結論の前の場面に戻る質問
「継続が大切です」と言われたら、その言葉をそのまま教訓として受け取る前に、結論が出る前の出来事に戻ってもらいます。
- 一番迷った時期の話を聞かせてもらえますか?
- 当時、何がうまくいっていなかったのですか?
- その時点では、どんな選択肢が残っていましたか?
- まだ分かっていなかったことは何ですか?
成功した後で「継続が全て」と整理された結論ではなく、まだ答えが出ていなかった場面をたどると、相手が何を見て判断を変えたのかが見えやすくなります。専門家の知識を調べる聞き取り方法の一つに「クリティカル・ディシジョン・メソッド」があります。重要な出来事を振り返り、判断の場面に何度か戻って、何に気づきどう考えたかを掘り下げる方法です。1993年に発表された研究では、新生児の集中治療に携わる熟練看護師への聞き取りで、この方法を使うと使わない場合より多くの情報が得られたと報告されています。日常の会話でも、同じように「結論の前」へ戻る質問は使えます。
比較で「何を見分けているか」を確かめる
一つの出来事を詳しく聞いても、相手が本当に気にしていた点と、たまたま同時に起きたことを区別できないことがあります。そんなときは、二つの場面を比べてもらうと判断の手がかりが浮かびます。
消防指揮官の話では、暑さそのものより「予想していた暑さとの違い」が重要でした。静かだったことも、普段の火災の音を知っている人だからこそ違和感になりました。営業の経験を聞くなら、成約した案件と失注した案件を一つずつ上げてもらい、最初のやり取りで何が違っていたかを尋ねます。過去の自分と今の自分を比べる方法もあります。「昔なら引き受けていたけれど、今なら断る仕事はありますか?」と聞けば、経験を積んで何を警戒するようになったかが話題になります。
ただし、二つの案件の違いがそのまま成功と失敗の原因だと決まるわけではありません。ここで探しているのは、相手が何を区別しているかです。忙しいだけの相手と関心がない相手、慣れていないだけの失敗とやり方そのものを変えるべき失敗。経験から何を学んだかは、その人が何を見分けるようになったかに現れることがあります。
思い出す範囲を絞る
「何か印象的な失敗はありますか?」と広く聞いても、すぐに答えられないことがあります。経験が少ないのではなく、人生全体から探すには範囲が広すぎるのです。記憶の実験では、思い出すときにカテゴリー名を示すと、示さない場合より多くの単語を思い出せたという結果もあります。会話でも、相手が話した出来事から時期や場所を絞ると答えやすくなります。
たとえば最初のお店の話が出たら、「開店したばかりの頃、最初に困ったのは何でしたか?」と戻ります。そこから誰に相談したか、何を試したかを聞いていくと、人生全体から面白い話を探してもらうより具体的な答えが返ってきます。ただし、記憶へ戻る手伝いと、こちらが物語を作ることは違います。「周囲に反対されて悔しかったんですよね」と感情を先に言うと、質問の中に答えを入れてしまうことになります。「その時、何を考えていましたか?」と相手の言葉を待ち、今振り返ってそう思うのか、当時からそう考えていたのかを分けて聞くほうが、聞き手の予想と違う答えも出てきます。
準備した質問より、今の答えに興味を持つ
ここまでの質問をメモして持ち込んでも、それだけでいい対話になるわけではありません。相手の答えを聞きながら、次に聞くことを変えられるかが大きな分かれ目です。仕事の話をしていた相手が「実はあの頃、一度本気でやめようと思っていたんです」と言ったとします。用意した質問には現在の仕事や今後の目標が並んでいても、そのまま次へ進まず、「そう考えるようになったのは何があったからですか?」と聞く。ここから仕事の見方を変えた出来事が出てくるかもしれません。
準備した質問は、会う前の自分が知りたかったことです。追加の質問は、相手の答えを聞いた今、知りたくなったことです。準備を頑張ったときほど質問の順番を守りたくなりますが、相手が話している間に次の質問の順番を考え始めると、答えを聞く時間が待ち時間になってしまいます。アメリカの対談番組で長年聞き手を務めたテリー・グロスは、前夜に調査を仕上げて収録に備えると話しています。準備をしないわけではなく、準備をした上で、自分の質問より相手の今の答えに興味を持てるかが問われます。
合わないときの代案
過去の場面に戻る聞き方は、相手が具体的に話すのが苦手な場合や、当時の記憶が曖昧な場合には負担になることがあります。無理に掘り下げず、「最近、迷ったときにまず確認することは何ですか?」と現在の判断に切り替えるのも一つの方法です。比較や過去の出来事が合わない人もいるので、相手の反応を見ながら質問の形を変えます。聞き手の予想と違う答えが返ってきたときは、聞く前には知らなかった情報が得られたと考えて、そこから次の質問を組み立てると会話が続きやすくなります。
経験者から学ぶとは、立派な結論を受け取ることではなく、その人が判断を変えた場面を一緒にたどることです。最初の一言で終わらせず、具体的な出来事と比較を頼りに、相手の中に残っている基準を言葉にする手伝いをしてみてください。