大切な親を預ける介護施設。そこで本当に何が起きているのか、考えたことはありますか?多くの施設が誠実なケアを提供する一方で、一部で入居高齢者が「金儲けの道具」として扱われる実態が浮上しています。施設売却時に入居者1人あたり100万〜150万円が「営業権」として上乗せされる仕組み、骨折しても入院させず家族に連絡しない判断、疥癬(かいせん)蔓延を隠蔽する衛生管理の実態——。65歳の筆者が友人の体験から知った衝撃の現実と、私たちが今からできる「施設選びの眼」をお伝えします。
「紹介」の裏に潜むブローカー構造
友人・静香さんの母・春江さん(84歳)が入所した「青空園」。きっかけは知人の木村さんからの「施設長に口をきいて紹介する」という親切な申し出でした。しかし後から業界関係者の証言で判明したのは、特定施設へ入居させる見返りに多額の紹介料を受け取るブローカー的存在が実在することです。
もちろん民間紹介センターすべてが違法ではありません。しかし介護保険制度下で、ケアマネジャーや関係者が不当に特定事業者へ誘導し裏金を受け取る行為は厳しく禁じられています。巧妙に「営業目的で金品を供与し紹介する」手口が裏で行われている可能性を見逃せません。
施設M&A市場で「人間が値段になる」計算式
さらに深刻なのが、介護施設そのものを売買するM&A市場の存在です。内部関係者によると、売却時に「現在入所している高齢者1人につき100万〜150万円」を営業権・権利金として売却価格に上乗せする慣行があるといいます。
- 入居者30人 × 100万円 = 3,000万円
- 入居者30人 × 150万円 = 4,500万円
契約書上は「人間そのものを売買する」とは書かず、「将来的な収益力に対する権利金」という名目にします。民間事業譲渡において稼働率・入居者数をベースに企業価値を算定すること自体は現行法違反と断定しにくいグレーゾーンですが、戦後日本を支えてきた高齢者の人数が「施設の値段を決める基準」になっている現実に、強い違和感を覚えずにはいられません。
骨折しても入院させない——売却直前の不可解な判断
春江さんが入浴中に転倒し、大腿骨頸部骨折で救急搬送された際、医師は「即入院・手術が必要」と判断しました。しかし施設側は春江さんを病院に入院させず、そのまま施設へ連れ戻しました。家族への連絡は丸1日後。施設長は「家族と電話で相談し、入院を望まないと言われた」と説明しましたが、静香さんは「一切連絡を受けていない」と証言します。
後に判明した事実:青空園は別運営会社への売却を目前に控えていました。もし春江さんが長期入院すれば「空床」扱いとなり稼働率が下がり、売却価格が100万円以上目減りする可能性があります。決定的証拠はありませんが、重大事故時になぜ即座に家族へ連絡せず、医師が必要と判断した入院を拒んだのか——強い疑問が残ります。
隠蔽された疥癬蔓延と衛生管理の崩壊
元職員・田辺さんの証言でさらに深刻な実態が明らかになりました。施設内で複数の入居者が疥癬(ダニによる感染症)に感染し、夜間に激しい痒みで泣き叫ぶ状態だったにもかかわらず、施設長は「評判が落ちる、経費がかかる」として家族への報告・皮膚科専門医の受診・シーツ熱消毒などの感染対策を行わなかったといいます。市販の痒み止めを塗るだけで済ませ、高齢者の尊厳と健康が守られていませんでした。
今日からできる「施設選びの眼」——小さな一歩から
すべての施設がこうした実態ではありません。誠実に運営される施設も数多く存在します。しかし「一部の施設で起きていること」が決して軽視できないレベルである以上、私たちは自分や家族のために「見抜く力」を持つ必要があります。
今日から試せる一つのアクション: 施設見学時に「直近1年間の入院実績と家族連絡のルール」「感染症発生時の対応マニュアル」「運営法人の財務状況・M&Aの予定有無」を直接質問してみてください。即答できない、曖昧にする施設は要注意です。契約前の「静かな余白」で冷静に確認することが、大切な人の尊厳を守るブレない余裕につながります。
次回は、ケアマネジャーとの上手な付き合い方や、在宅介護と施設介護の費用比較シミュレーションについてお届けする予定です。あなたの「備え」が、誰かの安心に変わるよう、共に学んでいきましょう。