ご飯や和え物に、香ばしさを足したくてごまを振る。カルシウムや骨のことを考えて、毎日の習慣にしている人もいるでしょう。ただ、粒のままのごまは、硬い殻に包まれています。栄養を期待するなら、その粒が体に届いているかどうかが分かれ目です。
炒りごまのカルシウムは100gあたり1200mgと、牛乳の10倍以上です。でも、小さじ1杯では36mgほど。さらに、ごまを食べた人の排泄物を調べた研究では、殻が割れず粒のまま残る例が確認されています。つまり、すりつぶさないと、せっかくの栄養が通り過ぎてしまうことがあるのです。
基本は、炒りごまを買い置きして、食べる直前にすりつぶすこと。難しく考えず、すり鉢や小さなすり器を食卓に置いて、使う分だけすりつぶすのが近道です。忙しい日は、小袋のすりごまを冷蔵庫で1か月以内に使い切る方法でもかまいません。
粒のままではなぜ届きにくいのか
ごまの粒は、硬い殻に覆われています。よく噛まないと殻が割れず、中身が消化液に触れないまま出てしまうことがあります。噛む力が落ちてきた中高年ほど、粒のごまは割れにくくなります。ご飯と一緒だと、ほとんど噛まずに飲み込んでしまいがちです。
すりつぶすと殻が割れ、中の成分が消化液に触れやすくなります。栄養利用の研究でも、殻をすりつぶすと中の成分が消化液に触れやすくなるとされています。炒りごま小さじ1杯はおよそ3gで、粒にすると1000粒ほど。そのすべてを噛み砕くのは、現実的ではありません。
すりごまと炒りごまを5つの点で比べる
栄養の吸収
ここが一番の分かれ目です。すりごまは殻が割れている分、中身が体に届きやすい。粒のまま食べると、殻が割れない粒は中身が体に届きません。骨やカルシウムを意識して食べるなら、すりごま側に分があります。
香り
ごまの香ばしい香りは、すりつぶした瞬間に一番強く立ちます。時間が経つと香りの成分は空気に逃げていきます。すり立ての香りがあれば、しょうゆを小さじ半分減らしても満足しやすくなります。小さじ半分で食塩はおよそ0.4gの計算です。香りでは、すり立てに限ってすりごまが有利です。
保存のしやすさ
開けたすりごまの袋を、調味料の棚に何か月も置いていませんか。ごまの油には酸化しにくい成分が含まれていますが、すりつぶすと空気に触れる面が一気に広がります。ごまの油の変化を調べた研究でも、すりつぶすと酸化が早く進むとされています。殻に守られた炒りごまは、開封後も数か月は風味が持ちやすい。すりごまは開けたら1か月ほどで使い切るのが目安です。保存では炒りごまが有利です。
セサミン
セサミンはごまに含まれるゴマリグナンの1つで、ごま全体の1%ほどとされています。すりごまでも炒りごまでも、含まれるものは変わりません。体への働きについては、多くがサプリメントを使った小規模な試験です。セサミンに関しては、どちらにも軍配を上げられない引き分けです。ちなみに、黒ごまと白ごまの違いは主に皮の色で、黒い皮のポリフェノールは抗酸化の働きが研究で調べられています。
使いやすさ
すり鉢を出すのが面倒で、買ったごまを結局粒のまま使っていることもあるでしょう。袋のすりごまなら、開けてそのまま振るだけです。小さなすり器を使えば、食卓で必要な分だけすりつぶせます。市販のすりごまは50gほどの小袋が多く、開けてから1か月で使い切りやすい量です。使いやすさではすりごまが有利です。
この5つを並べると、すりごまが3つ、炒りごまが1つ、引き分けが1つ。ただ、すりごまの価値は「すり立て」に支えられています。一番の答えは、炒りごまで買い置きして、食べる直前にすりつぶすことです。
場面別の選び方と使い分け
- 骨や栄養のために食べる人:炒りごまを小さなすり器で、食べる直前にすりつぶします。忙しくて毎日すれない場合は、すりごまを小袋で買い、冷蔵庫で1か月以内に使い切ります。
- 香りを楽しみたい人:炒ってからすりつぶすと、さらに香りが立ちます。フライパンで30秒ほど温めるだけでも十分です。
- 家族で食べる場合:食卓にすり器を1台置いておくと、それぞれが自分の分だけすりつぶせます。
