失敗しても前に進める目標のつくり方|結果目標の下に学習目標を置く習慣
目標設定

失敗しても前に進める目標のつくり方|結果目標の下に学習目標を置く習慣

目標を立てたのに、できなかった日が「自分の価値の証明」になって苦しくなる。そんなときは、目標を捨てるのではなく、目標の置き方を変える余地があります。この記事では、失敗を「自分への判決」ではなく「次の方法を探す情報」に変える考え方と、今日から試せる3つの工夫を整理します。

なぜ目標が苦しくなるのか

1988年に報告された心理学の実験があります。小学5年生の子どもたちに、図形の規則を見つける課題を出し、大きく2つの目標に分けました。一方は「自分の能力が高いことを示す」、もう一方は「この課題から新しいことを学ぶ」です。その後、研究者はどんな答えにも「間違いです」と伝え、必ず失敗する状況を作りました。

すると、「能力を示すこと」が目標だった子どもたちは、失敗が続くほど解き方が雑になり、課題を嫌がる反応が増えました。一方、「学ぶこと」が目標だった子どもたちは、同じように失敗しても別の解き方を探し続け、投げやりな発言はごく少数でした。年齢も問題も失敗の回数も同じ。違ったのは、その課題で何を目指していたかだけです。

ここから見えてくるのは、目標は未来の到着点であると同時に、いま起きている出来事の意味を決める採点基準でもあるということです。能力の証明が目標なら、失敗は「自分はできない」という判決になります。学ぶことが目標なら、失敗は「この方法は違った」という情報になります。

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結果目標の下に学習目標を置く

「プレゼンを成功させる」「転職を成功させる」といった結果目標をやめる必要はありません。問題は、結果が出た日しか達成できない目標だけを持っていると、うまくいかなかった日がすべて敗北になることです。

そこで、結果目標の下に、失敗しても残る学習目標を置きます。

  • プレゼンを成功させる → 聞き手が迷う場所を1つ発見する
  • 転職に成功する → 自分が力を発揮できる職場の条件を知る
  • 人間関係を良くする → 不満を攻撃せずに伝える方法を身につける

たとえば面接に落ちても、「自分に合わない環境」や「伝わりにくかった経験」を知ることはできます。相手の反応は選べませんが、自分が育てる能力は選べます。良い目標とは、成功した日だけでなく、うまくいかなかった日にも前に進める目標です。

複数の研究をまとめた2021年の分析では、能力を伸ばし課題を習得することを目指す目標は、全体として課題の成績を高めやすいという報告もあります。ただし、結果を求めること自体が悪いわけではありません。試合の勝敗や会社の売上、試験の点数は現実を測る情報です。注意したいのは、その数字を「人間としての自分の価値」と結びつけることです。

避ける目標を行動に翻訳する

目標には、望む状態へ近づく目標と、望ましくない状態を避ける目標があります。「仕事を理解する」「体力をつける」は近づく目標、「失敗しない」「嫌われない」「落ち込まない」は避ける目標です。

避ける目標が悪いわけではありません。事故を防ぐ、危険な相手から離れるといった回避は必要です。ただ、人生の中心が回避目標で埋まると、目標を確認するたびに避けたいものを思い出し、嫌われる兆候や失敗の可能性を監視し続けることになります。回避目標には明確な達成地点がなく、成功しても安心を得にくいのです。

変える方法は、恐怖を次の行動へ翻訳することです。「嫌われない」ではなく「自分の希望を一度穏やかに伝える」に変えると、自分が何をすればいいかが具体的になります。「失敗しない」ではなく「今日できることを一つする」に変えると、終わりのない警戒に区切りが生まれます。恐怖を消すのではなく、恐怖が向けていた視線を、いま自分が動かせるものへ戻すイメージです。

自分と一致した目標かを3つの問いで確かめる

同じ「収入を増やす」という目標でも、家族を安心させたいから追う人と、周囲から成功者だと思われたいから追う人では、内側の理由が違います。1999年に報告された研究では、自分の関心や価値観に合い、やらされているからではなく自分なりの理由で選んだ目標ほど、努力が続きやすく、達成したときの幸福感も大きい傾向が示されています。逆に、自分と一致していない目標は、達成しても期待したほど満たされないことがあります。

目標を決める前に、次の3つを問いかけます。

  • 誰にも知られなくても、この目標を追いたいか
  • この目標を追うことで、毎日どんな行動を繰り返すことになるか
  • 本当にそれが欲しいのか、持っていない自分を恥じたくないだけなのか

目標の価値は、達成した瞬間だけでは分かりません。そこへ向かう途中でどんな行動を重ね、どんな人間になっていくかまで含めて考える必要があります。

行動を「もし〜なら」で先に決める

「運動する」「勉強する」という目標は、やる気がある日を前提にしています。疲れた日や不安な日には、目標を思い出してから何をするか決めるまでの間に負けてしまいます。

そこで、「もしこうなったら、こうする」という形で行動を先に決めておきます。

  • 運動する → 夕食の食器を片付けたら、靴を履いて5分歩く
  • 勉強する → 午後8時になったら、机に座って最初の問題を1問だけ読む

2006年に94件の研究をまとめた分析では、いつ・どこで・どのように行動するかを「もし〜ならば」の形で決めることが、目標達成に中程度から大きな効果を示したと報告されています。やる気や自信がある日だけ実行できる目標は、人生の大半では機能しません。行動を具体的にしておくと、気分に左右されずに始められます。

目標は3つの層に分けると整理しやすいです。

  • 方向:どんな人生へ近づきたいか
  • 学習:どんな能力や理解を増やしたいか
  • 行動:どの状況で何をするか

たとえば「もっと良い仕事へ移りたい」という方向があるなら、その下に「自分が力を発揮できる環境を理解する」という学習目標を置き、さらに「月曜日の夜8時になったら求人を1件だけ開き、魅力を感じた条件を1つ書く」という行動を置きます。方向だけでは願いになり、行動だけでは作業になります。この3つがつながったとき、目標は生活の中で動き始めます。

失敗の意味を変える問い

学ぶことを目標にした子どもたちは、急に自信を持ったわけでも、失敗がなくなったわけでもありません。それでも投げやりにならなかったのは、失敗が自分の価値に対する最終判決ではなかったからです。

目標設定は、拒絶や病気、喪失といった現実の苦しみを消す魔法ではありません。ただ、その苦しみが「自分について何を証明したのか」という問いから少し離れることはできます。

  • この拒絶は、自分に魅力がないという判決か、この相手とは条件が合わなかったという事実か
  • 今日何もできなかったことは、怠け者である証拠か、いまの計画が自分の体力を前提にしていなかったという情報か

目標が変われば失敗の意味が変わり、失敗の意味が変われば次の行動が変わります。まずは、いま追っている目標を一つ選び、その下に「失敗しても残る学び」を一文で書き、さらに「もし〜したら〜する」を一つ決めてみてください。

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