冬の暖房器具を押入れやベランダから出す前に、火災につながる小さな傷みや置き場所を確認しておくと、安心して使い始められます。製品事故の情報を集める国の機関の報告では、令和2年度からの5年間に主な暖房器具で596件の事故が寄せられ、その約8割が電気ストーブと石油ストーブでした。原因で最も多いのは故障ではなく、燃えるものが近くにあったことです。ここでは、灯油・本体・コード・周囲の順に、出したその日に確認したい点を整理します。
灯油とポリタンクは色と匂いで判断する
石油ストーブやタンクに去年の灯油が残ったままなら、まず中身を確認します。石油機器の業界団体は、灯油を翌シーズンへ持ち越さないよう呼びかけています。時間が経った灯油は火がつきにくく、燃えても部屋が温まりにくくなり、匂いや目の痛みの原因になります。芯のあるストーブでは芯に黒いタール状の汚れがこびりつき、器具そのものを傷めることもあります。
古い灯油の見分け方として、色と匂いが目安になります。新しい灯油はほとんど色がありません。黄色みが強い、底の方に水のような層が見える、ツンとした酸っぱい匂いがする場合は使わないでください。古い灯油に新しい灯油を足して薄める方法もありますが、傷んだ中身が元に戻るわけではなく、処分する量が増えるだけです。
灯油を入れるポリタンクも確認します。白い半透明のタンクは光を通すため、赤や青の灯油用タンクに比べて中身が傷みやすくなります。日の当たる場所や高温になるベランダ、雨のかかる場所に置いていたタンクは特に注意が必要です。蓋のゴム輪が硬くなって隙間ができていないかも見ておきましょう。蓋の部品だけならホームセンターで手に入ります。白いタンクを使っている場合は、中身ごと処分を検討するのが安全です。
石油暖房器具は製造年と置き場所で使い方を分ける
石油暖房機には、点検や交換の目安としておよそ8年という年数が業界団体から示されています。8年を過ぎるとすぐ壊れるという意味ではなく、部品の傷みによる事故が出始める時期です。本体の背面や底面にある銀色のシールに製造年が書かれているので、出す前に一度確認します。平成の年号が書いてあれば、すでに10年以上経っていることになります。
古い器具は、部品の保有期間が過ぎていると故障してからでは修理できない場合があります。直して使いたいなら、壊れる前にメーカーや販売店へ相談するのが現実的です。
年数だけで処分を決めるのではなく、置く場所で判断する方法もあります。寝室や一人で長く過ごす部屋で使うものは、年数が浅くても状態の良い器具を置く。反対に、昼間だけ目の届く台所で使うなら、点検して使い続ける選択もあります。買い替えるときは台数を増やさず、新しいものを1台買ったら古いものを1台手放す「入れ替え」を意識すると、押入れに使わない予備が増えずに済みます。
電気ストーブは火が見えない分、埃とコードを先に点検する
電気ストーブは炎が見えないため安全に思われがちですが、事故の件数では石油ストーブと並んで多い方です。表面は十分に高温になり、触れたものを焦がします。火が見えない分、そばに物を置くことへの警戒が薄れやすいことも理由の一つです。
出す前に確認したいのは、前面の網の中に埃が溜まっていないか、コードの付け根が硬くなったりひび割れたりしていないか、置いたときにぐらつかないかの3点です。埃は乾いた筆や掃除機のブラシで払い、濡らしたものは使わないでください。しまっている間に溜まった埃が燃えると、使い始めに焦げたような匂いがします。最初の1回は人がいる場所で短く運転し、様子を見るのが安心です。
細くて背の高い電気ストーブは倒れやすいため、倒れたときに自動で消える仕組みがあるかも説明書で確認しておきます。座った人の膝が当たるだけで動くものもあるので、置き場所は人の動線から外すのが基本です。
電気毛布とホットカーペットはコードの折れと収納方法を見直す
