食器棚の扉を閉めるとき、片手で押さえていないと少し浮いてしまう。中で重ねた器が扉の内側に当たっているからです。毎日の食事で使う器は、ご飯茶碗、汁椀、取り皿、湯呑みの4つ程度。それなのに、棚の中には数えると100を超える器が入っていることもあります。扉が閉まらないのは、収納力の問題というより、使っていない器が使いやすい場所を占めているサインかもしれません。
ここでは、食器棚に残りがちな器を種類ごとに見ながら、手放すか、使い方を変えるかの判断材料を整理します。全部を一度に片付ける必要はありません。まずは、毎日使う器が取り出しやすくなることを目指します。
食器棚の扉が閉まらないとき、まず確認したいこと
扉が浮く原因の多くは、器の重なりが扉の内側に当たっていることです。特に、重ねられない器や高さのあるグラスが手前にあると、閉めるたびに押さえることになります。また、食器棚のいちばん使いやすい段に、普段使わない器が並んでいると、毎日使う器が奥や下の段に押し込まれ、出し入れのたびに器同士がぶつかります。
まずは、いちばん使いやすい段に何が置いてあるかを確認します。そこに「よそ行きの器」や「来客用の器」が並んでいるなら、毎日使う器と場所を入れ替えるだけで、扉の圧迫と出し入れの手間が減ることがあります。
残りがちな器と、それぞれの扱い方
箱に入ったままの引き出物
結婚式の引き出物などでいただいた箱入りの器は、箱の分だけ場所を取り、中の器はほとんど使われません。いただいたお祝いの気持ちは受け取ったうえで、器そのものは使ってこそ役目を果たします。箱から出して、一度今日の食卓で使ってみます。使いやすいなら毎日の器の仲間に加え、使いにくいなら使ってくれる人に譲ることを考えます。空になった箱はその日のうちに手放すと、棚が一段分軽くなります。
景品やおまけの器
シールを集めてもらった白い皿、飲み物のおまけのグラス、記念品の湯呑みなどは、自分で選んだものではないため愛着が薄く、それでも「もらったものだから」と残りがちです。同じ白い皿が5枚、6枚と重なっていることもあります。判断基準を「もらったから残す」から「使っているから残す」に変えます。毎日使っているなら、それは立派な普段使いの器です。年に一度も使っていないなら、器ではなく景品として手放す選択肢があります。
5客揃いの湯呑みと茶托
来客用として同じ柄の湯呑みが5つ、茶托と一緒に箱に入っていることがあります。和食器は5つで一組として売られることが多いですが、その数は家族の人数から決まったものではありません。2人暮らしの家に5客の湯呑みが3組あれば、15人分になります。実際に家に来る客は一度に2〜3人という場合が多いので、来客用の器は実際の人数に合わせて残す数を決めます。気に入った柄の湯呑みを2つか3つだけ残し、残りを手放してもかまいません。
重ねられない器
大皿や縁が大きく反った器、足のついた鉢などは、料理を盛り付けると映えますが、食器棚の中では1枚で1段を使ってしまいます。重ねると割れそうで、横に置くとはみ出し、立てると倒れそうなため、結局その1枚のために棚の一段が空いたままになります。使うのが年に1〜2回なら、出すたびに上に乗ったものを全部どかす手間もかかります。重ねられない器は、本当に好きなものを1つか2つだけ残し、飾るように立てておくか、使う季節だけ手前に出します。他の器が重ねられるようになると、棚の中に手を入れる隙間が生まれます。
縁のかけた器
小さくかけた茶碗やひびの入った湯呑み、取っ手の取れたカップは、口や指を切ることがあり、熱いお湯を注いだときに割れることもあります。そのまま毎日使うのには向きません。思い出があって手放せない場合は、金継ぎなどで直して使う道と、手放す道があります。食事に使う器を直すときは、食器に使えると表示された材料を使うか、専門の店に頼むのが安心です。手放す場合は、陶磁器の扱いを自治体の案内で確認します。地域によってはリサイクルに回せるところもあります。
