親切にしたはずなのに、なぜか心が苦しいとき
誰かのために親切にしたはずなのに、後になって「あんなにしてあげたのに、全然感謝されない」と不満や怒りが湧いてくることはありませんか。もともとは純粋な気持ちで始めたことでも、期待していた反応が得られないと、ストレスに変わってしまうことがあります。
実は、この「親切を覚えていること」自体が、人間関係において思わぬ障害になることがあります。仏教の視点から、心地よい人間関係を築くための「忘れるべきこと」と「覚えているべきこと」について考えてみましょう。
Q. 親切にしたことを忘れるなんて、損をすることではありませんか?
A. 損をすることではなく、自分自身の心を自由にするための方法です。
仏教には、布施(ふせ:見返りを求めず、慈しみの心で物や心を分け与えること)をする際に大切にしたい「三輪空(さんりんくう)」という考え方があります。これは、以下の3つの要素を忘れるように、という教えです。
- 誰が(与える側)
- 誰に(受け取る側)
- 何を(与えた物や事)
「私が、あの人に、こんなに素晴らしいことをしてあげた」という記憶を強く持ち続けると、無意識のうちに「見返り」や「感謝」を期待する心が芽生えます。その期待が裏切られたとき、心には怒りや悲しみが生まれます。三輪空の考え方は、こうした「見返りを求める心」から自分を解放し、純粋な喜びだけを残すための知恵です。