たとえば、何度かデートを重ねた相手から「いい人だよね」と言われて、それきり連絡が減ってしまったとする。こちらは相手の予定に合わせ、気を遣い、できる限りのことをした。なのに、最後に選ばれるのはいつも別の誰か。そんな経験を重ねると、自分には何かが足りないのだと思えてくる。
でも、本命に選ばれるかどうかは、生まれつきの顔立ちや、相手のためにどれだけ尽くしたかだけで決まるわけではない。むしろ、一緒にいる時間に相手がどんな気持ちになるか、その積み重ねが大きく関わっている。遊びの相手と本命とでは、最初から見ている物差しが違うのだ。
遊びの相手と本命では、見ているものが違う
ある研究では、参加者にさまざまな人の写真を見せ、それぞれに「人を助けた話」か「助けなかった話」を添えて、遊びの相手と長く付き合う相手のどちらにしたいかを尋ねた。すると、長く付き合う相手としては、人のために動ける人の評価がはっきりと上がった。しかも、見た目がそれほどでもない人でも、助けた話があるだけで評価が上がったという。一方、遊びの相手ではその変化は見られなかった。
この違いは大きい。本命の物差しの上にあるのは、顔の良さより「困ったときに助けてくれるか」という安心感なのだ。だから、近くにいる人を後回しにせず、自然に手を差し伸べられる人は、長い目で見たときに選ばれやすい。ただし、見せるための親切はすぐに見抜かれる。大切なのは、誰かの役に立てたという事実が、日常の端々ににじみ出ていることだ。
隠しているつもりの不安は、3分で伝わる
スピードデートを使った研究では、1回3分ほどの会話を重ねてもらい、参加者が相手の不安そうな様子をどう感じたか、また会いたいと思ったかを調べた。すると、たった3分でも不安の強さはある程度見抜かれ、不安そうに見えた相手ほど「また会いたい」と思われにくかったという。距離を取りたがる性格はほとんど見抜かれなかったのに、不安のほうだけは伝わっていた。
不安が強いと、相手の反応を確かめたくて、言葉に焦りがにじむ。返事が遅いだけで責めてしまったり、既読がつかないと何度も追ってしまったりする。反対に、返事が早くても遅くてもいつも同じ温度でいられる人は、相手に「自分のペースでいていい」という安心感を与える。ドキドキさせる人より、帰ってきたくなる人。本命の入り口は、案外そんな落ち着きの先にある。
演じた自分で選ばれても、続かない
恋人や夫婦を対象にした研究では、相手が「ありのままの自分でいる」と感じている人ほど、相手を信頼し、関係に満足していたという。ここで重要なのは、本人がどう思っているかではなく、相手からどう見えているかだ。自分では素を出しているつもりでも、相手に「合わせている」と映っていれば、信頼は生まれにくい。
好きでもない映画を好きと言わない、知らないことを知らないと言える。メッセージでも、相手に合わせて温度を変えるより、いつもの自分の言葉で返すほうが信じてもらえる。ただし、ありのままでいることと、何でもぶつけることは違う。全部をさらけ出すのは、ただの乱暴だ。素直さと配慮は別物で、その境界線を保てる人が、長く一緒にいたいと思われる。
自分を責めない人は、相手にも優しくなれる
自分に優しくできる人ほど、恋人から「気持ちが近くて受け入れてくれる」「自由を認めてくれる」と見られていた、という研究結果がある。自分を責め続けると心の余裕がなくなり、相手の小さな失敗まで許せなくなる。逆に、自分の失敗を認めた上で攻めすぎない人は、その余裕を相手にも向けられる。
送ったメッセージを読み返して落ち込む夜こそ、友達にかけるような言葉を自分にかけてみる。完璧である必要はない。本命に選ばれるのは、欠点のない人ではなく、自分の不完全さに優しくできる人なのだ。
誰かと笑っている姿が、選ばれるきっかけになる
他の人が楽しそうにしている人を見ると、その人への関心が高まるという研究もある。人は、一目で相手を見抜くのが難しいから、誰かと楽しそうにしている姿を「きっといい人なのだろう」という手がかりにする。選ばれている人がさらに選ばれるのは、少しずるいようにも感じるが、これも本命選びの現実だ。
友達と笑っている姿は、遠くから見ている人にも届く。SNSでも、一人で決めた写真より、友達と笑っている一枚のほうが良さが伝わることがある。ただし、人気者のふりは近づいた人にすぐ見抜かれる。無理に明るく振る舞うのではなく、自然に周囲と楽しくいられることが、静かなアピールになる。
遊び心は、攻撃的でないことのしるし
長く付き合う相手に求める性格として、遊び心が男女ともに高く選ばれた研究がある。一緒にふざけられる相手の前では緊張がほどけるし、遊び方には人を傷つけないかどうかが自然に出る。真面目な人だと思っていたのに、ふとした瞬間に冗談を言われて急に距離が縮まる、という経験は多くの人にあるのではないか。
待ち合わせに遅れた相手を軽くいなせる余裕や、予定が変わっても「じゃあこうしよう」と切り替えられる柔らかさ。そうした遊び心は、相手に「この人となら気を張らなくていい」と思わせる。本命に選ばれるのは、常に完璧な人ではなく、一緒にいて肩の力が抜ける人なのかもしれない。
本命に選ばれるかどうかは、特別な魅力の有無ではなく、相手が安心して素の自分でいられるかどうかの積み重ねだ。だからといって、すべてを変える必要はない。まずは、自分が自分に優しくできているか、誰かと笑えているか。その姿は、案外誰かが見ている。