言えませんが、時代に預けていたものを自分の手元に戻す手がかりにはなります。

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