空腹のまま寝ると内臓脂肪に起こること|夜7時から朝7時までの代謝と、眠れない夜の対処
睡眠と内臓脂肪

空腹のまま寝ると内臓脂肪に起こること|夜7時から朝7時までの代謝と、眠れない夜の対処

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朝の0.7kgは、内臓脂肪が減ったサインではない

夜7時に夕食を終え、いつもの夜食をやめて布団に入る。翌朝、体重計に乗ると前夜より0.7kg軽い。たとえば58歳の高橋さんという架空の例を思い浮かべると、この数字はうれしくなる。ただし、この0.7kgの大半は内臓脂肪ではない。呼吸や汗で出た水分と、お腹の中のものが減った分が主だ。

では、空腹のまま眠ると内臓脂肪には何が起きているのか。先に答えを示すと、眠っている間、体が使う燃料の内訳は少しだけ脂肪側に寄る。ただし、使うエネルギー全体の量が増えるわけではない。そして、眠れないほどの空腹は翌日の食欲を通して逆に働く。眠れる程度の空腹なら味方、眠れないほどの空腹なら敵。この境目が今回の主題だ。

雪かきにたとえると、夜の空腹の意味が見えてくる

内臓脂肪を、道の脇に積もった古い雪だと考える。食事は新しく降る雪。除雪車は新しい雪から片付ける。食事の直後は、入ってきた糖を優先して使うため、古い雪=内臓脂肪にはほとんど手が回らない。夕食後しばらくは、体が新しい雪の処理で手いっぱいなのだ。

夕食から4時間半ほど経ち、新しい雪の片付けがほぼ終わると、除雪車は古い雪にも手を回し始める。脂肪細胞から脂肪酸が血液へ出て、筋肉や心臓で使われていく。ただし、出てきた脂肪酸は使われなければ再び脂肪に戻ることもある。出ていくことと、実際に使われて減ることは同じではない。

夜10時半、空腹の波はいつもの時刻にやってくる

夜食をやめたばかりの夜、夜10時半ごろにお腹が鳴ることがある。体がいつもの食事時刻を覚えているためだ。空腹を知らせるホルモンは、習慣になっている時刻に合わせて高まりやすい。空腹は強まり続けるものではなく、波のように来ては引く。温かいお茶を一杯飲んで15分ほど待つと、波が一旦引くこともある。

食事の時刻を早めると、この空腹の波がなだらかになるという小規模な研究がある。体重がやや多めの大人11人が、同じ食事量で夕食を午後2時に終える期間と夜8時に終える期間を4日ずつ過ごした。早く食べ終える期間のほうが空腹の波が穏やかで、空腹ホルモンも低かった。11人・4日間の研究なので、内臓脂肪の量の変化まではわからない。それでも、夜の空腹の向きを示してはいる。

夜11時半、ようやく古い雪へ手が回る

夕食から4時間半が経ち、布団に入るころ、体はようやく内臓脂肪を使う時間帯に入る。除雪車が古い雪を少しずつ削り始めるイメージだ。睡眠中は筋肉がほとんど動かず、使うエネルギー自体は少ない。除雪車も全速力ではなく、静かな速さで古い雪を削っていく。

ここで重要なのは、燃やす量が増えるのではなく、燃やすものの中身が脂肪側に寄るということだ。同じ11人の研究では、夕食を早く終えた期間に脂肪を使う割合が増えた一方、1日に使うエネルギー総量はほとんど変わらなかった。一晩で内臓脂肪が大きく減るわけではない。内臓脂肪を減らす本体は、やめた夜食の分のエネルギーにある。

遅い夜食が起こす逆回転

もし夜11時にカップ麺を食べていたら、除雪車が古い雪へ向かおうとしたところへ新しい雪がどさっと降ってくる。食事の時刻だけを遅らせると何が起こるか、ボストンで行われた研究がある。体重がやや多めの大人16人が、同じ食事を早い時間割りと、それぞれ4時間ほど遅らせた時間割りで食べた。食べる量も運動も睡眠も光も揃えた条件だ。

