遠出の翌朝、疲れが取れないのは体力のせいではない。脳を休める近場の自然の使い方

遠出の翌朝、疲れが取れないのは体力のせいではない。脳を休める近場の自然の使い方

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休みの日に遠出をして、翌朝なかなか起き上がれない。頭の奥がぼんやりして、せっかく出かけたのに帰ってから疲れている。この感覚を「体力が落ちた」「年のせいだ」と片づけてしまう前に、少し別の見方をしてみましょう。

心理学者スティーブン・カプランが提唱した注意回復理論では、人の注意には「意識して向ける注意」と「がんばらなくても自然に目が向く注意」の2種類があると考えます。運転や人混み、子どもの見守り、予定の管理は、意識して向ける注意を休みなく使います。この力は使い続けるとすり減り、ちょっとしたことでイライラしたり、物事を決めるのがおっくうになったりするのです。

遠出で疲れるのは、体が弱いからではなく、移動や段取りの間に注意の力を使い果たしてしまっているからかもしれません。回復のポイントは、遠くの絶景より、家の近くにある自然で短い時間を過ごすことです。

まず試したい3つの行動

  1. 家から歩いて行ける「休む場所」を1つ決める。川沿いの道、公園のベンチ、神社の境内などで構いません。
  2. そこでスマートフォンを閉じ、20分ほど過ごす。水の音や鳥の声、木の葉の揺れに耳と目を向けます。
  3. 翌朝、体がどう感じたかを手帳に1行だけ書く。遠出の翌朝の重さと比べてみる。

この3つは、遠出をした翌日ではなく、普段の休みの午前中や夕方など、移動の負担が少ない時間に試すのがおすすめです。近くに大きな自然がなくても、街路樹のある道や小さな緑地でもかまいません。まずは無理のない範囲で始められます。

予定を詰めすぎると、回復の効果は消えやすい

「せっかく来たのだから」と観光地をいくつも回ると、地図を見直したり時間を気にしたりする作業が増えます。これは意識して向ける注意をさらに使う行動です。

オランダで旅行前後の幸福感を調べた調査では、旅行に行く人は出発前から幸福感が高いものの、帰宅後は旅行に行かなかった人との差がほとんどなくなるという結果でした。ただし、旅行中に「のんびり過ごせた」と答えた人だけは、帰宅後も幸福感が高いままでした。休暇中の回復効果は、仕事に戻ると1週間ほどで元に戻るという報告もあります。予定を詰めるほど、せっかくの休みの効果は短くなってしまうのです。

海や絶景は「その場」では休まるが、移動が注意を消耗する

海辺や水辺は、多くの人にとって気分が良くなる場所です。イギリスで2万人以上を対象に行われた調査では、海辺にいるときの気分が街中よりはっきりと良いと報告されています。海岸の近くに住む人ほど健康感が高いという研究もあります。

ただし、これらの結果は「その場にいる瞬間」や「日常的にそばで暮らしている人」の話です。年に一度の遠出では、朝早く起きて長時間運転し、渋滞に並び、帰りも同じように移動する過程は含まれていません。美しい景色を眺める前に、注意の力が先にすり減ってしまうことがあります。

近くの自然で20分、週2時間を目安に

家の近くの自然でも、十分に注意を回復させる効果が期待できます。イギリスの研究チームが約2万人に自然の中で過ごした時間を尋ねた調査では、週に合計2時間以上自然の中で過ごした人は、まったく過ごさなかった人より自分の健康を良いと答える割合が高くなりました。2時間は一度にまとめても、数回に分けても効果はほとんど変わらないとされています。遠くの名所ではなく、家の近くの公園や緑地で過ごした人も多かったといいます。

また、緑のある場所でスマートフォンを使わずに座ったり歩いたりする研究では、1回20〜30分過ごしたときにストレスに関係するホルモンの下がり方が効率的だったと報告されています。日本の森林浴の研究でも、森の中では町中よりストレスが低く、脈もゆっくりになることが確認されています。

カプランは、川の流れや水面のきらめき、揺れる木の葉のように、がんばらなくても自然に目が向くものを「ソフト・ファシネーション」と呼びました。こうしたものに注意が向いている間、すり減った注意の力が少しずつ戻っていくと考えられています。

遠出をやめる必要はない。移動と翌日の扱いを変える

家族と出かける思い出まで手放す必要はありません。遠出をする場合は、移動の間にこまめに休むことが大切です。長い運転では2時間に1度は車を止めて体を伸ばし、帰宅した翌日には予定を入れないようにします。それだけでも疲れの残り方は変わります。

ただし、休んでも疲れが何週間も続く、眠れない日が続くといった場合は、心の問題だけと決めつけず、医療機関に相談してください。注意の消耗と体の不調は、分けて考える必要があります。

近所の景色は見慣れていてつまらないと感じるかもしれません。それでも、同じ場所に何度も通うと、季節ごとの小さな変化に気づくようになります。その変化に目を向けること自体が、注意の回復につながります。

疲れを年のせいにする前に、近くの自然で20分だけ過ごしてみてください。翌朝の体の感じを1行書くことで、自分にとって本当に休まる場所が見えてきます。

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