毎月3万円を投資に回すか、それとも行きたい場所や会いたい人との時間に使うか。若い世代のお金の使い方には「投資を始めなさい」と「経験に使え」という正反対の助言が並び、どちらを選んでも取り残されるような気持ちになることがあります。
結論を先に言えば、投資そのものを後悔する声は少なく、むしろ「節約のしすぎ」を後悔する声が目立ちます。この記事では、ある70代の投資家の振り返りと、SNSで語られる先人たちの声を手がかりに、無理なく両立する配分を考えます。
70代の投資家が後悔したのは「投資」ではなく「我慢」だった
株主優待だけで生活することで知られる70代の投資家が、がんの診断を受けた後に「もっと現金を使っておけばよかった」と振り返ったという話があります。ただし、その言葉をよく見ると、投資をやめておけばよかったとは言っていません。後悔の中心は、数百円や数千円の出費を我慢し続けたことでした。
この投資家は、テレビで「株主優待だけで暮らす人」として取り上げられてから、その姿を守るために現金をほとんど使わない生活を続けていたといいます。好きな店にも行かず、観光もせず、仕事のとき以外は現金を使わない。そうした小さな我慢が積み重なり、病気をきっかけに「人生には限りがある」と気づいたとき、使わなかったお金がそのまま残ったのだそうです。
ここで重要なのは、この人が後悔した金額が大きな買い物ではなく、日々の数百円、数千円だった点です。投資額を減らすべきだったという話ではなく、生活の彩りを削ってまで節約する必要はなかったという話です。
「若いうちに経験に使え」と言われる理由
SNSでは、年齢を重ねた人から「若いうちに遊べ」「行きたい場所には一人で行け」という助言が繰り返し投稿されています。その理由は、単に「経験が人生を豊かにする」という精神論だけではなく、体力や関心の変化にあります。
たとえば、20代の頃は夜更かししてゲームをしたり、知らない街を歩いたりすることに強い興味を持てても、30代、40代になると同じことへの関心や体力が落ちてくることがあります。これはすべての人に同じように起きるわけではありませんが、年齢とともに「あのとき行っておけばよかった」と思う場面は増えやすいようです。
また、若い頃に触れた本や映画、音楽、旅先での出来事が、その後の考え方や選択を支えることがある、という声もあります。同じ1万円でも、感受性が柔らかい時期の経験は、後から振り返ると「消費」ではなく「投資」に近い意味を持っていたと感じる人が少なくありません。
ただし、これは「20代でなければ意味がない」という話ではありません。40代でも50代でも、初めての経験はその人なりの影響を与えます。若いうちにしかできないことに焦点を当てつつ、年齢を理由に新しいことを諦める必要はないのです。
投資を続けながら後悔しないための現実的な配分
投資をしている20代は3割近く、30代では2人に1人とも言われ、関心の高さがうかがえます。投資については、長期的な分散投資を続けてきた人の多くが「やってよかった」と感じているという声があります。インデックス投資のように、S&P500やオールカントリー型の指数に毎月一定額を積み立てる方法は、値動きを毎日確認せずに続けやすい仕組みです。
とはいえ、将来の値上がりは保証されていません。過去の傾向として世界経済が成長してきたとしても、元本割れの可能性は残ります。そのため、投資に回す金額は、生活費や急な出費に影響しない範囲に抑えることが前提になります。
具体的には、毎月2〜3万円の自動積立を設定し、そのお金は「ないもの」として扱う方法があります。投資していること自体を忘れるくらいの金額にしておくと、日々の出費を削ってまで投資額を増やそうとする必要がなくなります。
一方で、経験に使うお金もあらかじめ決めておくと、罪悪感なく使えます。たとえば、毎月5,000円から1万円を「経験費」として分けておき、行きたい場所や会いたい人との時間に使う。この金額は収入によって変えてかまいません。大切なのは、投資と経験のどちらかを全否定しないことです。
もし収入が不安定な時期なら、まず生活費の確保を優先し、投資は少額から始めるのが現実的です。借金の返済が重い場合も、無理に投資を増やすより返済を優先したほうが安心できることがあります。
小さな我慢を減らすことが、結果的に長く続ける力になる
節約や投資は、続けること自体に価値があります。しかし、「100円高いからやめておく」「行きたいけど我慢する」という小さな制限を積み重ねると、ある日突然、何のために我慢しているのか分からなくなることがあります。
先の投資家が後悔したのも、投資や資産形成そのものではなく、自分の楽しみに許可を出せなかった期間でした。もし同じように、毎日の小さな出費を削ってまで投資に回しているなら、一度その金額が本当に必要なのかを見直してみてもいいかもしれません。
投資は自動化し、経験には少しずつお金を使う。この二つを分けて考えると、「若いうちは投資」「若いうちは経験」という二択から抜け出しやすくなります。完璧な配分は人によって違いますが、どちらかに極端に寄りすぎないことが、後悔を減らす現実的な道ではないでしょうか。