「何ができるか」より「何を任せられるか」に翻訳する
「文章が書けます」と説明しても、相手は何を頼めばいいのかまだ考えなければなりません。間違いではありませんが、判断材料としては不十分です。これを「商品の特徴を初めて読む人にも伝わる紹介文にできます。短い見本もあります」まで言えれば、商品ページを任せられるかもしれない、という具体的な相談になります。
「責任感があります」「努力家です」という言葉だけでは、その人がどんな仕事をしてくれるのか想像しにくいものです。何を引き受け、どう進められるのかが分かれば、相手は自分の困り事と結びつけて考えられます。自分を高く評価してくださいと求める前に、何に役立てる人なのかを知ってもらう。これが自己PRの基本です。
実績がないときは、小さな見本と準備を見せる
「まだ実績がないから、もう少し結果を出してから伝えよう」と考えると、最初の実績を作る仕事をどう任せてもらうのか、という問題が残ります。経験がある人に任せたいという相手の気持ちも分かります。だからこそ、経験が少ない側は、他に見せられるものを用意したいところです。
たとえば、社内説明会で使う資料を初めて担当したいとします。一式を作った経験はなくても、過去の資料を1枚だけ作り直して見てもらうことはできます。どこが分かりにくいと考えたのか、どう直したのか、残りはどのように進めたいのか。そこまで見せれば、相手はまず短い部分だけ任せてみようかと検討できます。いきなり全部を任せてもらおうとするより、判断しやすいはずです。
過去の経験を今回の仕事へ結びつけて説明する方法もあります。説明会の資料を作った経験はなくても、問い合わせへの回答を整理して、初めて読む人向けの手順書を作ったことがあるかもしれません。そのとき何が伝わりにくかったのか、どう直したのか。今回にも使えそうな部分があれば、相手に指摘してもらうのを待たず、自分で結びつけて説明します。小さな見本だけで全ての能力が分かるわけではありませんが、何も見せずに「頑張ります」と言うより、考え方や取り組み方を確かめてもらえます。
伝える順番は、経歴の古い順ではなく相手の疑問の順
自分について説明しようとすると、経歴を古い順に話したくなります。何を学び、どんな経験をして今の考えに至ったのか。本人にとっては全部つながっています。しかし、相手はまだその話を聞く理由を持っていません。今回の相談にどう関係するのか分からないまま、説明だけが続いてしまいます。
資料作りの例なら、最初に知りたいのは「なぜ自分が文章を書くようになったか」ではないでしょう。今の資料をどう改善できそうなのか、どこまで担当できるのか。そこに興味を持ってもらえたら、経験や仕事の進め方を説明すればいいのです。経歴を捨てる必要はありません。相手が必要とする順番へ並べ替えるだけです。
説明する相手によっても、必要な話は変わります。一緒に資料を作る同僚なら、どの部分を分担するのか、いつまでに受け取れるのかを知りたいかもしれません。実施を決める上司なら、作り直すだけの効果があるのか、その間に他の仕事が止まらないかが気になるでしょう。同じ計画について話していても、判断しようとしていることが違います。用意した説明を全員へそのまま話すより、相手の疑問に答える順番で伝える方が、判断を助けます。
弱気な前置きをやめて、不確かさは具体的に伝える
ある起業家のチームの例では、ライターが提案を持ちかける際、「うまくいかないだろう」という趣旨の前置きから話し始めてしまったそうです。理由を尋ねると、相手からの尊敬を失いたくなかったから。相手によく思われたかったため、自分の提案への期待を先に下げたのです。
「無理だとは思いますが」「大した案ではないのですが」と前置きしておけば、断られたときも最初から分かっていたという顔ができます。本人にとっては身を守るための慎重さかもしれません。しかし、聞いている側からすると、提案を持ってきた本人が実現すると思っていない、価値があるとも言いきれない。それならなぜ自分が前向きに検討しなければならないのか。自分を守るための言葉が、相手にとっては断る理由になりかねません。
もちろん、できないことまで言いきればいいわけではありません。実際の仕事で考えたいのは、検討してもらう前に自分で提案を潰さないことです。まだ結果が出ていなくても、その提案に可能性を感じている理由は話せます。実現するためにどこまで準備したかも説明できます。結果を保証できないことと、提案する価値がないことは同じではありません。
不確実な部分があるなら、そこを具体的に伝えればいいのです。「効果が出るかはまだ分かりません。ただ今の手順ではここに時間がかかっているので、まず1週間だけ試したいです」と言えば、分かっていないことを隠さずに試す理由を示せます。相手はどのくらい手間がかかるのか、何を見れば効果を判断できるのかを質問できます。提案が話し合える形になります。
相手が難しい顔をしても、すぐに話を引っ込めなくていいのです。予算が問題なのか、時期が合わないのか、内容に疑問があるのか聞いてみなければ分かりません。話し合った結果、規模を小さくすることも、別の方法を試すこともできます。弱気な前置きで終わらせてしまえば、そこまで進めません。謙虚でありたいなら、相手の意見をきちんと聞けばいい。自分の考えを最初から小さく扱うことまで謙虚さに含めなくていいのです。
仕事の外でも、少し具体的に話すと接点が生まれる
新しく知り合った人と何を話せばいいか分からない。相手のことを知りたい気持ちはあるが、質問ばかりするのも気が引ける。そんなとき、自分について少し具体的に話すだけで、会話の続け方が見つかることがあります。「最近散歩しながら写真を撮るのが好きで」と伝えれば、相手は「どこを歩くの?」と聞けます。自分も写真を撮るなら、その話を返せます。特別な趣味や珍しい経験を用意する必要はありません。何に興味を持っているのかが少し分かるだけで、相手は自分との接点を探せます。
ところが、作品を見せるとなると急に基準が上がることがあります。「もう少しうまくなってから」「人に見せても恥ずかしくないものができてから」。そう考えているうちに、作っていること自体を誰も知らない状態が続きます。一人で楽しむ創作にも意味はあります。ただ、感想を聞きたい、同じことをしている人と知り合いたいと思っているなら、どこかで見せる場面を作りたいものです。大勢へ公開しなくても、信頼できる一人に見せるだけでも、次に話す材料が変わります。
自己PRを自分の長所をうまく話すことだと考えると、つい話し方ばかり気にしてしまいます。その前に考えたいのは、相手が何を決めようとしているのかです。それが分かれば、詳しく説明すべきところも、短く済ませてよいところも見えてきます。実績が少ない段階では、実績が多い人と同じ説明をする必要はありません。準備したことや小さく試した結果を見せて、まず任せられる範囲を探す。最初の実績は、その小さな仕事から作っていけばいいのです。