忙しくても満たされないのはなぜ?ソローに学ぶ、自分基準の成功の見直し方
暮らしの見直し

忙しくても満たされないのはなぜ?ソローに学ぶ、自分基準の成功の見直し方

読了目安:約4分
文字サイズ

予定を詰め込むほど、一日の終わりに「何をしていたんだろう」と感じることがある。これは決して努力が足りないからではなく、成功の基準が外側に置かれているために起こる感覚かもしれない。19世紀アメリカの作家ヘンリー・デイヴィッド・ソローは、社会が決めた成功を追い続けることの違和感に向き合い、自分で選んだ簡素な暮らしの中に価値を見いだした。ここでは、ソローの問いかけを手がかりに、日々の小さな行動で「自分にとっての成功」を点検する方法を紹介する。

世間の成功と自分の成功は別物と考える

成功という言葉は、昇進や収入、人脈の広さ、実績の数といった外から見えるもので語られがちだ。しかし、こうした基準で競争に勝ち続けても、自分が望む暮らしから遠ざかっていくことがある。たとえば、周囲から評価される仕事を引き受けるほど、本当に大切にしたかった時間が削られていくという矛盾は、多くの人に起こりうる。

ソローの考え方を借りるなら、人生における成功は「自分がどう生きたいかを考え、そのように生きられているか」で決まる。静かで簡素な暮らしを選ぶ人も、忙しく活動して社会で役割を果たす人も、自らの意思でその生き方を求めているなら等しく成功しているといえる。大切なのは暮らしの華やかさではなく、意図を持って生きているかどうかだ。

ソローが選んだのは、森での簡素な暮らし

ソローはハーバード大学を卒業し、教師や家業に携わる道もありましたが、社会で成功とされる進路から一度離れることを選んだとされています。森の小屋で一人暮らしを始め、持ち物を最小限にし、自然に親しみながら執筆に集中したといいます。この時期の経験は代表作『ウォールデン 森の生活』にまとめられました。

彼が森へ入った理由として伝えられるのは、人生の本質的な事実だけに向き合い、死を迎えるときに「自分は生きていなかった」と気づくことを避けたかったからというものです。ここで注目したいのは、森での暮らしそのものを真似ることではありません。自分が何を大切にしたいのかを自分自身で決めようとした姿勢です。

今日からできる小さな見直し

生活を大きく変える必要はない。まずは「自分が望むことに時間を使えているか」を、小さな行動で確かめるのが現実的です。以下に、負担の少ない順で試せる方法を挙げます。

  • 夜に時間の使い方を3つに分けて振り返る。「自分が望んだこと」「他人の期待に応えたこと」「どちらでもないこと」に分類し、それぞれにどれくらい時間を使ったかを見る。書き出すのは数分で十分です。
  • 繰り返している予定をひとつだけ問い直す。「なぜこれをやっているのか」を考え、自分の望みではなく評価や習慣から続けている場合は、頻度を減らせないか検討する。
  • 減らす前に、代わりに増やしたいことを決める。予定を手放すと空白が不安になることがあるため、静かに過ごす時間や大切な人との会話など、自分が納得できる過ごし方を先に決めておく。

ただし、経済的な制約や心身の健康、果たすべき責任がある場合、望む暮らしにすぐ変えるのは難しい。無理に予定を減らすのではなく、変えられる範囲でひとつだけ試すことが大切です。また、活動的で賑やかな生活を本当に好む人は、静かな暮らしに変える必要はありません。

時間の書き出しが難しい場合の代案

時間を分類するのが負担に感じるときは、夜に「今日、自分の意思で選んだこと」をひとつだけ思い出す方法でも構いません。選んだ感覚を意識するだけでも、次に予定を入れるときの判断が少し変わりやすくなります。

「試合に負けて勝負に勝つ」という考え方

周囲の競争に負けたように見えても、自分が望む人生のゴールに向かって進んでいるなら、その人にとっては成功といえる。ソローの言葉を借りるなら、試合に負けて勝負に勝つ状態です。反対に、外から見て勝ち続けていても、自分の望む暮らしを手放しているなら、本質の勝負では負けているかもしれない。

だからといって、すべての競争や評価を無視すべきというわけではない。時間は限られているため、何に使うかを意識せずに人や物事に差し出してしまうことのほうが問題だ。お金や持ち物は誰かに勝手に渡さないのに、時間については深く考えない理由で何年も使ってしまうことがある。まずは、自分の時間を何のために使っているのかを一度立ち止まって見るのが、成功の基準を内側に戻すきっかけになる。

まとめ

成功した人生とは、重要な会議や活発な交流、多くの財産で満たされた人生だけを指すわけではない。同時に、最小限の暮らしや自由な時間を増やせば自動的に成功するわけでもない。自分がどう生きたいかを意識し、自分に偽りなく判断しながら生き方を調整し続けることが、ソローの問いかけの中心にある。

すべてを変える必要はない。今日の予定のうちひとつについて「これは自分が望むことか」と問いかけてみる。その小さな点検が、外側の成功の基準から自分基準の暮らしへ戻る手がかりになる。

シェアする

気になる記事から、別の視点も見つけてみませんか。

飲食店で「ごちそうさま」と言える人が自然にしていること|その一言が店に残す小さな力
食習慣

飲食店で「ごちそうさま」と言える人が自然にしていること|その一言が店に残す小さな力

外食のあとに「ごちそうさま」と言うかどうか。お金を払っているのだから言わなくてもいい、と思う人もいれば、言いたいのに照れてしまって会計だけ済ませる人もいます。この一言には、礼儀を超えた小さな力があります。今回は、飲食店で「ごちそうさま」と言える人に見られる特徴と、言われた側に何が残るのかを手がかりに...

記事を読む
「約束の10分前」にある安心感:早く着く人が守りたいのは時間ではなく「心の余白」だった
時間管理・ライフスタイル

「約束の10分前」にある安心感:早く着く人が守りたいのは時間ではなく「心の余白」だった

待ち合わせ場所で、相手よりずっと早く到着してしまう――そんな経験はありませんか。「少し遅れても大丈夫」「ちょうどでいいじゃない」と周りに言われても、なぜか胸がそわそわして、つい早めに家を出てしまう。実はその行動の裏には、単なる几帳面さや真面目さでは片付けられない、その人なりの「心を守る理由」があるのか...

記事を読む
管理しすぎる毎日を手放す。老子と荘子に学ぶ「自然な流れに乗る」小さな習慣
暮らしの考え方

管理しすぎる毎日を手放す。老子と荘子に学ぶ「自然な流れに乗る」小さな習慣

予定を細かく立て、目標を決め、時間を無駄なく使おうとするほど、うまくいかない部分が目につくことがあります。仕事の進み方、人間関係、自分の将来まで、あらゆるものを思い通りに動かそうと力を入れ続けると、かえって疲れや反発が生まれます。古代中国の老子や荘子の思想には、手を緩めることで物事が自然に進むと考え...

記事を読む
本物の優しさがわかる5つの言葉——無理に笑わなくていい関係を見直す
人間関係

本物の優しさがわかる5つの言葉——無理に笑わなくていい関係を見直す

身近な人の優しさを、つい「当たり前」として見落としてしまうことはないでしょうか。本物の優しさは、言葉の数や励ましの強さではなく、相手の感情や選択を奪わない態度に現れます。ここでは、日常の会話で見分けやすい5つの言葉を手がかりに、自分にとって安心できる関係を見直す考え方をまとめます。 優しい言葉と、本当...

記事を読む

気になるテーマを、次も。

フォローしたテーマの新着記事をホームに表示します。登録は不要です。