見過ごされやすい体のサイン
ここからは、大腸がんで見られることがあるサインを整理します。繰り返しますが、これらは大腸がんだけに現れるものではありません。ひとつだけで判断できるものでもありません。気になる状態が続くときは、自己判断より検査が確実です。
便の変化
- 便に赤い血が混じる、便器が赤く染まる。痔と勘違いされやすい代表的なサインです。
- 黒くタール状の便が出る。肛門から遠い場所からの出血で見られることがあります。
- 便が細い。鉛筆のように細い状態が続く場合、腸の内側が狭くなっている可能性が考えられます。
- 便秘と下痢を繰り返す。数日出ない日が続いたあと、突然ゆるくなる、といった波が続きます。
- 出してもすっきりしない感じが残る(残便感)。
全身に出る変化
- 食べているのに体重が減る。たとえば6か月で体重の5%以上、60kgの人なら3kg以上が説明なく減った場合は、一度相談する価値があります。
- 貧血、立ちくらみ、息切れ、動悸。階段を上っただけで息が上がる、集中力が続かないといった形で現れることもあります。
- 顔色が悪いと言われる。周囲の指摘は、自分では気づきにくい変化を教えてくれます。
お腹の違和感
- お腹の張り、ガスがたまったような重さ。食後に悪化しやすい。
- 左下腹部の痛み。波打つように強くなったり弱くなったりする。
- お腹を触ると硬いしこりがある。痛みがないことも多く、筋肉や便の塊と勘違いされやすい部分です。
これらは単独で出ることもありますが、いくつか重なると、見過ごせない状態である可能性が上がります。逆に、ひとつも当てはまらないから安心、と言い切れるものでもありません。判断を検査に委ねるのが、いちばん確実な方法です。
「痔だろう」と自己判断するのが危険な理由
血便があると、多くの人がまず痔を疑います。痔はとても一般的な病気ですから、その推測自体は自然なものです。問題は、痔と大腸がんが同時に起きていることがある点です。痔があるからといって、別の出血源がないとは言えません。
また、痛みの有無も判断材料にはなりません。進行した状態でも痛みがほとんどないことは珍しくありません。症状の組み合わせから確率を推し量ることはできても、確定させることはできない。それが体の不調の厄介なところです。
受診をためらうときに、視点を変える
検査を受けることは「病気だと決めつけること」ではありません。選択肢を増やす作業です。早期に見つかれば選べる治療の幅は広がりますし、異常がなければ安心して日常に戻れます。どちらの結果でも、今より情報が増えることに変わりはありません。
検査の結果を「経過観察」と言われ、どうしても納得できないこともあります。そのときに検討できるのがセカンドオピニオン、つまり別の医療機関の医師に意見を求めることです。失礼にあたるのではと心配する必要はありません。治療方針を決める前に他の見方を知ることは、珍しいことではありません。
ただし、誰もが同じ経過をたどるわけではありません。症状があっても問題が見つからないこともありますし、逆に症状が軽くても早期発見につながることもあります。個人差が大きい領域です。
日常でできる予防の目安
食事の見直しは、体の負担を減らす意味で役立つとされています。目安として挙げられることが多いのは、食物繊維を1日25g以上、野菜350gと果物200g、玄米などを組み合わせてようやく届く量です。加工肉や赤身肉の摂りすぎには注意が促されることもあります。国際的な機関が加工肉の発がん性を評価している、という報告も知られています。
とはいえ、これらは「食べてはいけない」という話ではありません。魚や鶏肉、大豆製品を増やしてバランスを取る、という方向のほうが続けやすいでしょう。何より、症状が続いているときの代わりにはなりません。生活の見直しと受診は、別々に考える必要があります。
健康診断を後回しにしがちな人ほど、一年に一度の予定として先に組み込んでおくのがおすすめです。忙しさはこれからも続きますから、意志に頼らない仕組みのほうが現実的です。
体のサインに気づくことと、不安に飲まれることは違う
サインを確認することは、自分を責めることではありません。「もっと早く来ればよかった」と過去を悔やむ時間は、これからの判断には使いにくいものです。大切なのは、今日どうするかです。
たとえば、「気になる症状が2週間続いたら受診する」と先に決めておく。便の変化、体重の減少、お腹の張りなど、気にかかる項目をメモしておく。そうしておけば、その日の気分や忙しさに判断を委ねずに済みます。体は、私たちが思っているより頻繁に、静かに知らせを出しています。それを読むかどうかを、気合いではなく仕組みに預けておく。それが、いちばん穏やかな構え方ではないでしょうか。
なお、この記事は診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関に相談してください。