派遣会社が苦しくなった三つの変化
派遣会社の倒産が増えている背景には、大きく三つの変化があります。
マージン率の公開で利益を確保しにくくなった
2008年のリーマンショックでは、製造業を中心に派遣切りが相次ぎ、派遣労働の不安定さが社会問題になりました。これをきっかけに2012年、労働者派遣法が改正され、派遣会社にマージン率の公開が義務付けられました。マージン率とは、企業が支払う派遣料金のうち、派遣会社が手数料などとして得る割合です。公開されることで、働く側は自分の給与と派遣料金の差を把握できるようになり、極端に高い手数料を取る会社を避けやすくなりました。その結果、派遣会社は以前のように高い利益率を維持しにくくなりました。
正社員求人の増加で登録者が減った
2016年から2018年にかけて日本経済が緩やかに回復し、多くの企業で人手不足が深刻化しました。すると企業は正社員の求人を増やし、派遣で働いていた人が直接雇用に移るケースが増えました。安定した雇用を求める人が派遣を離れたことで、派遣会社の登録者数が減少しました。派遣会社にとって登録者は商売の源泉なので、これが経営を圧迫します。
リモートワークとスポットワークの広がり
新型コロナウイルスの流行で在宅勤務が一般化すると、派遣労働者が対応しにくい業務形態が増え、企業からの派遣需要が減りました。さらに2023年以降、政府が賃上げを後押しする中で、企業は派遣料金の負担を重く感じるようになりました。派遣料金は正社員の給与より高くつくことがあるため、賃上げが進むほど「派遣を使い続けるより直接雇用や他の方法で補おう」と考える企業が増えています。
同時に、タイミーのような即日払いのスポットワークアプリが広がり、隙間時間に働きたい人が派遣登録をしなくても仕事を見つけられるようになりました。派遣会社に登録する理由が相対的に薄れ、登録者集めがさらに難しくなっています。
派遣で働く人が倒産リスクに備えるために
派遣会社の倒産は、そこで働く人に直接影響します。未払い賃金や契約打ち切りのリスクを減らすために、次の点を確認しておくと安心です。
- マージン率を確認する:公開されているマージン率を見て、自分の給与と派遣料金の差が極端に大きくないか確認します。高いから必ず危険とは言えませんが、比較の材料になります。
- 給与支払いと社会保険の条件を確認する:給与の支払いサイト、社会保険の加入状況、契約期間を契約前に確認します。倒産時には未払い賃金の立替払い制度がありますが、手続きに時間がかかることがあります。
- 複数の派遣会社に登録しておく:一社に依存せず、複数の選択肢を持つことで、突然の契約終了や会社の経営悪化に備えられます。
- 直接雇用やスポットワークと比較する:派遣のメリットは期間限定で専門的な仕事に就けることですが、不安定さやマージンというデメリットもあります。正社員求人やスポットワークの条件と並べて、自分に合う働き方を検討します。
- 派遣先の経営状況も確認する:派遣先企業の業績が悪化すると契約が打ち切られることがあります。派遣先の業界動向や求人状況にも目を向けます。
企業側が派遣の利用を見直す視点
企業にとって派遣は、必要な期間だけ人を確保でき、固定費を変動費に変えられる利点があります。しかし、派遣料金は正社員の給与より高くつくことがあり、賃上げが進む中でその負担は重くなります。派遣に頼り続けるより、業務の切り出しや直接雇用、業務委託、スポットワークの活用など、複数の方法を比較する段階に来ています。
また、取引先の派遣会社の財務状況を確認し、倒産リスクに備えることも必要です。派遣会社が倒産すると、派遣社員の給与支払いや契約の引き継ぎに混乱が生じるため、信頼できる会社を選ぶことが重要です。
人手不足と派遣会社の倒産は矛盾しません。派遣会社は仲介と給与支払いで利益を得るため、登録者と企業需要の両方が減ると苦しくなります。働く側も使う側も、仕組みを知った上で選択肢を持ち、無理に一つの働き方や利用方法に固執しないことが、これからの時代に合った備えになります。