夜遅く、待っても返事が来ない。スマホを手に取っては置き、また画面を開いてしまう。浮気を疑う自分が嫌になる。そういう夜は、相手の性格を探るより先に、自分が何を恐れているのかが見えにくくなっている。
浮気する人とはどういう人なのか。不誠実な一部の人だけがすることだと思えば、少し安心できる。しかし、研究が見ているのは性格だけではない。その人の過去、今の関係の満足度、そして周囲の環境だ。ここでは、浮気と結びつきやすい条件を、いくつかの研究結果とともに整理する。
過去の行動は、説明よりも雄弁
前の関係で浮気をした人は、次の関係でも同じ行動をとる割合が高い。2017年に報告された追跡研究では、400人余りを対象に二つの関係を追い、前の関係で浮気を経験した人は次の関係でも浮気をする割合が約3倍だった。さらに、前の相手を疑っていた人は、次の相手も疑いやすいという結果も出ている。疑う気持ちまで持ち越される。
ただし、全員が繰り返すわけではない。ここで手がかりになるのは、その人が過去をどう語るかだ。状況のせいだけにして隠す人より、自分の選択として認めて話す人のほうが、その後の行動は安定しやすい。過去の話を聞くときは、事実の有無だけでなく、語り方に耳を傾ける価値がある。
外に目が向くのは、内側が痩せているとき
浮気はある日突然の事故のように見える。でも、研究では突然の出来事というより、前から条件が揃っていることが多いとされる。関係を続けるかどうかを説明する投資モデルでは、今の関係への満足度、他に良い相手がいそうか、これまでにどれだけ注いできたか、の三つが関係を続けたい気持ちと結びついていた。
とくに満足度は、大きな出来事より毎日の扱いで決まる。嬉しい報告への反応、呼びかけに顔を上げるかどうか。そうした小さなことが積み重なって、外からの関心が届いたときの揺れやすさを左右する。満足していない側が必ず浮気するわけではないが、確かめるなら、相手のスマホより「最近いちばん嬉しかったこと」を聞くほうが、内側の状態は見えやすい。
選べる状態が、関係を緩ませる
他に良い相手がいると感じている人ほど、今の関係への関わりが弱くなる。2010年に複数の研究をまとめた分析でも、代替相手がいると感じている人ほど関係が終わりやすかった。本人にその気がなくても、選べる場所にいること自体が条件になる。
だから、アプリを消す、連絡を整理するといった地味な行動には意味がある。気持ちだけで誠実さを保とうとするより、選択肢を手放す行動のほうが相手に伝わる。ただし、監視で環境を作ることはできない。選択肢を減らすのは本人にしか決められない。
機会と視線が作る、意思では説明できない揺れ
出張が多い、夜の付き合いが多い、連絡が取れない時間が長い。2000年のアメリカの調査では、他の相手と出会う機会が多い人ほど浮気が起きやすく、逆に二人で同じ友達の輪を持っている人ほど起きにくかった。共通の友人がいるだけで抑止力になるというのは、意思の強さだけでは説明できない。
視線の研究も同じ方向を示す。関係を大事にしている人ほど、魅力的な人から目を早く外す傾向があった。問題は何かを見てしまうことではなく、そこに注意をとどめ続けるかどうかだ。見ないことより、ちゃんと戻ってくることのほうが、日常の中では誠実さとして現れる。
性格より、他人への態度に現れるもの
性格が無関係ではない。ビッグファイブという五つの特性のうち、調和性と誠実性の低さが浮気と結びついていた研究がある。2004年に52の国で調べた報告でも同じ傾向が出ている。自分を優先し、人を操作し、他人の痛みに冷たい傾向が強い人ほど、短い関係を選びやすいという報告もある。
とはいえ、性格は材料の一つにすぎない。環境が揃わなければ行動にはならない。見るなら、自分への特別な態度より、店員への態度や友人との約束の守り方だ。そこに誠実性は現れやすい。ただし、性格だけで相手にラベルを貼るのは危うい。人は場面によって違う顔を見せる。
「決めていない関係」ほど、外からの誘いに弱い
愛と体の関係をどれくらい切り離して考えるかにも個人差がある。1991年の研究では、切り離して考える傾向が強い人ほど、同時期に複数の相手と関係を持ちやすかった。この傾向は関係が始まった後も大きく変わらないとされる。価値観は直すものではなく、合うかどうかを早めに確かめるものだ。
また、なんとなく続いている関係と、続けると決めた関係は違う。1989年の研究では、関係を続けると決めている人ほど、魅力的な他の相手を低く評価していた。決意そのものが、他の人を見る目を少し曇らせる働きを持つ。曖昧な関係ほど、外からの誘いを防ぐ理由を持てない。
浮気を防ぐのは、相手を監視することでも、性格を診断することでもない。研究が繰り返し示すのは、関係の内側と環境が、行動の起こりやすさを左右するということだ。疑い始めた夜は、相手のスマホより、二人の間に何が痩せているかに目を向けるほうが、少しだけ前を向ける。相手を裁くためではなく、自分がどんな関係を続けたいのかを決めるために。