体が休まらないのは、敵よりフレネミーの相手
アメリカの大学で、102人の大人が3日間、血圧計をつけたまま暮らした研究がある。人と話し始めて5分経つたびに血圧を測り、話した相手とその関係を日記に記録した。最も血圧が高かったのは、嫌いな人と話しているときではなく、好きでも嫌いでもある相手と話しているときだった。支えになる相手より、そして嫌なだけの相手よりも高かった。
別の研究では、107人が同性の友人を1人連れてきて、最近あった嫌な出来事を話した。血圧が大きく上がったのは、支えになる友人ではなく、好きでも嫌いでもある友人に話したときだった。さらに、どちらの友人を連れてくるかをくじで決めた研究では、課題が始まる前、ただ座っている段階から、好きでも嫌いでもある友人の組は血圧と不安が高かった。相手が隣にいるだけで、体は休まらなかった。
画面に一瞬だけ身近な人の名前を映し、本人には気づかれないようにする実験もある。その後で難しい課題をすると、心拍が最も上がったのは、好きでも嫌いでもある人の名前を見たときだった。顔を見なくても、名前だけで体は身構えていた。
48歳から77歳の136人を調べた研究では、好きでも嫌いでもある相手が多い人ほど、細胞の老化の目安とされるテロメアが短い傾向があった。年配の夫婦136組を調べた研究では、お互いを好きでも嫌いでもあると見ていた夫婦で、心臓の血管にカルシウムが最も多く溜まっていた。ただし、これらはそういう人が多かったという記録であり、その関係のせいで体が弱ったとまでは言えない。
なぜ敵よりも体にこたえるのか
一番わかりやすい答えは、時々ひどいことを言われるから、だろう。しかし、いつもひどい相手のほうが血圧は上がるはずだ。研究者たちは、いくつかの手がかりを集めてきた。
- 同じ一言でも刺さり方が違う。どうでもいい相手の皮肉は聞き流せても、大切に思っている相手の皮肉は心の奥まで届く。
- いつ優しくいつ冷たいのか読めない。今日は味方なのか、それとも刺してくるのか。読めない相手の前では、体がずっと身構え続ける。
- 距離を置きにくい。嫌なだけの相手からは少しずつ離れていくが、好きでも嫌いでもある相手とは近くで何度も会い続ける。
これらの説明は、研究者たちの説として今も一つずつ確かめられている途中だ。
フレネミーは特別な悪人ではない
では、味方の顔をした人はなぜ時々刺してくるのか。その手がかりになる古い実験がある。1980年頃、アメリカの大学で、男性たちが友人を1人連れてきて、2組の友達同士4人が言葉当てゲームをした。ヒントは他の人が優しいものから難しいものまで選んで渡す。半分の回では、このゲームが言葉の知能とリーダー素質を測るものだと伝えられ、残りの回ではただの遊びだと伝えられた。最初に答える人は、わざとうまくいかないようにされていた。うまくいかなかった直後、その人は友人と見知らぬ人にヒントを渡す。
ただの遊びの回では、13回のうち10回で友人のほうに優しいヒントを渡した。ところが、知能を測ると言われた回では、13回のうち10回で優しいヒントを渡されたのは見知らぬ人のほうだった。友達には難しいヒントを渡していた。
この実験をした心理学者は、相手が近い、自分にとって大事な分野、そして相手のほうがうまくいきそう、という3つの条件が揃うと、人は相手と自分を比べて傷つくと考えた。逆に、自分にとって大事でない分野なら、近い人の成功は自分の誇りになる。同じ教室、同じ職場、同じ趣味。近くにいて同じものを目指す人ほど、比べる相手になりやすい。
つまり、フレネミーは特別な悪人とは限らない。条件が揃えば、誰の心の中でも同じ仕組みが動き出す。ただし、このヒントの実験そのものは26回の小さな記録であり、学説としては有力だが、すべてが確かめられたわけではない。
離れられないのは、外の事情だけではない
体にこたえるのに、人はなぜその人から離れないのか。学校や職場で仕方なく会っているから、と考えたくなる。しかし、友達同士を調べた研究では、一番の理由は外の事情ではなかった。長い付き合いがある、良かったときの思い出がある、この人を見放したくない。理由はその人自身の心の中にあった。
大学生72人にフレネミーについて自由に書いてもらった研究でも、似た答えが並んだ。メンツを保てる、仲間とのつながりが保てる、いつか役に立つかもしれない。そして多くの人が選ぶのは、会う回数を減らし、本音を話さないという静かな距離の取り方だった。けれど、相手は距離を置かれたことに気づかない。関係の形はそのまま長く続いていく。
人は長い間、小さな群れの中で暮らしてきた。一番近い仲間は一番頼れる味方だったが、その同じ仲間は、同じ食べ物や群れの中の立場を取り合う相手でもあった。味方であり競う相手でもある近い人と比べてしまう心は、その暮らしの名残りかもしれない。これは一つの考え方で、確かめようのない部分も多い。
良い知らせへの反応が、関係の行方を映す
恋人同士を調べた研究に、こんな記録がある。2か月後の2人の関係をよく言い当てたのは、嫌な出来事を話したときの返し方ではなく、良い出来事を話したときの返し方だった。最初の昼休みのテーブルに戻ると、「よかったね」の後に続いた小さな一言は、相手が悪い人だったという印とは限らない。近くで同じものを目指す2人の間で、比べる心が少しだけ顔を出したのかもしれない。そして、同じ仕組みは私たちの中にもある。
あなたの良い知らせを心から「よかったね」と言ってくれる人は、思い浮かぶだろうか。そして、あなたはその人の良い知らせを心から喜べているだろうか。答えがすぐに出なくても、それ自体が一つの手がかりになる。
人との関係のつらさで眠れない日や食べられない日が続くときは、一人で抱えずに専門の窓口を頼ることもできる。