言いにくい話を組み立てる5つの手順
起業家のコーディ・サンチェスが紹介する「クリア」という手順を、友人との会話に応用してみる。相手を気にかけ、出来事そのものを扱い、具体的に伝え、相手に尋ね、次の行動を決める。5つの要素の頭文字を取ったものだ。
- 話す理由を伝える:これからも相談したいから、先週のことで1つ話しておきたい、と切り出す。相手を責めるための前置きにしない。
- 出来事そのものに絞る:「口が軽い」と人格を決めつけず、相談した内容を他の人の前で話した件だけを話題にする。
- 具体的に伝える:いつ、何があって、自分は何に困ったのかを伝える。「もっと気を遣ってほしい」だけでは、相手はどの場面か分からない。
- 相手に尋ねる:「そっちはどう受け取っていた?」と聞き、一旦耳を傾ける。相手の意図を決めつけず、反論を用意しながら聞かない。
- これからを決める:謝ってもらうだけで終わらせず、次からは先に確認してほしいなど、具体的な行動を相談する。
たとえば、2人だけで相談した転職の話を、後日他の人がいる場所で話されてしまったとする。この手順なら、「これからも相談したいから、先週の食事のときの話をしておきたい」と始め、「あれはまだ人に知られたくなかった」と具体的に伝え、「そっちはどう受け取っていた?」と聞く。その返答によって、認識が食い違っていたのか、嫌だと知りながら話したのかで、その後の会話は変わる。最後に「個人的な相談を誰かに話すときは先に確認してほしい」と、これからの行動を決める。
伝えた直後に感謝されることまで求めない。こちらは何日も考えてきたが、相手は今初めて聞いた。少し黙ったり、考える時間が欲しいと言ったりするのは不思議なことではない。判断を任せるなら、考える時間も渡す。
手順だけでは埋まらない、普段の接し方
褒めてから指摘して、最後にもう一度褒める「フィードバックサンドイッチ」という方法がある。ベン・ホロウィッツは、役立つ場合もあると認めつつ、繰り返すうちに不自然になりやすいと指摘している。相手が褒められた時点で、その後の批判を予想するようになるからだ。「いつも助かっているんだけど」と切り出された瞬間に身構える。褒め言葉が警告音になってしまう。
キム・スコットがシェリル・サンドバーグから厳しい指摘を受け止められたのは、褒め方が具体的だったことと、普段から仕事以外でも気にかけてもらっていたからだという。サンドバーグはプレゼンの良かった点を具体的に伝えたうえで、話し方の癖を指摘し、コーチまで紹介した。スコットはその賞賛をお世辞ではなく本気だと感じた。批判するときだけ急に優しい言葉をかけられたわけではなかった。
言葉を並べる順番だけではどうにもならない部分がある。普段はこちらの話を聞かない人が、指摘するときだけ丁寧になっても、素直に受け取るのは難しい。反対に、困ったときに手を貸し、自分の間違いを指摘されたときにも聞いてくれる人なら、今回も話を聞いてみようと思える。相手が聞いているのは今日の一言だけではない。それまでどう接してきたかが、伝わり方を左右する。
本人以外に話してしまうとき
本人に言えないので、共通の友人に話すことがある。気持ちを整理したくて聞いてもらうのは悪いことではない。「それは嫌だったね」と言われれば少し楽になる。自分の受け止め方がおかしいわけではないと安心することもある。
ただし、安心できたのでそのまま本人には何も言わなかった、という状態が続くと、出来事を知る人は増えていくのに、相談内容を話してしまった本人には何も伝わらない。本人についての会話は増えているのに、本人との会話は始まっていない。周囲は事情を知っているつもりで接し、本人だけがなぜ距離を置かれているのか分からない。直接言えば傷つけると思って黙ったのに、別の場所で関係が悪くなっていく。
同じ問題を何度も人に話しているなら、「その話、本人にはした?」と一度確かめてみる。気持ちが落ち着いたことと、問題が解決したことを取り違えていないか。相談を聞く側も、すぐに「本人に言えば」と急かす必要はないが、一通り聞いたあとに、本人に伝えるとしたら何が一番言いにくいかを一緒に考えることはできる。
言いにくいことを伝える目的は、相手を変えることではなく、これからどう付き合うかを2人で決めることだ。完璧な言い方はなくても、最初の一文を決めるだけで会話は始まる。沈黙を優しさにしないために、今日話す理由と、出来事そのものを一つずつ言葉にしてみる。