出会いの装置が止まった分だけ、結婚が減った
2005年に日本の人口研究者たちが、1970年代から30年間の婚姻率の低下を出会い方ごとに分けて調べた分析がある。それによると、低下のおよそ5割は見合い結婚の減少で、4割近くは職場結婚の減少で説明できた。学校や友人、街中で知り合う結婚が起きる確率は、この40年間ほとんど変わっていない。
つまり、恋愛が下手になったわけではない。見合いと職場という二つの出会いの装置が止まった分だけ、結婚が減ったという見方だ。これは一つの研究に基づく分析であり、すべてを説明するものではないが、数字の変化を理解する手がかりになる。
職場結婚はその後も減り続け、2021年までの3年間に結婚した夫婦では21.4%と、前の3年間の28.2%からさらに下がった。代わりに伸びたのがSNSやアプリ経由の出会いで、2019年から21年の結婚では15.1%と、見合いの9.8%を上回っている。ただし、この時期は感染症の影響で結婚そのものが減っており、割合の上昇がそのまま出会いの増加を意味するとは限らない。
「結婚したい」のに、恋人がいない
未婚の18〜34歳に「いずれ結婚するつもりですか」と聞く調査は、1982年から同じ形で続けられている。1982年には男性95.9%、女性94.2%が「はい」と答えていた。2021年には男性81.4%、女性84.3%と、依然として8割を超える。
ところが、同じ人たちに恋人や婚約者がいるかを聞くと、男性21.1%、女性27.8%しかいない。男性は2005年の27.1%、女性は2002年の37.1%を頂点に下がり続けている。交際相手が全くいない人は男性72.2%、女性64.2%で、そのうち特に交際を望んでいない人が未婚者全体の3人に1人いる。
この三つの数字——結婚するつもりが8割、恋人がいるのが2〜3割、交際を望まないのが3割——は、同じ人たちの答えだ。結婚したい気持ちと、実際の出会いや交際との間に、大きな隙間がある。
独身でいる理由と、結婚に求めるものの変化
25〜34歳が独身でいる理由の一位は、男女とも「適当な相手にまだ巡り合わないから」だ。男性で約48%、女性で約48.1%。「異性とうまく付き合えないから」は2005年以降上がり続け、「趣味や娯楽を楽しみたいから」も増えている。
独身でいる利点として最も多く挙げられるのは「行動や生き方が自由」で、男性70.6%、女性78.7%と増え続けている。一方、結婚の利点では、長く一位だった「自分の子供や家族を持てる」が減り、男性では「精神的な安らぎの場が得られる」が初めて上回った。女性でも「子供や家族」は39.4%と、前の調査から10ポイント近く減っている。
結婚したいけれど相手に出会わない。出会っても、自由を手放すほどの理由が見つからない。その天秤の片方には、経済的な不安や、仕事と家事・育児の負担が見え隠れする。
経済力と家事分担、それぞれの重さ
30〜34歳の男性を働き方で分けると、2017年時点で正規職員の59.0%に配偶者がいるのに対し、非正規では22.3%だった。2022年の調査でも、正社員53.7%に対して非典型雇用は15.3%と、差はむしろ広がっている。年収で並べると、30代前半の男性では年収300万円未満の既婚率が1〜3割なのに対し、400万円台で55.7%、500万円台で65.9%と階段状に上がる。
ただし、これはお金があれば結婚できるという単純な話ではない。同じ調査で、高い年収の層でも5年前より既婚率は下がっていた。収入だけでは説明できない何かが重なっている。
相手に何を求めるかも変わってきた。1992年以来、女性が相手の学歴・職業・経済力を重視する傾向は変わっていない。変わったのは男性で、妻となる相手に経済力を求める男性は1992年の26.7%から2021年には48.2%へほぼ倍になった。一方、女性は夫となる相手に家事・育児の能力や姿勢を求めるようになり、1997年の43.6%から2021年には70.2%に増えている。
一つの収入で家族を養う前提が崩れ、二人で稼ぎ、二人で家事をする形へ。結婚の中身そのものが変わりつつある。
選ぶ時間が伸びると、何が起きるか
平均初婚年齢は1970年に夫26.9歳、妻24.2歳だったが、2022年には夫31.1歳、妻29.7歳。妻の年齢は半世紀で5歳以上遅くなった。30歳時点で未婚の女性は1980年の11.3%から2020年には40.5%に増えている。30歳はかつて結婚した後の年齢だったが、今はまだ選んでいる途中の年齢だ。
選ぶ時間が伸びると、選択肢の多さに迷うこともある。2000年にアメリカの研究者がスーパーの試食台にジャムを並べた実験では、24種類の台の方が6種類より多くの客が立ち止まったが、実際に買った人は24種類で3%、6種類で30%だった。選択肢が多いほど人は選べなくなる、という報告だ。ただし、その後の多くの実験をまとめると、この効果は平均ではほぼゼロだったという指摘もあり、どんな場面で起きるかはまだ調べられている途中だ。
出会いの場でも、短時間で次々と相手に会うスピードデートの記録では、会う相手が多いほど、職業や学歴のように知るのに時間がかかることよりも、年齢や体重のようにすぐ分かることで相手を選ぶ傾向が見られた。これは会場での記録であり、画面上で同じことが起きるかは別に確かめる必要がある。それでも、選ぶ相手が増えるほど見るものが浅くなる可能性は、心に留めておきたい。
条件の枠を狭めているのは誰か
日本の調査では、女性が自分と同じかそれ以上の収入の相手を望む傾向が30年間変わらない。女性の学歴と収入が上がれば、条件に合う相手の数は計算上減っていく。この枠を狭めているのは誰なのか。2005年にアメリカと日本の社会学者が示した説では、日本では学歴の高い女性ほど結婚が減っていた。そして男性が妻に経済力を求めるようになったのは、この狭い枠を緩める向きの変化だという。
内閣府の調査で、積極的に結婚したいと思わない理由を聞くと、女性で多いのは「仕事も家事も育児も介護も背負うことになるから」38.6%、「苗字が変わるのが嫌」25.6%。男性で多いのは「結婚生活を送る経済力がない」36.0%。女性は背負うものの重さを、男性は支える力の不足を、それぞれ見ている。
日本だけの道ではない
隣の韓国では2023年に一人の女性が生涯に生む子どもの数が0.72人。中国では一年間に結婚したカップルの数が2013年の1347万組から2024年には610万組へ、11年で半分以下になった。急な減り方の理由は国ごとに違うが、見合いや紹介の仕組みが薄れ、都市で働く若い人が増えた点は日本と重なる。
日本と韓国だけが違う数字もあるが、その先を急いで結論づける必要はない。今見えているのは、結婚しない人が増えたのではなく、結婚を支えてきた仕組みが変わり、その新しい形がまだ定まっていない途中の景色だ。
「結婚したいのに、出会いがない」という声の背景には、個人の努力不足ではなく、社会の装置の変化がある。見合いと職場という二つの出会いの場が静かに役割を終え、SNSやアプリがその一部を担い始めたが、まだ十分に代替できていない。その間にも、結婚に求める条件は複雑になり、選ぶ時間は長くなっている。
結婚を選ぶか選ばないかは、一人ひとりの手に残された問いだ。ただ、その問いの前に置かれた選択肢の数や、天秤に乗せるものの重さは、かつてとは少し違っている。友人との会話で聞いた「出会いがない」という言葉を、単なる個人の事情として片付けずに、社会の変化として眺めてみると、また違った景色が見えてくるかもしれない。