2017年、ハーバード大学の卒業式でマーク・ザッカーバーグは「生きる目的」について語った。単に自分自身の目的を見つけるだけでなく、誰もが目的を持てる世界をつくることこそが、私たちの世代に課せられた役割だと説く。その言葉の核心には、ケネディ大統領とNASAの清掃員のエピソードがある。「大統領、人類を月に送る手伝いをしています」と答えた清掃員のように、自分を超えた何かに属する実感こそが、真の幸福を生む源泉だという。
目的は「共有」されるとき力になる
Facebookを寮の小さな部屋で立ち上げた夜、ザッカーバーグは「いつか誰かが世界をつなぐ。その誰かが僕たちだとは思わなかった」と振り返る。資金豊富な巨大IT企業がいくつも存在した時代に、ただ「人は皆つながりたい」という確信だけで取り組み続けた。
しかし、会社が成長し買収の話が持ち上がったとき、大きな目的を共有していなかったことで組織は分裂した。「正しさを信じていても孤独だった。しかも自分の責任だった」と、22歳の創業者は苦い経験を告白する。この経験から彼は学んだ——大きな目的を共有しなければ、人は共に前へ進めない、と。
アイデアは完成形で生まれない
「アイデアは完成形で生まれません。取り組むうちに形が見える。だからまず始めるんです。」
マーク・ザッカーバーグ
「ひらめきが一瞬で起こる」という映画的な物語は危険な嘘だと語る。その思い込みは、ひらめきがない自分は何か足りないと思わせ、最初の一歩を踏み出せなくさせるからだ。ジョアン・ローリングが『ハリー・ポッター』で12回断られ、ビヨンセが『Halo』が生まれるまで何百曲も作ったように、大きな成功を生むのは「失敗できる自由」にある。
不平等な社会で「挑戦できる自由」をどう守るか
現在、富の格差が広がりすぎており、誰もが自分の発想を育て、歴史に残る事業にする自由を持てなければ、社会全体の損失になると指摘する。成功した人への報いに偏りすぎた社会では、失敗後の支えがないために夢を諦めざるを得ない人があまりに多い。
ザッカーバーグ自身、「幼い頃から家族を養いコードを学ぶ時間がなかったら、Facebookが失敗しても大丈夫と思えていなかったら、今日ここには立てなかった」と、自身の成功における運の要素を率直に認める。だからこそ、誰もが何度でも挑戦できるような支え——金銭的支援だけでなく、時間を使って誰かの可能性を伸ばすこと——が必要だと語る。
放課後の教室で学んだこと
妻プリシラの勧めで、放課後のコミュニティセンターで起業を教え始めたとき、子どもたちから人種差別や家族が刑務所にいる現実を教わった。5年間毎月共に夕食を囲み、ある生徒は家族で初めて大学へ進学した。ザッカーバーグは言う。「誰もが誰かを助ける時間を作れます。誰もが目的を持てる自由を——正しいことだからだけではなく、多くの人が夢を大きな成果にできれば皆にとって良い世界になるからです。」
在留資格のない優等生が望んだもの
誕生日の朝食で、在留資格のない優等生に「何が欲しいか」と尋ねたとき、彼はクラスメイトが抱える苦悩を語り、最後に「社会正義についての本が欲しい」と言った。自分の将来すら分からない高校生が、それでも世界を前へ進めようとしている——その姿に胸を打たれたという。
「自分を超えた目的を持ち、周りの人と共に進もうとしていた。彼が危険にさらされないため名前すら言えない。これが今の社会の姿です。」
祈りとしての勇気
記事の締めくくりに、ザッカーバーグが娘の寝かしつけにも歌うという「ミ・シェベラハ」という祈りを紹介する。
「力の源よ。先人たちを祝福したように勇気を見つける力をください。人を幸せにする人生への勇気を。」
人とのつながりが生きる意味をくれ、自分の世界を広げる力をくれる。世界の変化も、普通の人の小さな一歩から始まる。私たちがつながりを築き、誰もが生きる目的を持てる世界をつくれるか——その鍵を握るのは、卒業生一人ひとりの勇気だ。