知識を「使える形」で残す小さな習慣
複数の分野にわたる知識は、広さ、深さ、統合という3つの側面で整理されることがあります。統合とは、異なる知識や考え方を関連付けて組み合わせることです。興味のある分野を増やすだけでなく、関連付ける練習が応用につながります。
本を読み終えたら、あらすじだけでなく「なぜその方法でうまくいったのか」を短く書いてみます。たとえば将軍の話なら「途中で分散させ、目的の場所で集中させる」という仕組みです。
- 読み終えた本の余白やメモに、うまくいった理由を1〜2行書く
- 以前の仕事や趣味で似た経験を思い出したら、どこが似ているかを書く
- 今の仕事の問題に使えそうなら、試したいことを添える
長い感想文でなくて構いません。後で読み返した自分が、なぜその2つを結びつけたかを思い出せれば十分です。
比べる対象は「今の仕事」に限らない
接客経験がある人が社内向けの説明資料を作る場合を考えてみます。接客では、説明を受けている人がどこで困っているかを確かめてきた経験があるかもしれません。その経験は、資料の情報整理にも活かせます。以前の仕事や長く続けた趣味も、比較の対象に含めてみる価値があります。
比較して学ぶと応用しやすくなる
2003年に行われた実験では、2つの事例を別々に読むより、共通点を比べながら読んだ人の方が、新しい課題に考え方を使いやすかったという結果があります。読んだ事例は同じでも、共通点を考えたかどうかで差が出ました。
普段の読書では、1冊ずつ要約する代わりに、以前の本や自分の経験と比べる時間を加えてみます。似ている理由を「同じような事情で困っていたのか」「解決方法が似ているのか」まで考えると、応用の手がかりが増えます。
ただし、毎回役に立つかを考えながら学ぶのは疲れます。面白そうだから読む時間も残しておきましょう。何に使うかは後から考えればいいのです。
つながりに気づいたあとの確認
別の分野の方法を持ち込むときは、似ている部分だけでなく違う部分も見ます。入力ミスの例では、デザインの視点で画面を直す前に、作業している人に話を聞くと、入力欄の意味は分かっているが情報が届いていなかった、判断基準が決まっていなかった、といった別の原因が見つかるかもしれません。
想像だけで動かず、実際の作業を見たり本人の話を聞いたりして確かめます。数学を電気回路に応用したクロード・シャノンも、自分の理論が他分野で使われることについて、用語を置き換えるだけでは済まない、仮説を立て実験で確かめる必要があると注意を促したとされます。
つながりを見つけた後も、目の前の事情に合わせて考え直す余地が残ります。似ていると思ったら、違っている部分によって同じ方法が使えなくなることはないかを確認しましょう。
無理なく続けるための加減
- 自分がよく知っている問題を出発点にする。別の分野ではどう考えるかを調べる
- 理解が及ばない部分は、その分野に詳しい人に聞く。似ていると思って相談したら、決定的に違う条件を指摘されることもある
- すべてを1人で身につけようとせず、他の人の専門も借りる
- 面白そうだから読む時間も残す。役に立つかは後から考えればいい
異なる分野の知識は、身近な問題の見方を変える手がかりになります。ただし、知識を仕組みとして残し、既存の経験と比べ、実際に確かめるという小さな習慣があると、つながりを行動に移しやすくなります。まずは読み終えた本に「うまくいった理由」を1行書くところから始めてみるのが現実的です。