「週に2日だけ食事をぐっと減らせば、毎日我慢するより内臓脂肪がよく減る」。そんな期待から5:2断食を選ぶ人は少なくない。たとえば、55歳の会社員が健康診断で内臓脂肪と肝臓の脂肪を指摘され、毎日少しずつ食べる量を減らす方法を試したものの、仕事の付き合いが続かず3週間で断念したとする。次に選んだのが、週のうち5日は普段どおり食べ、残り2日だけ1日の食事量を大きく落とす5:2という食べ方だった。小食日の朝は味噌汁とゆで卵、夜は焼き魚と野菜の小鉢、昼はお茶だけ。この形を続けた先に、内臓では何が起きるのか。
先に答えを示しておくと、内臓脂肪も肝臓の脂肪も、確かに減っていく。ただし、その減り方は毎日少しずつ食事を減らす方法とほぼ同じだ。違いが出るのは、小食日の空腹の強さ、翌朝の血糖値、筋肉を守れるかどうか、そして何より続けやすさにある。
小食日の空腹は、その日限りの波
5:2では、時間ではなく曜日で食べる量を開ける。男性なら小食日は1日およそ600kcalが目安とされる。16時間断食のように毎日同じ時間帯を空けるのではなく、月曜と木曜のように日を空けて設けるのが一般的だ。
気になるのは、その日の空腹がどこまで強いかだろう。ノルウェーの研究では、太り気味の112人が5:2か毎日少しずつ減らす方法のどちらかを1年続けた。空腹の強さを10点満点で答えてもらうと、5:2は4.7、毎日減らす方法は3.6だった。我慢できないほどではないが、5:2のほうが空腹を感じやすい。ドイツの研究でも、5:2を行った約50人のうち5人が小食日に寒さやだるさ、軽い頭痛を感じ、2人が集中しにくいと答えた。いずれも小食日だけの症状で、大きな問題にはなっていない。
田んぼにたとえるなら、水を落とす日は表面が乾いてひびが入りやすい。でも、翌日に水を入れればひびは消える。空腹のつらさも、多くの人にとってはその日限りの波で済むようだ。
翌日の食べすぎで帳消しになるか
小食日の翌朝、反動で食べすぎてしまうのではないか。イギリスの研究では、太り気味の成人が1日だけ食事量を4分の1に減らし、その翌日から2日間は好きなだけ食べた。すると、翌日に多少多く食べても、減らした分をすべて取り返すほどではなかった。
ただし、翌朝の体には注意したい変化もある。同じ研究では、翌朝の食後の中性脂肪の上がり方は約6割小さくなった一方、食後の血糖値は約76%高く上がる傾向が見られた。体が脂肪を使う側に寄り、糖を受け取る準備がまだ戻り切っていないのかもしれない。これは平均36歳の太り気味の人が1日だけ試したときの結果で、5:2を長く続けた場合に翌朝の血糖値がどうなるかははっきりしていない。それでも、小食日の翌朝にご飯を一気に増やすより、味噌汁などからゆっくり始めるのは理にかなっている。
内臓脂肪と肝臓の脂肪は、毎日減らすのと同じだけ減る
ここが本題だ。ドイツの研究では、35歳から65歳の太り気味の150人を、5:2、毎日少しずつ減らす方法、特に減らさない方法の3群に分け、お腹の内側の脂肪と肝臓の脂肪を画像で直接測った。3か月後の体重は5:2が約7%、毎日減らす方法が約5%減り、5:2のほうがやや大きく見えたが、この差は偶然でも出うる範囲だった。1年後にはどちらも約5%減で並んだ。内臓脂肪も体重とほぼ同じ割合で減り、どの時点でも2つの方法に差はなかった。肝臓の脂肪は3か月で5:2が約37%、毎日減らす方法が約35%減り、こちらもほとんど同じだった。
スウェーデンで脂肪肝と診断された74人を12週間追った研究でも、5:2のグループは体重が平均7kgあまり減り、肝臓の脂肪の割合は約6ポイント下がった。一般的な助言だけのグループの約4ポイントよりやや大きいが、こちらも劇的な差ではない。つまり、内臓脂肪や肝臓の脂肪を減らしていたのは「2日だけ減らす」という形そのものより、1週間で入れていた総エネルギーの量だった可能性が高い。
筋肉と続けやすさは、5:2特有の問題ではない
50代を過ぎると、食事量を減らしたときに筋肉まで落ちないか心配になる。オーストラリアの研究では、平均61歳の2型糖尿病の人137人が5:2か毎日減らす方法を1年間続けた。減った体重は5:2が約7kg、毎日減らす方法が約5kgで、差は明確ではなかった。どちらの方法でも、減った体重の約3割は筋肉を含む脂肪以外の部分だった。5:2だから特別に筋肉が落ちるわけではなく、食べる量が減ればどちらの方法でも筋肉は一緒に減りやすい。
別のオーストラリアの研究では、食事制限に週2回の筋トレと十分なタンパク質を組み合わせたところ、5:2でも毎日減らす方法でも体脂肪は約24%減り、筋肉を含む部分は約4%増えた。ただし参加者は18歳から45歳で、50代以上で同じになるかは分かっていない。小食日でも卵や魚のタンパク質をゼロにしないこと、そして筋トレを続けることが、筋肉を守る現実的な条件になる。
続けやすさには、はっきりした差が出た。ドイツの研究で2年目まで追いかけると、1年目から2年目にかけて「ほとんど続けていない」と答えた人は5:2で約7割、毎日減らす方法で約3割だった。体重の変化に差はなくても、5:2のほうが長く続けるのが難しかったのだ。小食日を飛ばした週があっても、次の週から戻ることだけを決めておく、といった小さな仕組みがいる。
最後に残るのは、暮らしとの相性
紹介した研究の多くは欧米やオーストラリアの参加者で、日本の50代・60代の男性ではありません。対象も太り気味の人が中心で、痩せている人で同じように変わるかは分からない。内臓脂肪や肝臓の脂肪を画像で確かめた期間も長くて1年ほどまでだ。数字は参加者の平均であって、個人の結果を約束するものではない。
血糖値を下げる薬を使っている人は、小食日に血糖値が下がりすぎることがある。オーストラリアの研究では、そうした薬を使う人の約35%で最初の2週間に血糖値が乱れた。自己判断で始めず、主治医と薬の量を相談してからにしたい。糖尿病で通院している人や、年齢とともに痩せてきた人も同じだ。
5:2と毎日少しずつ減らす方法。内臓にとっての結果はほとんど同じだった。違うのは、空腹の波の大きさ、翌朝の血糖値への注意、筋肉を守るための工夫、そしてどちらが自分の生活に合うかだ。平日は忙しく、2日だけ割り切るほうが楽な人には5:2が合うかもしれない。反対に、毎日少しずつ控えるほうが空腹の波が小さくて楽だという人もいる。どちらを選んでも、内臓脂肪と肝臓の脂肪が減っていく道筋は同じ一本だ。選ぶ基準は「どちらがより効くか」ではなく、「どちらの空腹や手間を、自分の暮らしの中で引き受けられるか」にある。