新NISAが始まって3年目。多くの人がつみたて投資を始め、そこそこの資産が育ってきた頃合いです。「まだまだ積み立てなきゃ」と思い込んでいませんか? 実は、目標額に届きそうなら積み立てを卒業してもよく、複利の力でそのまま放置するだけで老後資金が十分賄えるケースが少なくありません。本記事では、あなた専用の「卒業ライン」を計算する具体的な式と、積み立て卒業と取り崩し開始を分けて考える発想の転換を解説します。自分に必要な額を見極め、無駄な労力と時間を手放すヒントにしてください。
卒業ラインは「年間不足額 × 25」で出す
積み立てをやめる目安=卒業ラインは、次の式で求められます。
卒業ライン = (年間生活費 - 年金などの他の収入) × 25
この「×25」の根拠は、米国のトリニティ・スタディという研究です。「年間4%の取り崩しなら、高い確率で資産が枯渇せず長持ちする」という知見に基づき、必要額の4%=年間不足額となるよう逆算した数字です(100÷4=25)。
※2026年現在、早期リタイアなど老後期間が長い場合は3.5%程度に抑えるのが安全とされる一方、4.5%でも問題ないとの見方もあります。日本はNISAという非課税制度があるため税制面で有利ですが、為替リスクもあるため一律の正解はありません。学長は「基本は4%で考えてよい」としています。
三つのモデルケースで見るリアルな数字
同じ式でも、年金や働き方によって必要額は大きく変わります。
1. 独身・65歳定年
- 月額生活費:25万円(年300万円)
- 月額年金:14万円(年168万円)
- 年間不足額:132万円
- 卒業ライン:約3,300万円
年金がなければ7,500万円必要になります。年金の価値は絶大です。
2. 夫婦・65歳定年(1馬力前提)
- 月額生活費:30万円(年360万円)
- 月額年金:23万円(年276万円)
- 年間不足額:84万円
- 卒業ライン:約2,100万円
こちらも年金なしなら9,000万円。夫婦で年金を受け取れる強みが出ます。
3. 45歳で早期リタイア(FIRE)
- 月額生活費:25万円(年300万円)
- 年金受給前のため他の収入:0円
- 取り崩し率:3.5%(期間が長いため控えめに)
- 卒業ライン:約8,600万円
早期リタイアを目指さない「豊かな老後」レベルなら、2,000万〜3,000万円台で足りることがわかります。「1億円必要」は思い込みかもしれません。
「積み立て卒業」≠「取り崩し開始」の発想転換
ここが最大のポイントです。積み立てをやめても、そのまま運用を続ければ複利で資産は育ちます。取り崩しを始めるのは年金受給以降など、ずっと先で構いません。
例:40歳で1,500万円を年利7%で運用し続けると、65歳時点で約8,100万円に。独身モデルの卒業ライン3,300万円は余裕でクリアできます。つまり40歳時点で積み立てを卒業しても、老後資金は「放っておくだけ」で十分見込めるのです。
「取り崩し直前まで積み立てなきゃ」と思い込み、すでに十分な資産があるのに追加投資し続けるのは、使い切れないお金を生むための無駄遣いにほかなりません。
新NISA5年分(600万円)だけで届く可能性
新NISAのつみたて投資枠(年120万円×5年=600万円)を年利5%以上で運用すれば、25年後には2,000万円を超えます。40歳で600万円投資完了なら、65歳の年金受給開始時に卒業ライン到達の可能性が十分あります。
「2,000万円用意しろ」と言われるのと「600万円投資すれば届くかも」と言われるのでは、心理的ハードルが全く違います。これが複利の力(スノーボール効果)です。ウォーレン・バフェットも「株式投資はスノーボール。一度雪玉を作って転がせば、あとは勝手に膨らむ」と表現しています。
自分専用の「十分」を見極め、次のステージへ
学長はわかりやすい目安として「5,000万円以上の小金持ち」を掲げますが、あくまで目安です。人によってはもっと少なくて十分、あるいはもっと必要な場合もあります。大切なのは「自分に必要な額を自分でちゃんと見極めること」。
必要額を超えてまで無闇にお金を増やし続けると、労力・時間・お金のすべてが浪費されかねません。「金という生き物をただ繁殖させるための餌使い」にならないよう、自分のステージを見誤らないでください。
貯めるべき人は貯め、使うべき人は使う。豊かな人生を送るために、今のあなたにとっての「卒業ライン」を一度計算してみてはいかがでしょうか。
今日からできるアクション
- 年間生活費と想定年金額を書き出し、不足額を出す
- 不足額 × 25 で卒業ラインを試算する
- 現在の資産額と想定利回りで、放置した場合の将来価値をシミュレーションする
- 「積み立て卒業」と「取り崩し開始」を分けて考え、卒業時期を決める
まずは家計簿アプリや年金定期便を開き、数字を当てはめてみることから始めてみてください。あなたの「十分」が見えれば、肩の力が抜けて次の一歩が軽くなるはずです。