体重が落ちたのに、足がなんだか細くなった気がする。毎日40分歩き、食事も減らしているのに、減ったのが脂肪だけでないのではと不安になる。50歳を過ぎてからの減量では、この感覚がつきまとうことがある。
結論から言えば、食事を減らすだけで痩せると、減った体重のおよそ4分の1は脂肪以外の重さだと考えられている。ただし、この割合は決まった運命ではなく、体の使い方と食事の中身で半分ほどに抑えられる。
減った体重の4分の1は脂肪ではない
海外の研究をまとめた検証では、食事制限だけで体重を落とした場合、減った重さの約4分の1が脂肪以外とされている。10kg減れば2.5kgほど、5kgでも1kg強は脂肪以外だ。これには筋肉だけでなく水分や内臓、骨も含まれる。年齢が高い人や体を動かさない人ほど、この割合は大きくなりやすい。
50歳以上で太り気味の人を対象にした52の研究のまとめでは、食事だけを減らしたグループの8割以上で、減った体重の15%以上が脂肪以外だった。一方、歩くような有酸素運動を組み合わせたグループでは、その割合が約4割にとどまった。同じように体重が減っても、脂肪以外を守る力は変わってくる。
これを家の引っ越しにたとえると分かりやすい。減らしたいのは押入れの奥で眠っている使わない荷物、つまり脂肪。一方で、毎日座る椅子や机は太ももや背中の筋肉にあたる。体の中の「引っ越し作業員」は、どれを残せばいいか言われなければ手近なものから運び出してしまう。使っている家具に「使用中」の札を貼るのが運動、傷んだ家具に部品を届けるのがタンパク質だ。
なお、ここで扱うのは自分で決めて体重を減らしている場合の話。何も変えていないのに体重が減り続けるときは、まず医療機関で見てもらいたい。血糖値や血圧の薬を飲んでいる人は、体重が減ると同じ量が多すぎることもある。腎臓の病気で食事指導を受けている人は、タンパク質を自分だけで増やさないこと。65歳を過ぎた人やもともと痩せている人は、これ以上痩せるより今ある筋肉を減らさない方が大事な場合が多い。
筋肉が先に落ちるわけではない
「脂肪より先に筋肉から減っていく」という心配も耳にする。最初の数日で体重が急に落ちるのは、主に水分と糖の蓄えが出ていくためで、筋肉が崩れた量ではない。その後は脂肪と脂肪以外の重さが同時に減っていく。順番として筋肉が先に全部なくなるわけではないが、同時に減る中で脂肪以外の割合は人によって大きく違う。その分かれ目になるのが運動とタンパク質だ。
「痩せたら太りやすい体になるのでは」という不安については、体のエネルギー節約は減量中が最も大きく、体重が落ち着くと小さくなっていく傾向がある。太った大人71人が1日1000kcalで8週間、平均14kg減らした研究では、減量直後は安静時の消費が予測より約92kcal低かったが、4週間体重を保つと約38kcalに縮み、1年後まで追跡できた45人では差がほとんど見られなくなった。ただし、この研究の参加者は平均45歳で、50代以降にそのまま当てはまるとは限らない。
1日1食でも3食でも、分かれ目はタンパク質
「10年以上1日1食で筋肉も落ちない」という人もいれば、「77歳で1回に必要な栄養を食べる自信がないから3回に分けている」という人もいる。どちらも自分の体を見ている点では同じで、大事なのは1日の総量と1回ごとのタンパク質量だ。
50歳以上で食事を減らして痩せた人の比較試験20本をまとめた分析では、体重1kgあたり1日1g以上のタンパク質をとったグループは、少ないグループより脂肪以外の重さの減りが約0.8kg少なかった。脂肪の減りもやや大きい傾向があった。体重70kgの人なら1日70g以上。卵1個と豆腐半丁、焼き魚一切れを足してもまだ半分ほどにしかならない。焼き魚に納豆と卵、豆腐入りの味噌汁を添えるような定食を意識する必要がある。
1日1食で筋肉が落ちないという人は、その1回で十分なタンパク質をとれているのだろう。一方、1回では食べきれない人は、回数を減らさず分けて食べるのが合っている。1度に部品を届けられる家と、分けて届けた方がいい家がある、という違いだ。
筋肉に負荷をかけると何が変わるか
歩くだけでは太ももへの刺激は軽い。65歳以上で太り気味の160人を対象に、食事指導と週3回の運動を半年続けた試験では、どの運動グループも体重は約9%減った。しかし脂肪以外の重さの減少は、有酸素運動だけのグループで約5%、筋肉に負荷をかけるグループで約2%、両方を行うグループで約3%だった。足の筋力は負荷をかけた2つのグループで約2割増え、有酸素だけのグループでは約4%にとどまった。体の動きの総合点が最も伸びたのは、有酸素と筋肉への負荷を両方行ったグループだった。
同じだけ痩せても、使っている家具に「使用中」の札を貼っておけば、運び出されずに残る。いきなり同じ量をやる必要はない。家なら、椅子から立ってゆっくり座る、階段を1段ずつ登るといった動きから始められる。歩く習慣がある人は、それを続けたまま週に数回、足に重さを感じる動きを足す形でいい。試験でも軽い重さから始め、数か月かけて少しずつ重くしていた。登り坂や駅の階段を使うのも小さな札の1枚になる。膝や腰に痛みがある人、心臓の病気がある人は始める前に主治医と内容を決めたい。
椅子から立ち上がる回数で確かめる
筋肉が守れているかは体重の数字だけでは分からない。手がかりになるのが、30秒間に椅子から何回立てるかという簡単な検査だ。腕を胸の前で組み、壁際に置いた安定した椅子を使う。月に1度、同じ椅子で数えて手帳に書いておく。体重が減ってもこの回数が保たれていれば、足の筋肉はある程度守れている目安になる。逆に体重と一緒に回数も減っていくなら、タンパク質や足の運動が足りていない合図かもしれない。そのときは食事の量をさらに減らすより、先にその2つを見直す。
ただし、こうした数字は海外の研究が中心で、日本人での幅は分からない。運動の試験は65歳以上の太り気味の人たちが対象で、50代にそのまま当てはまるかは分からない。脂肪以外の重さには水分や内臓も含まれ、筋肉そのものを測ったわけではない。1日1食や16時間断食で痩せたときに同じ割合になるかは、まだ十分に調べられていない。
覚えておきたいのは、食事だけなら脂肪以外が約4分の1、タンパク質は体重1kgあたり1日1g以上、筋肉への負荷は週3回で脂肪以外の減りが半分ほどになるという3つの目安だ。押入れは開けて、椅子と机は残す。50歳を過ぎてからの減量は、荷物を減らす作業であると同時に、残す家具を選ぶ作業でもある。