「もう手遅れかもしれない」と感じているなら、その感覚は年齢だけで説明できるものではありません。多くの場合、それは「今いる場所が自分に合っていない」と気づき始めたサインです。ただし、気づいた瞬間に状況が自動で変わるわけでもありません。ここでは、28歳・派遣・貯金12万円という状況から「早く気づいたほうがいいこと」として紹介されていた内容を手がかりに、焦りの中で使える考え方を整理します。
「普通の暮らし」の基準が、いつの間にか上がっていた
結婚、車、持ち家、年に一度の旅行。かつて「普通」と呼ばれていた暮らしが、今は届きにくいものになっています。これは努力の量だけでは説明できません。実質賃金がこの30年ほど横ばいで、先進国の中でも賃金がほとんど伸びなかった国だという数字が紹介されていました。一方で、教育費や社会保険料は上がり続けています。
収入が変わらないのに、「普通」の線だけが上がっている。だとすれば、そこに届かないことを「自分が怠けている証拠」と受け取る必要はありません。構造が変わった、という見方です。
「自己責任」という言葉は、誰にとって都合がいいのか
ネットで相談すると「努力が足りない」と言われる。腹が立つより先に「やっぱりそうなのかも」と思ってしまう。この流れは、とてもよくあるものです。
社会学の調査として紹介されていた数字では、格差は仕方がないと考える層は全体の約13%で、その層の平均所得は他の層より140万円ほど高いとされていました。調査の定義や方法はこちらでは確認できないため目安として受け取ってほしいのですが、少なくとも「自己責任」という説明が、損をしている側から自然に出てくる言葉ではないことは見えてきます。台風の日に「傘をさせばいい」と言うようなもので、傘では防げない雨もあります。
比べる相手を、他人から過去の自分に変える
SNSは比較の装置になりやすい場所です。同期のマイホーム、結婚報告、子どもの写真。見るたびに苦しくなるのに、やめられない。そして自分より厳しい人を探して、少し安心する。けれど、比較して安心しても、自分の生活は1ミリも変わりません。
やめる必要はありません。ただ、比べる相手を「過去の自分」に変えるだけで、同じSNSが別の使い方になります。半年前の自分より、今日は少し眠れているか。そういう見方です。
「頑張ればなんとかなる」には、有効期限がある
「3年頑張れば正社員になれるかも」と思って始めた派遣が、気づけば5年になっていた。同じ場所で同じ努力を繰り返しても、結果は変わりません。これは努力が足りないという話ではなく、努力の向き先の話です。
年齢が上がるほど転職が厳しくなる、という声を聞いて焦る気持ちもわかります。ただ、「もう遅い」と思えた時点で、今の場所がおかしいと気づいたということでもあります。気づきに遅すぎることはない。しかし、気づいただけで動かなければ何も変わらない。この二つは同時に成り立ちます。
助けてと言えないことが、いちばん危険
飲み会を断り続けて、誘われなくなった。親には言えない。ネットで「わかる」という言葉を探す。画面を閉じたら、また一人。声を上げられない人ほど、支援から遠ざかってしまいます。
生活保護の捕捉率は2割程度で、受給資格がある人の8割が申請していない、という数字も紹介されていました。理由として多いのは「恥ずかしい」「自分は対象ではないと思っていた」です。同じ気持ちの人が何百万人もいる、という点は事実として押さえておいていいと思います。
ただし、ここで共感だけで終わらせると、状況は動きません。制度は申請しないと使えず、窓口は知っている人だけがたどり着ける場所にあります。
お金と健康は、後回しにすると戻りにくい
金融教育を受けたと認識している人は日本で7%、アメリカでは20%という数字も紹介されていました。税金も保険も、社会に出てから初めて存在を知る。知らなかっただけで数万円損をしていた、というのはよくある話です。知識は、今日知れば今日がスタートラインになります。
健康も同じです。食費を月2000円だけ増やして、卵と鶏むね肉とキノコを買うようにしたら、1ヶ月ほどで睡眠の質が変わった、という体験が語られていました。個人差はありますが、眠れるようになると考える力が戻ってきます。貧困が健康を壊し、壊れた健康がさらに貧困を呼ぶ。この循環は、いちばん注意したいところです。
「どうせ変わらない」が、いちばんの敵になる
社会が悪い、構造が悪い、教育が悪い。それは事実かもしれません。けれど、それが「だから動かなくていい」に変わった瞬間、事実は言い訳になります。
動いて失敗したら、社会のせいにできなくなる。自分のせいになる。それが怖くて動けない。その怖さを認めること自体が、もう動き始めている、という見方もあります。これは励ましではなく、順番の話です。構造を認めることと、動かないことを正当化することは、別のことです。
今日できる、小さな確認
- 比べる相手を過去の自分に変える(半年前の自分と比べてみる)
- 支援制度の名前を1つだけ調べる(生活困窮者自立支援制度、国民年金の免除申請など)
- 食費を少しだけ足して、たんぱく質を1品増やす
- 「大丈夫?」と聞かれたら、「あまり大丈夫じゃない」と一言だけ返す練習をする
ただし、これらの行動が合うかどうかは、置かれている環境や体調によって変わります。すでに心身の不調が続いている場合や、生活が立ち行かない場合は、自治体の窓口や医療機関、専門の相談機関に相談してください。ここに書いた内容は、診断や治療の代わりになるものではありません。
まとめ
手遅れかどうかを決めるのは、年齢ではなく、今の場所と自分の間にずれがあると認められるかどうかです。認めたうえで動くかどうかは、また別の話になります。まずは、比べる相手を一つ変えるところから始めてみてもいいのかもしれません。