崩れるときは、順番がある
入浴が飛ばされると、次に歯磨き、次に食事、次に部屋の掃除、そして人に連絡すること、というように、生活のあちこちが同時に傾いていくことがあります。ドミノが倒れるように見える、という比喩で説明されることもあります。
この状態を指す言葉に「セルフネグレクト」があります。自分の身の回りの世話を自分で放棄してしまう状態で、強い言い方をすれば緩やかな自殺と呼ばれることもあるとされています。ただ、これは人を責めるための言葉ではありません。本人も気づかないまま進んでいく点に特徴があるとされています。
体に現れる変化と、受診の目安
入浴が数日続かないと、皮膚の常在菌のバランスが崩れ、毛包炎(毛穴に細菌が入って炎症を起こすもの)や、蜂窩織炎(皮膚の奥まで炎症が広がる感染症)といった症状が起こりやすくなる、という説明が紹介されることがあります。さらに進むと、細菌が血液に入って全身に広がる敗血症という状態につながることもあるとされています。
とはいえ、1日や2日入らなかっただけで、すぐにこうした状態になるわけではありません。気にかけたいのは、赤みが広がる、腫れて痛む、熱が出るといった症状が出たときです。この場合は自己判断で様子を見ず、医療機関を受診してください。皮膚の状態と心の状態は別々に考えるのではなく、同じ時期に一緒に崩れやすいものとして見ておくと整理しやすくなります。
背景に孤立があるとき
帰宅しても誰もいない。自分が入っても入らなくても、誰も気づかない。こうした状況では、生活の乱れは外から見えにくくなります。社会的な孤立を示す統計が引用されることもありますが、数字の出典や調査条件はここでは確認できません。確かなのは、周囲が気づくという前提を置きにくい時代になっているという点です。
だからこそ、本人が「これは普通ではないかもしれない」と気づくことと、周りが小さな変化に声をかけることの両方が必要になります。
まず自分のドミノを止める
誰かの異変に気づいたとき、まず自分が倒れては元も子もありません。気づいた人に責任はありませんが、気づいた人にしかできないことがあります。そのために、次のような順番で考えてみてください。
- シャワーを5分だけ浴びる。髪を洗わなくても、湯船につからなくても構いません。
- 「しんどい」と一言、信頼できる人に送る。理由を説明しなくても大丈夫です。
- 温かいものを一口食べる。料理でなくても構いません。
- 5分だけ外を歩く。散歩というほどのものでなくてかまいません。
- 生活費や住まいに困っているなら、自治体の相談窓口や、生活保護の申請を手伝ってくれる生活者向けの支援団体に連絡する。一人で手続きしようとしないこと。
これらは生活を立て直すための一例で、効果を保証するものではありません。うつ病など治療が必要な状態では、医療機関につながることが優先されます。つらさが続く場合は、精神科や心療内科、地域の相談窓口を頼ってください。
当てはまらない場合もある
疲れていて1日飛ばしただけ、ということはよくあります。数日続いていても、本人が元気で、食事も睡眠も保てているなら、心配しすぎる必要はないかもしれません。立ち止まりたいのは、入浴だけでなく他のことも同時に崩れている、体が動かない日が続いている、人と話すのがつらくなっている、といった重なりがあるときです。
入ったら100点、の意味
お風呂に入れないことは、怠けの証拠でも、才能の証拠でもありません。生活の一部が止まっているという事実です。1日入らないだけなら、それでいい。数日続いて、他のことも動かなくなっているなら、それは心からのSOSかもしれない。そのときは、完璧に入ろうとせず、シャワー5分から始めて、誰かに「しんどい」と伝えるところまでで十分です。