「いつか形にしよう」と思っている企画や作品が、気づけば資料だけ増えて何年も経っている。努力が足りないわけではなく、むしろ真面目に準備を続けるほど「もう少し」が終わらない。この記事では、先延ばしに区切りをつけるために、目に見えないライバルを「締め切り」として借りる方法を紹介する。
なぜ「もう少し」は終わらないのか
19世紀の博物学者ダーウィンは、自然選択の考えを長年温め、証拠も原稿もあったが、まだ十分な形で世に出していなかった。調べれば新しい事実が出て、書き直せば正確になり、反論を思いつけば答えたくなる。準備を続ける理由はいくらでも見つかる。これは研究に限らず、作品づくりや新しい仕事でも同じだ。資料が足りない、技術を身につけたい、半年後の自分のほうがいいものを作れる。どれも間違いではないが、自分一人で判断している限り「もう少し」はいつまでも続く。
ライバルが変えるのは努力の量ではなく向き
1858年、ダーウィンのもとに若い博物学者ウォレスから論文が届いた。そこにはダーウィンが長年考えてきた自然選択に近い内容が書かれていた。ダーウィンは怠けていたわけではなく、ずっと研究を続けていた。だが、自分以外にも同じ問題を考え、発表できるところまで進んでいる人がいると分かった瞬間、考えるべき問題が変わった。より完全な本を作ることだけでなく、今あるものをどう世に出すかを決めなければならなくなった。
ライバルは努力量を増やすというより、努力の向きを「さらに集める・考える」から「一度まとめる・外へ出す」へ変える。心理学の研究でも、ライバルと見なす相手が同じレースにいると記録が伸びる傾向が報告されている。ただし、相手が自分と少し似ていて、同じ時期に始めた人であるほど物差しになりやすい。