遅い時間割りでは空腹を感じる確率がおよそ2倍になり、起きている間に使うエネルギーは1日あたり約60kcal少なかった。さらに、お腹の皮下脂肪を少し取って調べると、脂肪を分解する方向より溜め込む方向に遺伝子の働きが傾いていた。調べたのは皮下脂肪で内臓脂肪そのものではないが、遅い食事が同じお腹の脂肪に逆向きの変化を起こしていたことになる。

眠れない空腹は、翌日の食欲と減る中身を変える

空腹が気になって眠れず、結局4時間ほどしか眠れなかった夜を考える。睡眠を4時間に削ると翌日の食欲はどう変わるか、健康な若い男性を対象にした研究がある。4時間睡眠の後は空腹ホルモンが28%増え、満腹を知らせるホルモンは18%減った。空腹感そのものも24%強くなり、甘いものやご飯、パンへの欲求は3〜4割以上強まった。参加者は平均22歳で、50代で同じ結果が出るかはこの研究からはわからない。

睡眠の長さと脂肪の減り方を比べた別の研究では、平均41歳でやや太り気味の大人10人が2週間、同じように食事を減らした。一晩8時間半眠った期間は体脂肪が1.4kg減ったのに対し、5時間半の期間は0.6kgにとどまった。その代わり、脂肪以外の筋肉などを含む部分がより多く減った。睡眠が短いと、体は脂肪を使う割合を減らす方向に傾く。同じだけ食事を減らしても、減るものの中身が悪くなる。

眠れない夜の「小さな雪」という選択肢

では、眠れないほどお腹が空いた夜はどうすればいいのか。寝る30分前に小さな飲み物を取ってもらった実験がある。体重が多めで運動習慣のない女性44人が、たんぱく質か糖質の飲み物を飲んだところ、翌朝の満腹感が増え、食べたい気持ちは下がった。ただし、インスリンはどのグループでも少し上がり、たんぱく質と糖質の差ははっきりしなかった。何か月も続けたときに体脂肪がどうなるかはまだわかっていない。

高橋さんの例では、眠れないほど空腹な夜だけコップ一杯の牛乳にすると決めた。カップ麺に比べれば量は少なく、除雪車がすぐ片付けられる小さな雪だ。ただし、血糖値を下げる薬やインスリンを使っている人は、空腹のまま寝ると夜中から明け方にかけて低血糖になる危険がある。夜食をやめる前に、薬の時間や量について主治医と話しておくほうが安心だ。胃が弱く空腹で胃が痛む人も、無理に我慢を重ねないほうがいい。

数字と向きを、どう受け取るか

朝の体重は水分だけでも大きく上下する。1日ごとの数字ではなく、1週間の平均で見るのが変化を捉える近道だ。健康診断の数値が変わってくるのは、こうした夜を何週間も重ねた後になる。週の平均が少しずつ下がっていれば、夜の積み重ねが届いている印だ。

空腹のまま寝る習慣を何か月も続けて内臓脂肪を直接測った研究はまだない。紹介した研究も、数日から2週間ほどで、日本の50代の人たちを対象にしたものではない。だから、この話は体の中の向きを示すものとして受け取るのが適切だ。空腹をただ我慢するのではなく、眠れる範囲で付き合う。夜食をやめるのが最初の一歩で、いきなり1日1食を目指すより、夜食のない夜を1週間続けるほうが現実的だ。

眠れる程度の空腹は、夜の間に体を脂肪側へ少し傾ける。けれど、それだけで内臓脂肪が大きく減るわけではなく、眠れないほどの我慢は翌日の食欲で帳尻を合わせようとする。自分の眠りと相談しながら、夜食の代わりを決めておくことが、続けるための分かれ道になる。

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