再生数やランキングを見て選んだあと、「本当は自分が好きだったのか」と迷うことはないでしょうか。数字は便利な手がかりですが、同時に私たちの好みを作り替える力もあります。この記事では、人気や数字に左右されにくくなるための、暮らしの中で無理なく試せる小さな習慣を紹介します。最初にできるのは、数字を見る前に自分の基準を一つだけ決めることです。
数字を見る前に、自分の基準を一つ決める
アプリを開いたり、ランキングを確認したりする前に、「静かな曲が聴きたい」「部屋に合う色がほしい」など、自分の条件を口に出すかメモしてみます。そのあとで数字を見ると、人気が自分の基準を上書きしようとする場面に気づきやすくなります。
たとえば、本当は落ち着いた曲を探していたのに、再生数の多い派手な曲に手が伸びそうになったら、一度だけ「数字がなければこれを選んでいたか」と問いかけてみます。毎回でなくても、よく使うアプリの一つから始めるだけで十分です。
人気が好みを作る仕組みを知っておく
2006年に報告された人工的な音楽市場の実験では、約1万人の参加者が48曲の中から気に入った曲をダウンロードしました。ある集団では他人のダウンロード数が見えず、別の集団では曲の横に数字が表示されました。人気が見える世界では、ヒットの格差が大きくなり、どの曲が伸びるかの予測も難しくなったとされています。同じ曲でも、ある集団では上位に入り、別の集団では埋もれることがありました。
2008年には、同じ研究者たちが人気の順位をわざと逆にした実験を行っています。本当は人気のない曲を上位に見せると、時間とともに実際に選ばれやすくなったと報告されています。人気は結果としてあるだけでなく、次の好みを生む材料にもなっているのです。
心理学では、繰り返し触れたものに好意を持ちやすくなる「単純接触効果」という考え方があります。最初は変だと思った服でも、何度も見るうちに普通に見えてくることがあります。好きになったと感じても、それは見慣れただけかもしれません。