- 粒のまま振る場合:見た目と食感を楽しむ料理だけにしておきます。体のために食べる分は、必ずすりつぶしてからにしたいところです。
気をつけたい3つの習慣
1. 体のためのごまを粒のまま振りかける
ご飯に粒のごまをたっぷり振り、それで栄養を取ったつもりになっている人も多いです。よく噛めば割れる粒もありますが、ご飯と一緒だとほとんど噛まずに飲み込んでしまいます。指でひねって潰す「ひねりごま」でもいいです。小さじ1杯分を指先で潰すだけでも、香りがぐっと立ちます。すり鉢がなければ、チャック付き袋に入れて麺棒で押しつぶしてもかまいません。殻さえ割れていれば、道具は何でもいいのです。
2. 開けたすりごまを常温で何か月も置く
いつ開けたかわからないすりごまの袋を、コンロの近くの棚に置いたままにしていませんか。酸化したごまは匂いが変わり、苦みが出ます。古い油と同じで、体のためにもなりません。開けたらしっかり口を閉じ、冷蔵庫に入れて1か月ほどを目安に使い切りたいです。酸化を防ぐには、買う時から小さな袋を選び、使う分だけ出して口を閉じるのが一番です。
3. 体にいいからと山盛りにかけすぎる
ごまは小さじ1杯で18kcalほどですが、大さじ山盛りだと80kcalを超えます。クッキー2枚分に近い量です。1日の目安は決まっていませんが、小さじ2杯から大さじ1杯でも料理には十分です。ごまは脂質が半分以上あるため、体にいい油でも摂りすぎれば体重に響いてきます。量より、無理なく続けることを大事にしたいです。
ごまと合わせやすい食材
ほうれん草
ほうれん草は茹でるとアクが抜けます。すりごまと和えれば、鉄とカルシウムを1皿で取れる昔ながらのおかずです。ほうれん草半束を茹でて、すりごま大さじ1としょうゆ小さじ1で和えるだけで、2人分の副菜になります。ごまの香りがあるので、しょうゆは少なめでも物足りなさを感じにくいです。茹でたほうれん草は水気をよく絞ってから和えると、ごまの香りが薄まりません。
ささみ
ささみは100gにタンパク質が24g近くあり、油がほとんどありません。あっさりしたささみにごまだれをかければ、ごまの油と香りが加わって食べやすくなります。筋肉を保ちたい中高年に向きます。茹でたささみを手で裂いて、きゅうりと一緒にすりごまで和えるだけでも、5分ほどで一品になります。ささみは火を通しすぎると硬くなるので、沸騰した湯に入れて火を止め、余熱で10分ほど置くと柔らかく仕上がります。
納豆
納豆1パックにすりごまを小さじ1混ぜると、香ばしさが加わります。大豆とごまのタンパク質も一度に取れます。付属のタレを半分にして、すりごまの香りで補えば塩分も控えられます。なお、納豆はビタミンKがとても多いため、ワーファリンを飲んでいる人は主治医に確かめてから食べてください。
ごまにまつわる小さな疑問
- 練りごまはすりごまと同じように使える? 練りごまは、ごまを油が出るまですりつぶしたものです。吸収の面ではすりごまと同じと考えてかまいません。ただ油が多いので、量は控えめにしたいです。
- ごまアレルギーが心配な場合 ごまはアレルギー表示が推奨されている食品の1つです。国の調査でも原因として報告される例が増えています。食べて口や喉が痒くなるなら、医療機関で相談してください。
- ごま油でも同じ良さがある? ごま油はごまの油だけを絞ったもので、カルシウムや食物繊維はほとんど含まれません。香り付けに少し使い、栄養はすりごまで取るのがいいです。
- 金ごまは白や黒と何が違う? 金ごまは皮が黄金色の品種で、香りが強く少量でも風味が立ちやすいです。栄養の大きな差はありません。
ごまは、粒のままではなかなか届きにくい食べ物でした。炒りごまで買って、食べる直前にすりつぶす。それが一番の近道です。忙しい日や道具を出せない日は、小袋のすりごまを冷蔵庫で管理して1か月以内に使い切る。この二つを基本にすれば、毎日の習慣として無理なく続けられます。
明日の朝、ご飯に振る前に、ごまを指でひねってみてください。香りが立つかどうかで、いつものごまが違って感じられるかもしれません。完璧にすりつぶせなくても、少し殻が割れるだけでも吸収の助けになります。