血圧が心配だから味噌汁を減らしている。そう決めている人にとって、朝の味噌汁の塩分は見過ごせない問題です。けれど、味噌汁をやめることが血圧対策として逆効果になる場合もあります。味噌汁は塩分の塊ではなく、発酵した大豆を温かく取れる食品です。作り方と具を少し変えるだけで、腸と血管を支える一杯に変わります。
毎朝の味噌汁が体に起こす主な変化
腸内環境:発酵の力と食物繊維が揃う
味噌は大豆に麹と塩を加え、数か月から1年かけて発酵させた食品です。発酵の過程で乳酸菌や酵母が生まれ、大豆の食物繊維も残ります。若布やきのこを加えれば、腸内細菌の餌になる成分が一度に揃います。味噌などの発酵大豆をよく食べる人ほど便通が良い傾向があると報告されています。
血圧:同じ塩でも味噌は上がりにくい可能性
味噌汁1杯の塩分はおよそ1.2gで、ラーメン1杯の5分の1ほどです。日本の研究では、味噌汁を飲む回数と血圧にはっきりした関係が見られなかったとされています。動物実験では、同じ量の塩でも味噌として取ったほうが血圧が上がりにくいという結果があり、大豆のペプチドや具のカリウムが理由の一つと考えられています。ただし、すでに高血圧で治療中の人は、量について医師に相談してください。
食物繊維:不足しがちな分を温かく補う
中高年は食物繊維が目標より1日5gほど足りないと言われます。味噌汁に野菜やきのこ、大根、豆腐を入れると、食物繊維が2g以上増えます。食物繊維は便を作るだけでなく、食後の血糖やコレステロールの吸収を抑える働きもあります。
体温:朝の低い体温を内側から上げる
朝は一日で最も体温が低い時間帯です。温かい汁物を取ると体が内側から温まり、代謝が動き出しやすくなります。体温が上がると腸も動き、朝の便通につながります。冷たいパンとコーヒーだけの朝食と、温かい味噌汁のある朝食では体の目覚め方が変わります。
抗酸化:色の濃さとメラノイジン
味噌の茶色い色は、発酵や熟成で生まれるメラノイジンによるものです。メラノイジンには活性酸素を抑える働きが報告されていますが、主に試験管の中で確かめられた段階で、人での研究はこれからです。色の濃い味噌ほどこの成分は多いとされます。
朝の血糖:食べる順番を変える
朝食後に急に眠くなるのは、血糖値が急に上がって下がったサインです。食事の最初に汁物を飲むと食べる速度が落ち、血糖の上がり方が緩やかになります。中高年は若い頃より血糖を下げる力が落ちているため、ご飯の前に味噌汁を一口飲むだけでも順番の効果が出やすくなります。
味噌の力を消してしまう3つの習慣
沸騰させてから味噌を溶かす
味噌を入れてからぐらぐら煮立てると、乳酸菌や酵母の多くが死に、香りも飛びます。味噌の風味が最も立つのはおよそ75度とされます。具に火が通ったら火を止めてから味噌を溶く。これだけで菌も香りも残ります。
インスタント味噌汁で済ませる
インスタント味噌汁は1杯の塩分が2g近いものが多く、具もほとんど入っていません。手作りの味噌汁1杯に変えると、塩分は1日あたり0.8g程度減り、1年ではおよそ300gの差になります。使うならお湯を減らし、乾燥わかめや冷凍きのこを足すと具だくさんに近づきます。
具のない味噌汁を飲む
味噌汁の塩分を体の外に出しやすくするのは、具に含まれるカリウムです。具のない味噌汁は塩分だけを飲んでいるのに近くなります。豆腐や野菜を入れるほど塩分の影響は小さくなります。
スーパーで失敗しない味噌の選び方
生味噌・非加熱の表示を確認する
多くの味噌は出荷前に加熱して発酵を止めています。この加熱で菌の多くが失われます。非加熱・加熱処理不使用と書かれたものは菌が生きたまま届きます。容器に小さな空気穴があるものは菌が呼吸している目印です。冷蔵庫で保存すれば発酵はゆっくり進み、色が濃くなるのはその証拠です。
減塩味噌は表示の数字を見る
減塩と書かれていても、塩分の減り方は商品によって2割から5割と幅があります。裏の食塩相当量を確認し、100gあたり10g前後なら十分に低い数字です。ただし、減塩味噌でも具を減らせば意味がありません。数字より具の量を優先してください。
出汁入り味噌の中身を確認する
出汁入り味噌は便利ですが、旨味調味料や糖類が加えられているものが多いです。味噌に鰹節や煮干しを自分で足せば、塩分は同じでも満足感が上がります。出汁を取るのが面倒なら、煮干しを2本具と一緒に鍋に入れて煮るだけでも十分です。
味噌汁の効果を高める具の組み合わせ
- わかめと豆腐:わかめのカリウムが塩分を外に出し、豆腐の大豆たんぱく質が味噌の力を補います。乾燥わかめは小さじ1杯をそのまま鍋に入れられます。
- きのこ:しめじ、えのき、舞茸などの食物繊維は腸内細菌の餌になります。旨味が加わるため味噌を減らしても物足りなさがありません。冷凍しておくと旨味が増し、朝に袋から鍋へ入れるだけで済みます。
- 玉ねぎ:オリゴ糖が腸内細菌を育て、皮に近い部分のケルセチンは血管を守るとされます。甘味が出るため味噌を減らしても味が決まります。
腸にはきのこ、血管には玉ねぎ、塩分にはわかめ。朝の一杯で体の3か所を同時に整える組み合わせです。
よくある疑問
1日に何杯まで飲んでいい?
体調に問題がなければ、1日2杯程度を目安にしてもよいでしょう。高血圧や腎臓の病気で通院中の人は、必ず医師に量を確認してください。
赤味噌と白味噌、どちらが良い?
目的で変わります。抗酸化を期待するなら熟成の長い赤味噌、塩分を抑えたいなら甘味のある白味噌のほうが少なくて済みます。具を食べて汁を少し残すだけでも塩分はおよそ3割減らせます。
夜に飲んでもいい?
飲んで構いません。ただし寝る直前は避け、夕食の最初の一口にすると食べすぎも防ぎやすくなります。
毎朝の味噌汁をやめる代わりに、火を止めてから味噌を溶き、具を足す。この二つを変えるだけでも、塩分の取り方と腸への負担は変わります。血圧が気になる人ほど、味噌汁を抜く前に医師と量を相談し、作り方を見直すのが現実的な選択です。