テレビのリモコンに表示される音量の数字が、以前より大きくなっていると感じることはありませんか。聞き返しが増えたり、会話のあとでどっと疲れたりしても、「年だから仕方ない」と決める前に見直せる暮らしの工夫があります。音量を上げる前に、まずは音の環境と聞く時間、そして周囲で重なる音に目を向けることです。紙とペンを使って困った場面を書き留めると、変化にも気づきやすくなります。ここで紹介するのは生活の工夫であり、診断や治療の代わりにはなりません。
音量表示の数字が大きいと、聞こえは悪くなっている?
結論から言えば、音量表示の数字だけで聞こえの状態を判断することはできません。番組や機器によって音の出方は違い、数字は聞こえの点数ではないからです。たとえば台所の水音がテレビのセリフに重なると、声そのものは聞こえていても言葉を追いにくくなります。このように、聞きづらさは音量の不足だけでは説明できない場合があります。
厚生労働省の聞こえに関する公開資料でも、大きな音にさらされることを減らす方向が示されています。音の大きさだけでなく、聞き続ける時間にも目を向ける必要があります。日差しの強さと浴びる時間を一緒に考えるのと同じように、音も大きさと時間をセットで見直します。一方で、急に聞こえ方が変わった場合や、片方だけ聞こえにくいといった違いがある場合は、環境のせいと決めつけず早めに医師へ相談してください。
テレビの音量は、どのように調整すれば耳にやさしい?
数字を目標にせず、いつもの席で言葉を追いやすく、音を辛く感じない大きさを探すのが基本です。無理に小さくすることも、我慢して大きな音を聞き続けることも避けます。調整するときは、次の手順を試してみてください。
- いつもの椅子に座り、音楽ではなく落ち着いた話し声の場面で今の音量を確かめる
- リモコンを短く押し、変えた後の声を少し聞いてから判断する
- 言葉を追うために肩へ力が入るなら、無理に下げない
- 声が響いて辛く感じるなら、そのまま我慢しない
たとえば、料理中に音量を上げ、そのまま居間に戻っても同じ大きさで聞き続けていたというケースを考えてみます。この場合、問題は音量を上げたことより、戻すきっかけがなかったことにあります。番組が変わると同じ表示でも感じ方が変わることがあるため、その都度、聞きやすさを確かめることが大切です。長く聞いて疲れを感じたら、番組が終わったところなど生活に合う区切りで音を止めて休みましょう。気になる日は、疲れた場面をメモしておくと、次に見直す手がかりになります。持病のある方や服薬中の方は、試す前に医師や薬剤師に相談してください。
会話の聞き取りを楽にするには、周囲の音をどう扱う?
話し声に重なる別の音を、まず一つ減らすことです。流しの水音や別の部屋の放送が重なると、声は届いていても言葉の区切りを掴みにくくなります。細かい模様のある紙に小さな文字を書くと読みづらいのと同じように、背景の音が多いと話の輪郭がぼやけてしまうのです。公的な聞こえの資料でも、周囲の騒音を減らす工夫が紹介されています。
たとえば夕食の片付けをしながら家族の予定を聞く場面では、水を流したまま聞き返すより、手を止めて水を止め、相手の顔を見て話を聞くほうが確実です。放送が重なっているなら、一緒に聞いている人に伝えて会話の間だけ止めます。音を止めにくい場合は、近くの静かな席へ移る方法もあります。調理中なら火元を安全にしてから、足元を確かめて座りましょう。聞き取れなかったところは「出かける時間をもう一度」と具体的に伝え、一度に全部聞こうとせず、確かめたい話を一つずつ聞きます。ただし、警報音や生活に必要な音まで消してはいけません。静かな場所でも不便が続くなら、その場面をメモして医師や薬剤師に相談してください。
音から離れる休憩には、どんな意味がある?
静かにすれば聞こえが元に戻るという意味ではありません。次の声を追わなくてよい時間を、暮らしの中に選ぶという工夫です。朝からテレビをつけっぱなしにしていると、見たい番組が終わっても消すきっかけがないまま夕方を迎えることがあります。人の声があるとほっとする反面、話の内容を追うのが辛くなっていても習慣で聞き続けている場合があります。
長い散歩の途中でベンチに腰を下ろすように、放送と放送の間に小さな区切りを置いてみます。たとえば、好きな番組が終わったところで一度テレビを消し、椅子に座ったまま窓の外の木や雲を眺めるだけでも構いません。楽しみの放送だからこそ、聞き続ける以外の過ごし方も選べます。音を止めるのは聞こえを試すためでも、良くするためでもなく、音から離れる時間を作るためです。
今日から試すなら、まず紙とペンに「いつ、どこで、どんな音が重なって困ったか」を一行書いてみてください。テレビは番組の区切りで音を止め、会話のときは水や放送を一つ止める。無理に音量を下げる必要はなく、自分が楽に聞ける環境を探すことが出発点です。聞こえの変化が続く場合や気になる違いがある場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談してください。