「骨には牛乳、血管には豆乳」とよく言われます。でも毎日飲むなら、どちらか一方に決める必要はありません。骨密度や筋肉、物忘れが気になる人は牛乳を1日1〜2杯。悪玉コレステロールが高めの人、牛乳でお腹がゴロゴロする人は無調整豆乳を1日1〜2杯。両方に当てはまるなら、朝は牛乳、午後は豆乳と分ける手もあります。大切なのは勝ち負けではなく、自分の体がどちらの助けを必要としているかです。
骨と筋肉を支えたいときは、牛乳を量つきで選ぶ
コップ1杯200mlで比べると、カルシウムは牛乳が約220mg、無調整豆乳は約30mg。骨の材料としては牛乳に大きな差があります。日本人のカルシウム摂取量は必要量より100〜200mgほど足りないことが多く、毎日の牛乳1杯はその不足を補いやすい方法です。
ただし量には条件があります。スウェーデンの観察研究で、牛乳を1日3杯以上飲んでいた女性に骨折や死亡が多いという報告があります。これは原因と結果を決められる調査ではなく、日本人の平均を大きく超える量です。一方、日本の研究では牛乳をよく飲む高齢女性ほど骨密度が高いという関連も見られています。骨のためには牛乳、ただし1日1〜2杯までが現実的な目安です。
筋肉については、材料の質で牛乳に分があります。筋肉を作るのに役立つロイシンというアミノ酸は、牛乳のたんぱく質に大豆より多く含まれます。若い男性を対象にした試験では、運動後に牛乳を飲んだ群のほうが筋肉の増加が大きかったと報告されています。対象が若いため中高年にそのまま当てはめるのは慎重ですが、材料の差は年齢に関係しません。飲むなら散歩や体操の後30分以内が目安です。
血管とお腹を整えたいときは、無調整豆乳が使いやすい
牛乳にはコップ1杯あたり約4.6gの飽和脂肪酸が含まれ、悪玉コレステロールを押し上げる側に働きます。一方、大豆たんぱく質には悪玉コレステロールを下げる働きが多くの試験で確かめられています。目安は1日25gの大豆たんぱく質で、豆乳だけならコップ3杯半。豆腐や納豆と組み合わせれば届く量です。悪玉が高めの人が牛乳を1杯減らして豆乳に変える意味はあります。低脂肪牛乳なら飽和脂肪酸が半分以下になるため、骨も油も両方取りたい人はそちらも選択肢です。
お腹の調子にも差が出ます。牛乳に含まれる乳糖はコップ1杯に約10g。大人になると分解する力が弱まり、日本人を含む東アジアでは多くの人がその働きを失います。温めて少しずつ飲めば問題ない人もいますが、それでもゴロゴロするなら無理に飲む理由はありません。豆乳には乳糖がなく、大豆のオリゴ糖が腸内細菌の餌になります。牛乳でお腹が鳴る人は、ここで迷わず無調整豆乳を選んで構いません。
物忘れが気になるときは、乳製品を無理のない範囲で
福岡県で60歳以上の住民およそ1000人を17年間追った調査では、牛乳や乳製品をよく取る人ほど認知症、特にアルツハイマー型が少ないという関連が報告されています。これも観察研究なので、牛乳が認知症を防ぐと決まったわけではありません。ただ、日本人を対象にした結果であることから、物忘れが気になる人が牛乳を避ける必要はなさそうです。豆乳のイソフラボンにも記憶を支える可能性が研究されていますが、人での証拠はまだ揃っていません。
せっかくの一杯を台無しにする3つの飲み方
- 味のついた「乳飲料」「調整豆乳」を選ぶ。コーヒー牛乳やバナナ味の豆乳は、砂糖がコップ1杯に角砂糖3個分ほど入ることがあります。牛乳は「成分無調整」、豆乳は「無調整」の表示を確認し、裏の種類別が「乳飲料」なら棚に戻しましょう。調整豆乳は無調整よりカロリーが約2倍になることもあります。
- 体にいいからと一気に大量に飲む。スウェーデンの研究で問題になったのは1日3杯を超える量でした。牛乳は1日400mlまで、豆乳も同じ目安で十分です。
- 冷たいまま空腹で流し込む。冷えた乳糖が空っぽの腸を刺激し、お腹のゴロゴロを招きます。電子レンジで40度ほどに温め、朝食の最後に飲むと負担が減ります。
牛乳と豆乳を組み合わせる小さな工夫
牛乳ときなこ。大さじ1杯のきなこを温めた牛乳200mlに溶かします。牛乳のカルシウムに大豆のたんぱく質とイソフラボンが加わり、牛乳か豆乳か迷ったときの簡単な答えにもなります。
豆乳とバナナ。バナナ半分と無調整豆乳200mlをミキサーにかけます。豆乳のたんぱく質にカリウムと食物繊維が加わり、血圧が気になる朝に向きます。甘みはバナナで足りるため、砂糖は不要です。
牛乳と抹茶。抹茶小さじ半分を温めた牛乳200mlに溶かし、砂糖は入れません。甘い缶コーヒーの代わりにすると午後の間食を減らせます。抹茶は茶葉を丸ごと使うためカテキンが多めです。粉が沈むので、飲む前にもう一度かき混ぜましょう。
よくある迷いに答える
低脂肪牛乳と普通の牛乳、どちらがいい?
カルシウムとたんぱく質はほとんど変わりません。悪玉コレステロールが高めなら低脂肪牛乳、そうでなければどちらでも構いません。ただし「低脂肪乳」と表示された乳飲料は成分が調整されていることがあるため、牛乳と表示されたものを選びます。
前立腺との関係が心配
乳製品を多く取る男性で前立腺がんが多いという関連が観察研究で報告されています。ただし1日1〜2杯の範囲でその心配を優先する段階ではありません。気になる人は主治医に相談してください。
豆乳は女性ホルモンに影響しない?
イソフラボンは女性ホルモンに似た形をしていますが、働きはかなり弱いとされています。食品安全委員会の目安は1日約75mgで、無調整豆乳2杯程度ならその範囲に収まります。
骨・筋肉・物忘れが気になるなら牛乳、血管・お腹が気になるなら無調整豆乳。この分け方で、毎朝の一杯はもう迷わずに済みます。冷蔵庫に2本あってもいいのです。量は1日1〜2杯まで、温めてゆっくり飲むことだけを守れば、続けやすい習慣になります。