まず試したいのは、成果と標準工数の共有
毎月繰り返す仕事を1つ選び、完成の条件とこれまでの工数を上司と共有してみましょう。たとえば資料作成なら、必要な内容と品質を決め、過去の実績から8時間ほどを見込む。これをマネジメント側と担当者側で共通認識にしておきます。手順の改善で4時間で終えたなら、同じ成果を少ない時間で実現したことが見えるようになります。
ただし、標準工数を決めるだけでは解決しません。短縮された時間をどう扱うかは、別に話し合う必要があります。全部を追加業務に回すのか、一部を本人の給料や時間に残せるのか。ここまで話して初めて、改善の利益を分ける土台になります。
工数を決めるときの注意点
同じ資料作成でも、データが揃っている日と数字の食い違いを調べる日では必要な時間が違います。企画や調査には、初めて見るまで難しさが分からない仕事もあります。だから工数には幅を持たせ、条件が変われば見直すことが必要です。
また、予定外の仕事は必ず来ます。顧客からの修正、担当者の欠勤、急なトラブル。そのたびに細かく契約を結び直すより、状況に合わせて担当を変えられるほうが動きやすい面もあります。固定月給では仕事が少ない日に給料が減る仕組みにはなっていません。仕事量の変動の一部は会社が引き受けている。この関係自体に意味はありますが、予定外の仕事をいつも仕事が早い人の余力で処理すると、その人にだけ負担が集中します。
短縮で生まれた余剰をどう分けるかを相談する
4時間で終えたと正直に記録したら、翌月から4時間が当然の基準になり、残りに別の仕事が入る。これが続けば、本人には改善を隠す理由が生まれます。見えた改善を本人にどう返すのか。ここに、効率化の利益を分けるための対話が必要になります。
基準を見直すなら、評価や裁量も一緒に見直せるか確認しましょう。成果と工数を共有した先に、改善の利益について話す機会を作ることが大切です。会社が儲かるから社員へ還元する、という計算だけでなく、どんな関係で事業を続けたいかという判断も含まれます。渋沢栄一は『論語と算盤』で、利益を計算することと人としての道理を結びつけました。会社が豊かになることと働く人が報われることがつながらない職場では、この二つがうまく繋がっていないと言えます。
働く場所を選ぶときの基準を持つ
その会社は生産性を上げた社員に実際に何を返してきたか。仕事を減らす工夫をした人がいた後、その人の担当や評価はどう変わったか。給与に反映されたか、裁量が広がったか、仕事量が見直されたか。「社員を大切にする」という言葉だけでなく、過去の判断を見ることが役に立ちます。上司が変わっても残るルールにしようとする会社かどうかも、働く場所を選ぶ材料になります。
追加業務にボランティアで対応するか、ボランティアになるくらいならサボるかの二択ではありません。成果の基準を共有し、報酬を求める声を上げることも重要です。1人の提案で会社全体が変わるとは限りません。それでも、成果や負担を共有しようとするか、利益の分け方を話し合おうとするかは、その会社との関係を考える材料になります。
仕事を早くする能力を磨くと同時に、その能力を安心して発揮できる場所を見極める。まず期待される成果と負担を共有し、改善で生まれた利益をどう分けるかまで約束する。仕事を早くする工夫を隠さなくていい職場を、小さな対話から探していくことができます。