ネガティブ思考をやめようとすると、かえって同じ考えがぐるぐると回り続ける。そんな経験はないでしょうか。この記事でお伝えする結論はシンプルです。止める前に、気づく。これが最初の一歩になります。
理由は、ネガティブ思考が「始めよう」と思って始まるものではないからです。朝起きた瞬間から、メールの文面を読んだ数秒後から、いつの間にか始まっている。だから止める技術より先に、いま走っていると気づく技術が要ります。ここからは、よく紹介される考え方と、この記事なりの解釈を分けながら、具体的な手順を見ていきます。感じ方には個人差があるので、合うものだけ拾ってください。
まず「いま考え込んでいる」と気づく
ネガティブ思考の厄介さは、始まったことに本人が気づきにくい点にあります。気づいたときには、思考がもうマイナスの方向へ染まっている。水の中にいるような感覚のまま、気づかないうちに時間が過ぎていきます。
心の中で実況中継する
特別な道具はいりません。心の中で「あ、いま自分は被害妄想モードに入っている」と実況してみるだけです。アナウンサーになったつもりで、少し大げさなくらいの軽さで構いません。
思考を止めるのは難しくても、「いま走っている」と自覚するだけで速度は落ちます。止める前に気づく。順番はこれだけです。
事実と解釈を分ける
上司に指摘された。これは事実です。「自分は使えない人間だ」は解釈です。ネガティブ思考の最中は、この二つが接着剤でくっついたように一体化してしまいます。指摘された、イコール、終わった。そんな一組の情報として頭に刻まれてしまうわけです。
でも冷静に見れば、相手はただ修正点を伝えただけで、人格を否定したわけではありません。
紙の左右に書き分ける
試すなら、紙の左側に「起きたこと」、右側に「自分が考えたこと」を書き分けてみてください。多くの場合、左側は驚くほどあっさりしていて、右側だけが長く膨らんでいます。
ネガティブの正体は、出来事そのものではなく、自分が付け足した意味づけのほうです。それが見えるだけで、少し冷静になれます。
最悪のシナリオ以外を並べる
考え込みには癖があります。最悪のシナリオだけをVIP席に座らせ、他の可能性には立ち見すら許さない。たとえば、送ったメッセージに既読がつかないだけで「嫌われたに違いない」と結論を出してしまう、といった具合です。
でも実際には、単に忙しかっただけかもしれません。通知に気づいていないだけ、充電が切れていただけ、ということも考えられます。
そこで、最悪以外のシナリオを3つ以上、自分に出させてみてください。ポジティブである必要はありません。「まあまあの結果」「普通の結果」「意外といい結果」で十分です。選択肢が増えるだけで、頭の中の法廷は少し静かになります。
「今の一手」に意識を戻す
ネガティブ思考は、タイムマシンのようなものです。過去に飛んで後悔し、未来に飛んで不安になり、どちらに行っても嫌な景色しか見せてくれません。しかし実際に体を動かせるのは、今この瞬間だけです。過去は変えられず、未来はまだ存在していないからです。
呼吸と体の感覚を使う
頭の中が忙しいときは、数十秒だけ呼吸に意識を向けてみてください。鼻から吸って、口からゆっくり吐く。空気の温度を感じるだけでも構いません。足の裏が床に触れている感覚でもいいです。
体の感覚と頭の中の物語を同時に全力で処理するのは苦手だ、という説明を聞くことがあります。たとえとして受け取るなら、感覚に注意を向けている間は、頭の中の上映が少し止まりやすくなる、というイメージです。
体を動かして切り替える
考えるほど深みにはまるときは、思考ではなく体を使います。ジムに行く必要はありません。階段を2フロア分だけ上り下りする、台所で皿を洗う、ベランダで伸びをする。3分でも構いません。
パソコンが固まったときに再起動するのと似た感覚で、頭の中の空気が入れ替わります。考えて解決しないことは、動いて切り替える。この引き出しを持っておくと、日常のしんどさは変わってきます。
自分にかける言葉のトーンを変える
落ち込んでいる友人が目の前にいたら、どんな声をかけますか。「お前のせいだ」とは言わないはずです。「大変だったね」という言葉が自然に出てくるでしょう。ところが相手が自分になると、急に態度が変わる。内側に厳しい上司を住まわせている人は少なくありません。
