耐えられる時間を自分で買う3つの準備
不確実さに耐えられる時間は、精神力だけで決まるわけではありません。生活の余裕や環境によって、同じ不確実さでも重さが変わります。次の3つを先に決めておくと、そのときの感情だけで挑戦全体を裁かずに済みます。
1. 生活を守る土台を残す
来月の生活費が必要な人と、安定した収入を保ちながら挑戦できる人では、同じ結果待ちでも負担が違います。本業や貯蓄があり、失敗しても生活全体が崩れない人は、判定を長く待ちやすくなります。本業を残しながら始めることや、失って良い金額を決めておくことは覚悟の不足ではありません。不確実性に耐えられる時間を自分で買っているのです。
2. 試す範囲と振り返りの時期を先に決める
一定期間は何を試すのか、どの時点でまとめて結果を見るのか、どこまでの損失なら受け入れられるのかを先に決めます。たとえば「3か月はこの方法で続け、月末に反応をまとめて見直す」「投入するのは月にこの金額まで」といった範囲です。範囲を決めておけば、1本の動画が伸びなかっただけで企画の失敗ではなく人生の失敗のように感じる、という事態を避けやすくなります。
3. 「成功か失敗か」を保留したまま次に確かめることを決める
未来の成功を信じ込む必要はありません。成功するかどうかは保留したまま、次に確かめることを決めます。結果が出ていないのは、材料が足りないだけかもしれませんし、方法が合っていない可能性もあります。本当に見込みがないことだってあります。未確定とは、そのすべてが残っている状態です。悲観的な結論のほうが楽だからといって、まだ材料が足りないうちに答えを作らないことが、判定待ちの時間を伸ばす基本になります。
長い不確実性を通過した例から分かること
デザインツールを提供するCanvaの共同創業者たちは、資金調達の過程で100回を超える拒絶を受けたと振り返っています。投資家からは、拠点の距離や技術チームへの不安、サービス未公開などを理由に断られました。本人たちは、20回目や60回目の時点で、その先に世界的な企業があるとは分からなかったはずです。
mRNAワクチンの基盤技術を切り開いたカタリン・カリコは、研究費の獲得に苦しみ、大学で降格も経験しました。1989年に研究を始めてから重要な発見まで16年あり、その先の実用化までさらに長い時間があります。当時の本人に、自分の研究がいつどこで必要になるかの保証はありませんでした。
これらの例が示すのは、諦めなければ必ず成功するという教訓ではありません。100回断られても、それが最終回答なのか途中の反応なのかは分かりません。101回目が正解だという保証もありません。ただ、大きな成果の中には、長い不確実性を通過しなければ能力やアイデアの価値を確認できないものがあります。途中で降りれば、その先が成功だったのか失敗だったのかは永遠に分からないままになります。
降りるときに確認したいこと
撤退そのものを悪いことにする必要はありません。生活が崩れる、心身に負担がかかりすぎる、支援が必要な状態なら、離れることは現実的な選択です。不確実性に耐えることが常に正しいわけではありません。
ただ、一度だけ確認したいのは、その結論が新しい事実が増えたから出したのか、それとも何でもいいから答えを確定させたくなったのかという点です。外から見ればどちらも同じ「諦める」に見えますが、本人の中では違います。やめた瞬間に安心したとしても、それだけで正しい判断だったとは限りません。
結果が出ていないことと、失敗が確定したことは同じではありません。まだ材料が足りないだけかもしれません。次に確かめることを決め、判定待ちの時間を少しずつ伸ばせば、以前なら入れなかったゲームにも参加できるようになります。