マグカップ
マグカップは形がばらばらで重ねられず、取っ手が引っかかるため、1つ取るたびに手前の3つを動かすことになります。家族が2人なのに10個以上あることもあります。毎朝手に取るのはいつも同じ1つで、残りは棚の奥でほこりをかぶっています。一人につき2つまでを目安にします。毎日使う1つと、洗っている間に使う1つです。思い出のあるカップは1つだけ選び、ペン立てや小さな花を挿す器として使う方法もあります。
よそ行きの器
食器棚の目の高さの段に、高かった器や名のある窯の器、いただいた大切な器が並んでいることがあります。割れたら困るので普段は使わず、特別な日だけ使おうと決めている器です。しかし、その段を去年一年間で何回使ったかを振り返ると、一度もなかったという人も少なくありません。一方、毎日使う茶碗や取り皿は下の段の奥にあります。いちばん使いやすい場所をいちばん使わない器が占め、いちばん使う器がいちばん使いにくい場所に押し込まれている状態です。
まずは段を入れ替えます。毎日使う器を目の高さの段に移し、よそ行きの器はその下の段に移します。これだけで毎日の出し入れが楽になります。そのうえで、普通の日の夕食に、よそ行きの器を一度使ってみます。火曜日の夕食に特別な日のための器でいつものおかずを盛ると、何でもない日の夕食が少しだけ記憶に残る時間になります。使っているうちに割れてしまっても、それは器として役目を果たしたことです。
お弁当箱と子ども用食器
子どもが小学生の頃の小さなお弁当箱、中学生の頃の大きなお弁当箱、遠足用の水筒、プラスチックの茶碗や小さな箸。子どもが大人になって家を出ていても、毎朝お弁当を詰めた記憶が箱に残っています。全部を手放す必要はありません。思い出のお弁当箱を1つだけ選んで残し、あとは今の暮らしで使う分だけにします。残した1つは、子どもが帰省したときに「これ覚えてる?」と出して、卵焼きや運動会の話をするためのきっかけになります。プラスチックの子ども用食器は長く置くと傷みやすいので、手放すなら今が良い時期です。
お酒の器とグラス
ワイングラスが6脚、ビールのジョッキが4つ、徳利とお猪口のセット。家でお酒を飲むのが1人か2人なら、グラスは背が高く足が細く割れやすいため、洗うときも他の器と別に手で洗う手間がかかります。使う回数が少ないのに手間だけはかかる器です。グラスは実際に家で飲む人数と、年に数回の来客を合わせた数だけ残します。脚のないグラスなら、お酒にもお茶にも冷たいデザートにも使えます。徳利とお猪口も、お酒を飲まない家なら小さな花を挿したり薬味を入れたりする器として使えます。使い道が見つからないなら、次の持ち主に譲ることを考えます。
食器棚を軽くするための小さな順番
一度に全部を片付けようとすると、かえって疲れてしまいます。まずは、毎日使う器4つを目の高さの段に移すところから始めます。次に、扉に当たっている器を手前に置かないようにします。重い器は下の段に移し、扉には開き止めをつけておくと地震のときの飛び出しも防ぎやすくなります。
手放すかどうかは、「使っているかどうか」で判断します。もらったものだから、高かったから、思い出があるから、という理由だけで残すと、使わない器がまた棚の場所を取ります。使っている器だけを残すと、食器棚は自然と軽くなります。ただし、思い出の品を無理に手放す必要はありません。1つだけ残して、使う場所を決めるだけでも、毎日の出し入れは変わります。
食器棚の扉が閉まらないのは、器の数が多すぎるからではなく、使っていない器が使いやすい場所を占めているからかもしれません。毎日使う4つが取り出しやすくなれば、扉を片手で押さえることも、重ねた器がぶつかる音も減っていきます。完璧に減らすより、今日の食卓で使う器が気持ちよく取り出せることを目指すのが、続けやすい片付けの入り口です。