一度その上司を休ませて、気のいい友人を一人雇う感覚で自分に声をかけてみてください。「しんどかったね。次はこうしてみようか」くらいのトーンで十分です。自分との対話の調子が変わるだけでも、回復の速さは違ってきます。
「それ、証拠ある?」と自分に聞く
「どうせ失敗する」「きっと嫌われている」。そういう考えが浮かんだとき、一つだけ自分に聞いてみてください。それ、証拠あるの。
不安が大きいときほど、根拠のない推測を事実のように信じてしまいます。暗い部屋では、壁にかけたコートが人影に見えることがあります。怖いからそう見えるだけで、本当にそこにいるわけではありません。証拠として出てきたのが想像と感情だけなら、それは事実ではなく、頭が作った映像です。
白黒をやめる
「うまくいったか、いかなかったか」「疲れているか、嫌われているか」。0か100かで判定する癖があると、100点以外はすべて不合格になってしまいます。
でも実際の毎日は、70点の日の連続です。完璧ではないけれど、全然ダメでもない。あの人には好かれているけれど、この人とはまあ普通。そのグラデーションを許せると、自分にも他人にも少し優しくなれます。今日は65点くらい、と思えた日は、実はかなりいい日です。
悩む時間と場所を決める
悩むなと言われても、無理なものは無理です。ならば、悩み方のルールだけ決めてしまうのはどうでしょう。
15分だけと決める
「今から15分だけ、この件について考える」と自分に宣言します。タイマーはスマホでもキッチンタイマーでも構いません。15分は真剣に悩んでいい。でも鳴ったら終了です。「ここから先は営業時間外」と自分に言い聞かせます。
悩みは枠がないから際限なく広がります。枠を決めると、不思議とその中に収まろうとします。だらだら一日中悩む側から、悩みを管理する側に回る。この主導権の逆転が、心をかなり楽にします。
書き出して外に出す
頭の中で回っていることは、書き出してみると案外小さかったりします。あれほど大きく感じていた不安が、紙の上ではたった3行だった、というのはよくある話です。
書き方は自由です。「なんか腹立つ」くらい雑で構いません。大事なのは完成させることではなく、頭の外に移すことです。紙に出した途端、自分とモヤモヤの間に距離ができます。
感情の波に逆らわない
つらいときは、この気分がずっと続くのではないかと感じます。しかし感情には波があり、上がったものは下がり、下がったものはまた上がる、という見方があります。今がどん底に感じても、それは波の低い位置にいるだけ、という説明です。ただし波の周期や落ち着くまでの時間には個人差が大きく、置かれた状況によっても変わります。
大事なのは、無理に気分を上げようとしないことです。波に逆らって押し上げようとすると、余計に疲れます。「今は低い時間帯なんだな」と認識して、やり過ごす。それだけで十分です。
できたことを数える
ネガティブ思考が強いときは、視野が極端に狭くなります。できなかったこと、足りなかったことだけが蛍光ペンで引かれたように目に入り、できていたことは完全にスルーされます。これはフェアではありません。
一日の終わりに、今日できたことを3つ書いてみてください。立派なことである必要はありません。朝ちゃんと起きた。機嫌よく提出できた。帰りにゴミを出した。それで十分です。小さな事実の積み重ねが、「自分はまるでダメだ」という思い込みを、静かに薄めていきます。
それでもうまくいかないとき
ここまで挙げたのは、あくまで一般的な工夫です。効果の感じ方には個人差があり、どれもしっくりこない日もあります。気分の落ち込みが長く続く、眠れない、仕事や生活に支障が出ているという場合は、これらの工夫だけで何とかしようとせず、医療機関や相談窓口を頼ってください。自分で対処できないことを責める必要はありません。
逆に、気づくだけ、書き出すだけ、3分動くだけ、といった小さなもので構いません。全部やろうとすると続きません。一つ選んで、しっくりこなければ別のものを試す。そのくらいの気持ちで十分です。