電気毛布やホットカーペットの事故は、コードの傷みと関係することが少なくありません。取扱説明書には、傷つけない、無理に曲げない、引っ張らない、ねじらない、重いものを乗せない、挟み込まない、電源コードを束ねたまま使わない、といった注意が並びます。ところが収納のとき、コードをぐるぐる巻いて本体で縛り、上に別のものを乗せて押入れにしまうことがあります。これが次に使うときの見えない傷になります。
畳むときは、接続する差し込み口が内側に来るようにし、コントローラーは本体に挟んでおくと、次のシーズンの状態が変わります。洗える製品は、手洗いなら40度以下、洗濯機なら毛布コースで洗濯ネットに入れる、ドラム式や乾燥機は使わない、ナフタリンのような防虫剤は使わないといった表示を守ります。電気毛布の上に湯たんぽを重ねるなど、他の暖房器具と一緒に使うことも説明書で禁じられています。
出したときに全体を手のひらで撫でて、中の線が折れて膨らみや硬い筋になっている箇所がないかも確認します。見つかったら、その一枚は今年で使い終わりにするのが安全です。
こたつはヒーターの埃と踏まれたコード、布団の厚みを見る
こたつを出すときは、天板の下のヒーターに埃が溜まっていないか、コードが足で踏まれて平たくなっている箇所がないかを確認します。こたつのコードは人の動線の上を通りやすく、家具の足に挟まれたり踏まれたりして、同じ場所が何度も潰れます。見えない傷になっていることがあるため、秋のうちに確認しておくと冬の間の匂いや事故を減らせます。網を外せる機種なら外して払い、外せない場合は乾いたブラシで掃除します。
こたつ布団も、長く使っていると裏の生地が薄くなり、ヒーターの熱が直接当たりやすくなります。中綿が寄って薄くなった布団は温かくないだけでなく、熱の逃げ場もなくします。買い替えるなら、本体より先に布団を新しくする方が効果的です。
器具の周囲に可燃物を置かない距離を決める
暖房器具の事故で最も多い原因は、故障や安物ではなく、燃えるものが近くにあったことです。洗濯物、カーテン、座布団、新聞、布団の端、買い物袋などがストーブのそばにあると、思わぬ火災につながります。製品事故の報告では、平成25年度からの5年間で暖房器具の事故1064件のうち770件が火災を伴い、96件で107人が亡くなりました。年齢が分かる死亡事故76件のうち54件が70代以上で、高齢の世代に集中していました。
この年代に多い背景として、寒がりになって器具に近づくこと、部屋の中に物が増えること、体が動きにくくなって危険に気づいてもすぐ対処できないことが考えられます。部屋干しの洗濯物は乾くにつれて軽くなり、風で動いてストーブに触れることがあるため、特に注意が必要です。同じ部屋で干すなら、倒れても届かない向きや場所に変えるだけで、新しい器具を買うより確実に事故を減らせます。
取扱説明書には器具ごとに離すべき距離が書かれています。出すときに一度確認し、冬の間はその範囲に物を置かないよう、床に目印をつけておくのも一つの方法です。
延長コードとタコ足配線は暖房器具に向かない
電気ストーブやホットカーペットなど消費電力の大きい暖房器具に、延長コードやタコ足配線を使うのは避けます。ある石油機器メーカーは問い合わせへの回答として、電気ストーブに延長コードは使用できないと案内しています。火災や感電、電源プラグの異常な発熱や変形の原因になるためです。暖房器具は壁のコンセントに直接差し、複数の暖房器具を同じテーブルタップにまとめないようにします。プラグが熱を持っていたり、差し込み口が緩んでいたりしないかも、使い始めに確認しておきましょう。
暖房器具の点検は、完璧を目指す必要はありません。灯油の色を見る、製造年を確認する、コードを撫でる、周囲の物をどかす。このうち一つでも、出す前に行っておくと冬の暮らしの安心が変わります。古い灯油や使わなくなった器具の処分方法は、自治体や購入店に確認してください。