偉人の話を聞いたあと、「自分も何か始めよう」と思える人と、「やっぱり自分には無理だ」と気持ちが沈む人がいます。同じ話を聞いているのに、反応が分かれるのはなぜでしょうか。
ある研究では、同じ大学の優秀な学生の記事を読んだ1年生と4年生で、その後の反応が大きく異なりました。1年生の82%が「刺激を受けた」と答えたのに対し、4年生では6%でした。4年生の多くは「人にはそれぞれ事情がある」「他人と比べても意味がない」と答え、比較そのものを避けようとしていました。
この違いは、成功者を「これから自分にも起こりうる未来」として見るか、「もう届かない証拠」として見るかにあるようです。やる気が出る人は、今の自分を最終結果だとは思っていません。一方、やる気を失う人は、現在の差を見た瞬間に未来の差まで決めてしまいます。
やる気を失うとき、頭の中で起きていること
偉人の話を聞いているつもりでも、途中から「この人は何歳で成功したのか」「自分と同じ年齢のとき何をしていたのか」と、自分との距離ばかり数え始めることがあります。距離を見て「近づきたい」と思う人もいれば、「もう手遅れだ」と思う人もいます。
研究で注目されたのは、距離そのものではなく、その成功に自分もまだ届く可能性があると感じられるかどうかでした。1年生には大学生活の大部分が残っていて、記事にあった活動をこれから始められます。4年生は同じ4年間をやり直せません。同じ経歴が、一方には目標に見え、もう一方には採点結果に見えたのです。
つまり、やる気が出るかどうかは、能力の高さや自信の強さではなく、「今の自分はまだ変わるものだ」と思えるかどうかにかかっています。心理学者アルバート・バンデューラが提唱した「自己効力感」という考え方でも、他人の成功を見ることは材料になりますが、それより自分で実際に行動して得た経験のほうが確かな材料になりやすいとされています。