夕方6時に夕食を終える。それだけの変更が、眠っている間の体の中で何を変えるのか。健康診断で血糖値や血圧の高めを指摘された54歳の会社員を仮の例に、研究の知見とその限界をたどってみる。
同じ食事でも、時刻が違うと夜の血糖の上がり方が変わる
京都の研究チームによる小規模な試験では、20代の健康な女性4人が同じ定食を18時と21時に食べ比べた。21時の夕食では食後の血糖値の山が18時のおよそ1.7倍になり、夜11時から翌朝8時までの上昇は2倍を超えた。食べたものは同じで、違ったのは時刻だけだった。
70代の糖尿病患者8人を対象にした別の試験でも、21時の夕食は18時と比べて食後2時間の血糖値の上昇が約2倍になり、血糖を下げるインスリンも多く必要になった。若くて健康な人でも、遅い夕食の分だけ夜の内臓が働き続けることになる。ただし、どちらも数日間の試験であり、内臓脂肪の量そのものを測ったものではない。
18時が難しい日は「分け食」で差を縮める
現実には、会議や帰宅時間の都合で18時に家にいるのが難しい日もある。研究では、18時にご飯と野菜を先に食べ、21時に主菜と野菜を食べる「分け食」も試されている。この方法では、21時にまとめて食べた日より夜の血糖の上がり方が大きく下がった。70代の糖尿病患者の試験でも、分け食によって食後の血糖値とインスリンの反応が改善したという。
仮の例の会社員は、会議のある日だけ18時に会社でおにぎりを一つ食べ、帰宅後は焼き魚と野菜のおかずだけにしてご飯を足さないようにした。食事の全体量を大きく変えずに、炭水化物を先に済ませる形だ。内臓にたとえるなら、遅い時間の客の荷物を少なくするようなものだ。
数週間続けた先に見えてくる朝の血圧の変化
5週間続けたアメリカの小規模な研究では、前糖尿病の男性8人(平均56歳)が、朝から15時までに食事を終える期間と、12時間かけて食べる期間を比較した。どちらの期間も体重が変わらないよう食事量は管理されていた。早く食べ終える期間ではインスリンの効きが良くなり、食後の血糖反応も改善した。朝の血圧は上11、下10下がった。体重はほとんど変わっていないのに、朝の血圧が下がったことになる。
ただし参加者は8人だけで、最後の食事も15時とかなり早い。18時でも同じだけ下がるとは言い切れない。方向が同じだと示唆されるにすぎない。
時刻は入り口、量が本体
14週間のアメリカの研究では、肥満のある大人90人が2つのグループに分かれた。一方は朝7時から15時までに食べ、もう一方は12時間以上かけて食べた。どちらも同じように食べる量を減らす指導を受けた。14週間後、早く食べ終えたグループは体重がさらに2.3キロ多く減り、下の血圧も4ほど多く下がった。ただし体脂肪の減り方の差は統計的にははっきりしなかった。研究者は、この体重差を1日あたり100キロカロリー少なく食べたのと同じくらいの効果と見積もっている。
つまり、時刻そのものが脂肪を大きく減らすというより、夕食が早いと夜のつまみが減り、1日の総摂取量が自然に減りやすい。その積み重ねが体重や血圧に現れると考えられる。参加者の8割は女性で平均年齢は43歳と、54歳の男性とは異なる点も留意したい。
内臓脂肪への影響は、直接の証拠より静かな積み重ね
夕方18時に夕食を終えるだけで内臓脂肪を直接測った研究は、まだ見当たらない。分かっているのは、早く食べ終えると夜の血糖処理が早く片付くこと、夜の間食が減りやすいことだ。内臓脂肪は、その減った分の積み重ねで少しずつ使われていく可能性がある。目に見える違いが出るのは、何週間も続けたあとだろう。一夜で変わるものではない。
始める前に気をつけたい人と、現実的な始め方
- 血糖値を下げる薬やインスリンを使っている人は、夕食の時刻を大きく変える前に主治医へ相談が必要。夜間から明け方にかけて血糖値が下がりすぎることがあるためだ。
- 血圧の薬を夕食後に飲んでいる人も、飲む時刻を確認しておくと安心。
- 夜勤のある人は、18時という時刻にこだわらず、起きている時間の前半に多めに食べる形に置き換える。
現実的な始め方としては、まず夕食を食べ終えた時刻を1週間だけ手帳にメモしてみる。毎晩21時を過ぎているなら、20時半、20時と30分ずつ早めていく。早められない日は、18時にご飯だけ先に食べる分け食に切り替える。お酒を飲むなら、夕食の時間の中で終える本数をあらかじめ決めておくことも大切だ。
夕食を18時に終えることは、派手な変化を約束する習慣ではない。それでも、毎晩の内臓の仕事を早く終わらせ、朝の数字に小さな変化をもたらす可能性がある。研究が示すのはあくまで平均的な方向で、一人ひとりへの保証ではない。無理のない範囲で時刻を少しずつ早め、自分の体の反応を記録しながら続けられるかどうか。それがまず確かめるべきことだろう。